中国広東省の製造業地図において、江門市が今、急速な進化を遂げ、国内外から注目を集めています。「工業立市、製造業強市」をスローガンに掲げ、深い工業基盤を持つこの都市は、伝統産業の高度化、新興産業の育成、そして未来産業の布陣を戦略的に推進。特に「第14次五カ年計画(2021~2025年)」期間中には目覚ましい成果を挙げ、新たな成長モデルを確立しつつあります。今回は、江門市が掲げる独自の「13158」新工業システムに焦点を当て、その成功の秘訣と、日本企業にとっての示唆を探ります。
広東省江門市、製造業で高成長を実現する秘訣
広東省の製造業ハブとして存在感を増す江門市は、「第14次五カ年計画」期間中に驚くべき成長を記録しました。規模以上工業(一定規模以上の企業)の年間増加値は平均6.7%で伸び、工業投資は累計で約4500億元(約9兆円)に達しました。これにより、江門市は広東省内で6番目に年間工業投資が1000億元(約2兆円)を突破した都市となり、その工業転換の成功を鮮やかに証明しています。
伝統産業のスマート化・高度化
江門市の工業発展を支える「鉄の三角形」と呼ばれる三大産業クラスターがあります。具体的には、現代農業・食品、現代軽工業・紡織、先進材料の分野で、それぞれが年間産値1000億元(約2兆円)を突破。さらに、伝統産業も着実にアップグレードを進めています。オートバイ産業チェーンは2026年までに産値500億元(約1兆円)を突破する見込みで、家電や金属製品など他の5つの産業チェーンも産値600億元(約1.2兆円)を超えています。
これらの成果の背景には、2500社の企業が技術改造を行い、1600社の企業がデジタル化転換を進めた努力があります。例えば、新会中集などの先進的なプロジェクトではAI技術を導入し、不良率を1.5%削減、人件費を30%削減するという画期的な成果を達成しています。
新興・未来産業が牽引する成長エンジンとグリーン化への挑戦
江門市は、新興産業を経済成長の新たな牽引役として育成し、同時に環境に配慮したグリーンな発展を追求しています。
新興産業の勃興:経済成長の新たな牽引役
新エネルギー電池産業クラスターは、大手企業がイノベーションを主導し、海目星や芳源などの20社以上の川上・川下企業を集積。電池製造から材料供給までの一貫したサプライチェーンを構築しています。また、次世代電子情報産業クラスターでは、建滔(Kingboard)や世運電路(Shennan Circuit)といった企業が、チップ組込型PCB(プリント基板)などのハイエンド製品を展開し、AI産業の発展基盤を築いています。これらの「両新一先」(新興産業と未来産業、先進製造業)産業クラスターは、2025年までに年平均9%以上の成長率を見込んでおり、市内全体の工業成長を牽引しています。
グリーン発展:伝統産業に新たな活力を吹き込む
江門市は、グリーン発展の分野でも目覚ましい進展を見せています。市内総設備容量に占めるクリーンエネルギー発電の割合は64.75%、非化石エネルギー発電の割合は54.89%に達し、分散型太陽光発電の系統連系容量は広東省内で上位に位置しています。特筆すべきは、鶴山中富興業電路が省内初の「ゼロカーボン工場」を建設したことで、GDPあたりのエネルギー消費を5年間で15.5%削減、水使用量を27.2%削減するなど、「グリーン含有量」の持続的な向上を実現し、伝統的な工業都市に新たな活力を吹き込んでいます。
未来産業:AI、低空経済、スマートカーが描く青写真
江門市は、未来を見据えた戦略的な産業配置を進めています。AIとロボット分野では、視覚認識やセンサー技術に強みを持つ約100社の企業が集積。中国の旧正月番組「春晩」で話題を呼んだ「カンフーロボット」のコアセンサーも江門の企業製です。また、ドローンなどを活用する「低空経済」分野では既に36社が集まり、海空行公司が生産する600kg級の無人ヘリコプターは年間生産能力30機、意向受注額は2億元(約40億円)を超えるなど、具体的な成果を上げています。スマートコネクテッドカーのテスト運用も進み、93台の自動運転車両が延べ5.3万人以上のサービスを提供し、省内でトップクラスの実績を誇っています。
強固な企業基盤と「13158」新工業システム
江門市の産業発展を支えるのは、強固な企業基盤です。広東省製造業500強には69社が選出されており、これは深センに次ぐ数です。また、省レベルの「専精特新」(専門的で精錬され、特性を持ち、新しい)中小企業は781社に達し、技術革新を推進する中堅勢力となっています。納税額が1億元(約2億円)を超える企業も11社に増加し、維達(Vinda)や海目星などの企業が省レベルの「チェーン長企業」(産業チェーン全体を牽引する企業)として認定され、産業チェーン全体の発展を牽引しています。
江門市は、「第14次五カ年計画」の初年度から、独自の「13158」新工業システムを打ち出し、未来の青写真を描いています。このシステムは以下の目標で構成されています。
- 1:1兆元(約20兆円)規模の工業強市を目指す。
- 3:三大1000億元(約2兆円)規模の産業クラスターを強化する。
- 1:「両新一先」産業(新興・未来産業、先進製造業)を強力に推進する。
- 5:五大主要産業チェーンの発展を促進する。
- 8:八大重点産業チェーンを育成する。
この「量と質の両面での向上」を目指す発展の勢いは、江門市が広東省の製造業構造において、ますます重要な位置を占めていることを示しています。
まとめ
中国広東省江門市の製造業は、伝統と革新の融合によって、持続可能な高品質な発展を実現しつつあります。単なる生産規模の拡大にとどまらず、デジタル化、グリーン化を推進し、AI、低空経済、スマートカーといった未来産業への投資を惜しみません。独自の「13158」新工業システムは、この多角的な戦略を明確に示し、江門市がどのように未来を切り開いていくかを具体的に描いています。
江門市のこのような戦略と成功事例は、日本企業にとっても、中国市場における新たなビジネスチャンスや、サプライチェーン再編のヒントを与えてくれるかもしれません。特に、伝統産業のデジタル化やグリーン転換、新興技術への応用といった分野では、協業の可能性が大いに期待されます。
元記事: pcd
Photo by Keegan Checks on Pexels












