中国内陸部の巨大都市、重慶。その不動産市場は今、かつてない激動の時代を迎えています。長年、市場の活況をけん引してきた有力デベロッパーの「総経理」(ゼネラルマネージャー、日本でいう社長や事業本部長クラス)たちは、何を考え、どのようにこの嵐を乗り切ろうとしているのでしょうか。かつて「不動産マーケティング責任者の“逃走計画”」と揶揄された市場は今、彼らの「“疾走”計画」へと変貌を遂げているのです。本稿では、そんな重慶不動産市場を牽引するトップ20社の最新動向と、その背後にある中国経済のリアルに迫ります。
激動の中国不動産市場:トップたちが直面する現実
中国経済の目覚ましい発展を象徴してきた不動産セクターは、この20年で飛躍的な成長を遂げました。しかし、現在、市場は大きな転換点を迎えています。元記事の筆者である「白衣海盗」氏がユーモラスに表現する「逃走計画」から「疾走計画」への言葉の転換は、この変化の厳しさを物語っています。能力と運を兼ね備えた優秀な人材でなければ務まらない不動産企業のトップたちは、今、かつてないほどのプレッシャーに晒されています。
実際、多くの有名企業でトップの交代が相次ぎ、中には巨額の不正容疑で調査を受けている人物もいます。さらに、ある著名な不動産企業が株式市場から撤退するなど、業界全体の再編と淘汰が進んでいる現実が浮き彫りになっています。これは、単なる人事異動ではなく、中国政府による不動産市場の健全化を求める「三道紅線(レッドライン)」規制や、経済環境の変化が直接的に影響している結果と言えるでしょう。
重慶を牽引する主要デベロッパー20社の動向とトップたちの顔ぶれ
重慶の不動産市場を彩る主要デベロッパー20社の具体的な動きを見ていきましょう。それぞれのトップたちは、独自の戦略とリーダーシップで、この難局に立ち向かっています。
市場をリードするトップ企業と個性豊かなリーダーたち
- 万科(Vanke):易平安氏が牽引する万科重慶は、「翡翠都会」や「陸海国際中心」など、数々の landmark プロジェクトを手がけ、重慶の中心地で存在感を示しています。
- 融創(Sunac):融創は長年、龍湖のお膝元である重慶でトップの座を維持してきました。陶坤宏氏(北公司)と李景申氏(南公司)という二人の総経理が、それぞれ流量重視と作品重視の戦略で市場を席巻しています。
- 龍湖(Longfor):重慶不動産市場の「規範」と称される龍湖。崔恒忠氏、高巍氏を経て、現在は黒鵬氏がその舵を取ります。
- 金科(Jinke):周達氏がグループ会長となり、喻林強氏が重慶にUターンして責任者に。民営企業として、重慶主義を掲げる金科は、この厳しい時代を「傘のない子ども」として走り抜けると表現されています。
- 香港置地(Hongkong Land):楊樺氏が率いる香港置地は、重慶における「品質不動産」の代名詞。高級プロジェクトで市場を牽引し続けています。
- 保利(Poly):徐魯氏が川渝地区(四川省と重慶市)を管轄。国有企業(央企)としての安定感と、徐氏の豊富な経験で市場を攻略します。
- 華僑城(OCT):かつて「文化観光+不動産」モデルで名を馳せた華僑城ですが、このモデルも限界を迎えつつあります。陳潔生氏が現在の総経理を務めていますが、グループは農業分野へのシフトを模索しているようです。
- 華宇(Huayu):羅紅軍氏が率いる華宇重慶は、2021年に100億元超の売上を達成。安定感と機敏さを兼ね備え、難局を乗り越えようとしています。
- 華潤置地(China Resources Land):国有企業の中でも特別な存在感を放つ華潤置地。余暁斌氏が華西大区重慶会社の董事長を務め、九龍坡地区の「華潤24城」や「万象城」などで地域開発を成功させてきました。
- 招商蛇口(China Merchants Shekou):西南地域進出の第一歩を重慶に置いた招商蛇口。彭以良氏(西南総経理)と趙方氏(重慶総経理)が、香港置地との共同開発などで存在感を発揮しています。
転換期を迎える企業と新たな挑戦
- 陽光城(Sunshine City):厳しい状況に直面する陽光城ですが、重慶では健闘しています。夏康氏は川渝地域総裁に昇格し、逆境を乗り越える姿勢を見せています。
- 世茂(Shimao):困難な時期を迎えていますが、重慶では陳午陽氏を新たな総経理に迎え、既存プロジェクトの活性化に注力しています。
- 中海(China Overseas Property):徐斯偉氏が率いる中海は、豊富な土地資源と若きリーダーシップで、重慶における地位をさらに向上させるでしょう。
- 首創(Capital Group):2021年に香港市場から撤退し、不動産開発から「都市運営」への事業転換を進めています。呉喜軍氏が西南区域総経理を務めています。
- 緑城(Greentown):品質の高いブランドイメージを持つ緑城。重慶では蘭園がそのDNAを受け継ぎ、新たな総経理のもと、その真価を証明しようとしています。
中国不動産市場の未来と日本への示唆
重慶の不動産市場で繰り広げられる「総経理たちの疾走計画」は、中国経済全体、特に不動産セクターが直面する大きな変革期を象徴しています。かつての粗放的な開発モデルは終焉を迎え、各企業は品質重視、軽資産化、都市運営への転換、そして地域に根差した「作品」へのこだわりといった、新たな戦略を模索しています。
「文旅(文化観光)+不動産」モデルの限界や、香港市場からの撤退など、痛みを伴う再編も進む中、企業はより堅実で持続可能なビジネスモデルへの移行を迫られています。これは、不動産市場の健全な発展を求める中国政府の意向と合致する動きでもあります。
日本の企業や投資家にとっても、この中国不動産市場の動向は重要な示唆を与えます。単なる経済規模の拡大だけでなく、内部構造の変化や、政府の政策、そして各企業の生き残り戦略を深く理解することが、今後の中国市場との関わり方を考える上で不可欠となるでしょう。激動の「疾走計画」の先に、中国不動産市場の新たな姿が見えてくるはずです。
元記事: kanshangjie
Photo by Charles Parker on Pexels












