2025年の注目投資テーマとしてAIと並び称される「イノベーション薬」。中国のこの分野が今、世界市場で目覚ましい飛躍を遂げています。招銀国際キャピタル総経理の周可祥氏は、中国が持つ独自の強みによって、研究開発の効率性、コスト、そして臨床研究において米国を凌駕する圧倒的な優位性を築き上げていると指摘。過去の常識を覆し、世界の新薬開発の地図を塗り替える可能性を秘めた中国イノベーション薬産業の「爆発的成長時代」の到来とその核心に迫ります。
中国イノベーション薬市場、驚異の成長と活況
2025年の投資界でAIと並んで熱い視線が注がれるのが「イノベーション薬」です。特に中国におけるこの分野の成長は目覚ましく、招銀国際キャピタル総経理の周可祥氏がその現状と将来性について語りました。
海外展開が牽引する爆発的成長
中国のイノベーション薬産業は、海外事業で爆発的な成長を遂げています。今年(2025年)第3四半期までに、海外取引の規模は約1,000億米ドルに達し、頭金だけでも50億米ドルという驚異的な額を記録しています。康方生物を皮切りに、恒瑞医薬、科倫薬業といった有力企業が次々と大規模な取引を成立させ、市場の活力を一層高めています。
香港IPO市場の熱狂
未収益のバイオテック企業の上場を認める香港証券取引所の「18Aルール」の下で、IPO市場も活況を呈しています。特に映恩生物の上場後には、「一株難求」(株が手に入らないほど人気が高い)という異例の状況が発生し、市場の熱狂ぶりを象徴しています。
米国を凌駕する中国の競争優位性
このような目覚ましい成長の背景には、中国イノベーション薬産業が持つ独特の強みがあります。周可祥氏は、そのシステム全体の能力向上こそが、米国に対する圧倒的な競争優位性を生み出していると分析します。
効率・コスト・臨床研究の優位
中国は、新薬の研究開発効率、開発コスト、そして臨床研究の面で、米国と比較して顕著な優位性を持っています。具体的な要因としては、以下の点が挙げられます。
- 膨大な臨床患者数: 広大な国内市場が、堅実な臨床研究基盤を提供しています。
- 独自の審査制度: 研究者主導治験(IIT)を含む独自の審査制度が、米国にはない強みとなっています。
- 低い試行錯誤コスト: バイオテック企業は、たとえ5つの開発パイプラインのうち1つでも成功すれば利益を出せるほど、開発における試行錯誤のコストが低いのです。
これらの要素が複合的に作用し、中国はイノベーション薬分野において、開発速度、効率性、コスト管理能力で米国を凌駕する「次元の違う」競争環境を築き上げています。
技術トレンドの変化が後押しする中国の強み
なぜ、これまで米国が主導してきた原始的なイノベーションにおいて、中国がこれほどの競争優位性を築けたのでしょうか。周可祥氏はこの問いを、半導体産業の「ムーアの法則」の限界に例えて説明しています。
標的駆動型から技術統合型へ
過去30年間の腫瘍分野におけるイノベーションは、主に特定の「標的」を突き止めることによって推進されてきました。しかし、現在はこの標的の発見が徐々に限界に近づいています。これは、半導体業界でチップの微細化(28nmから3nmへ)が技術的な限界に直面している状況と類似しています。
今後は、二重特異性抗体やADC(抗体薬物複合体)といった、より高度な先端技術がイノベーションの中心となると予測されています。これらの分野では、個別の標的発見よりも、複数の技術を組み合わせ、応用を最適化する「技術の配列統合」と「エンジニアリング応用」がより重視されます。
「1からN」の産業化で主導権
まさにこの「技術の配列統合」と「エンジニアリング応用」こそが、中国産業の強みです。基礎研究(「0から1」)ではなく、初期研究で発見された技術をいかに効率的かつ大規模に産業化(「1からN」)するかという段階において、中国は圧倒的な優位性を確立しています。この構造的な変化が、中国イノベーション薬の爆発的成長を強力に後押ししているのです。
まとめ
中国のイノベーション薬産業は、独自の強みと世界の技術トレンドの変化を背景に、今や米国を凌駕する勢いで成長を続けています。膨大な臨床患者数、効率的な開発プロセス、そして技術統合とエンジニアリング応用に長けた産業構造が、中国を世界のイノベーション薬開発の中心へと押し上げています。この「爆発的成長時代」は、世界の製薬業界の勢力図を大きく塗り替えるだけでなく、日本を含む各国の医薬品戦略やビジネスにも大きな影響を与えることでしょう。中国の動向は、今後も目が離せない重要なテーマとなりそうです。
元記事: pedaily
Photo by Chokniti Khongchum on Pexels












