中国の新茶飲料市場は、もはや「レッドオーシャン」の枠を超え、激しい「内巻」(過剰な内部競争)に突入しています。この過酷な状況から抜け出すべく、多くの人気ブランドが本業の枠を超え、アパレル、スナック菓子、コーヒーなど、様々な「副業」に挑戦しています。リスク分散のための「第二のエンジン」となるはずが、時には資金や労力を消耗する「消耗戦」と化すケースも。今回は、中国茶飲料ブランドが繰り広げる異業種参入戦略の背景と現状、そしてその光と影に迫ります。
中国新茶飲料業界の「副業」戦略とは?
飽和市場で活路を探す各ブランドの「野心」
本来、企業の副業は本業のリスクを補完し、新たな収益源となる「第二のエンジン」であるべきです。しかし、中国の新茶飲料ブランドにとって、提携やグッズ販売といった従来の枠では、もはや「野心」を満たせなくなっています。喜茶(HEYTEA)、奈雪の茶(NAYUKI)から茶顔悦色(TEA’S COLOR)、蜜雪氷城(MIXUE)、そして覇王茶姫(BAWANGCHAJI)に至るまで、多くのブランドが本業の「ミルクティー」という垣根を飛び越え、多様な分野に進出しています。
覇王茶姫がアパレルに進出!その狙いは?
最近の注目事例は、中国茶飲料大手の一つ、覇王茶姫が立ち上げたアパレルブランド「BACHI FASHION」です。伝統的な刺繍要素を取り入れた「踏花帰来」シリーズを発表し、デニムジャケットが599元(約12,000円)、デニムパンツが499元(約10,000円)、Tシャツが199元(約4,000円)、フィッシャーマンズハットが159元(約3,200円)といった価格帯で販売されました。これは単なるグッズ販売を超えた本格的なアパレル事業への参入と言えます。しかし、現在覇王茶姫の公式旗艦店では、この「踏花帰来」シリーズのアパレル商品は見当たらず、帽子やバッグなどのアクセサリーが残るのみとなっており、異業種参入の難しさを物語っています。
広がる「副業」のトレンド:スナックからコーヒー、そしてアパレルへ
スナック菓子は手堅い選択肢か?
新茶飲料ブランドが副業として最も積極的に展開しているのがスナック菓子分野です。消費シーンの親和性が高く、比較的リスクも低いとされています。顧客がミルクティーを待つ間に、ついで買いを促せるためです。喜茶や奈雪の茶は2020年からスナック菓子事業に参入。喜茶は「お茶風味スナック」で差別化を図り、奈雪の茶は店頭に専用の棚を設け、ポテトチップスやチーズクリスプなどを販売しています。
蜜雪氷城に見る多角化の「泥臭い」戦略
中高級路線をいく喜茶や奈雪の茶に対し、低価格戦略で中国全土に店舗を展開する蜜雪氷城は、そのアプローチも異なります。2022年には人気スナックブランドと提携し、15gでわずか1元(約20円)の瓜の種を発売。現在、そのTmall旗艦店では、鍋巴(おこげせんべい)、辣条(辛いスナック)、ポテトチップスなどの定番スナックから、木製ブロック、ブラインドボックス、水筒といった非食品まで、数十種類の製品を取り扱っており、最小価格は1.5元(約30円)から。その多角的な製品展開と販売チャネルの活用能力は際立っています。
さらに蜜雪氷城は、スナック菓子に先立つ2017年にはコーヒーのサブブランド「幸運咖(Lucky Coffee)」を立ち上げ、低価格コーヒー市場をターゲットに三四線都市で急成長を遂げています。既存の供給チェーンと店舗網を最大限に活用し、新たな成長エンジンを探る蜜雪氷城の戦略は、まさに「レッドオーシャンから別のレッドオーシャンへ」という言葉を体現していると言えるでしょう。
「第二のエンジン」か「消耗戦」か?異業種参入の光と影
これらの新茶飲料ブランドの異業種参入は、単なる好奇心やブームではなく、飽和した本業市場からの脱却と、新たな成長機会の模索という切実な背景があります。一部のブランドは供給チェーン資源をうまく再利用し、成功裏に第二の成長曲線を描いています。しかし、闇雲な多角化は、本業の現金を消費し、経営資源を分散させる「消耗戦」に陥るリスクも伴います。
異業種参入は「避難港」ではなく、そこには「副業」としての新たな激しい「内巻」が待ち受けています。覇王茶姫のアパレル事業の例が示すように、安易な参入では成功は難しく、各ブランドはそれぞれの得意分野やブランドイメージを活かした戦略が求められます。
まとめ
中国の新茶飲料ブランドが繰り広げる異業種参入の動きは、競争の激しい市場で生き残るための必死な模索と言えます。スナック菓子、コーヒー、そしてアパレルといった多様な分野への挑戦は、ブランド価値の向上、顧客接点の拡大、そして新たな収益源の確立を目指しています。しかし、その全てが成功するわけではなく、本業への影響や新たな市場での競争という課題も浮き彫りになっています。
この中国テック企業の多角化戦略は、日本の飲食業界や小売業界にとっても示唆に富んでいます。既存の顧客基盤やサプライチェーンをどのように活用し、新たな価値を創造していくか。中国市場の「レッドオーシャン」における生存競争は、グローバルなビジネス戦略のヒントを与えてくれるかもしれません。
元記事: pedaily
Photo by Alena Darmel on Pexels












