2026年FIFAワールドカップが開幕し、早1週間。深夜に多くの試合が開催されているにもかかわらず、ここ中国ではテレビや新メディアプラットフォームでの視聴率が驚くほど高水準を維持しています。一体なぜ、深夜のキックオフという不利な条件を乗り越え、これほどまでの熱狂が生まれているのでしょうか?本記事では、中国の著名なゲームメディア「触乐(チュールー)」のコラムから、ワールドカップをめぐる中国の視聴状況、ソーシャルメディアの影響、そしてゲームがもたらす新たなエンターテイメント体験について、日本の読者の皆様に深掘りしてご紹介します。
2026年W杯、開幕1週間で早くも熱狂!中国の意外な視聴状況
「触乐怪话」編集長の梅林粉杖氏によれば、第23回FIFAワールドカップは開幕から1週間で、早くも多くの話題を提供しています。全48チームが一度ずつ登場し、24試合が消化された時点で、予想外の番狂わせが続出。特に、これまで「後進地域」と見なされがちだったアジア勢が序盤で目覚ましい活躍を見せ、一時的に無敗を維持する一方、サッカー先進国とされる南米勢が勝利に苦しむという展開に。
この波乱の展開は、FIFA(国際サッカー連盟)にとって大歓迎の材料となりました。32チームから48チームへの増枠は「ゴミ試合を増やさず、むしろトラフィックを大幅に増加させた」というFIFAの主張を裏付けるものとなっているのです。
中国国内では、深夜のキックオフが話題の拡散に不利に働くのではないかという懸念もありましたが、現在のデータを見る限り、テレビや新メディアプラットフォームの視聴率は非常に高く推移しています。
深夜開催の壁を越える熱気の理由
なぜ深夜開催にもかかわらず、中国でワールドカップがこれほどまでに盛り上がっているのでしょうか?
まず、前回のカタールワールドカップと比較すると、北京時間で午後6時から深夜12時までのゴールデンタイムに多くの試合が組まれていたため、視聴者にとって非常に都合の良い時間帯でした。しかし、今大会のほとんどの試合は中国時間で午前3時以降にキックオフされており、一部の午前中開催の試合を除けば、通常であれば視聴は困難です。
梅林粉杖氏の分析によると、高視聴率の背景にはいくつかの理由があります。
第一に、6月は中国の大学統一入試(高考)が終わり、夏休みが始まる時期であり、元々テレビや新メディアの視聴が高まる時期です。例年であれば「話題のドラマ」がこの時期を席巻しますが、今年はドラマもワールドカップを避ける形で放映されており、結果としてワールドカップが唯一無二のスーパーコンテンツとして注目を集めているのです。
第二に、4年に一度のワールドカップには「新規ファンの獲得」という役割があります。元々巨大な視聴者ベースがあるため、大会ごとに多くの新しい視聴者が一時的であっても流入し、全体の視聴データを押し上げます。筆者自身も1990年のイタリア大会で初めてサッカーに触れ、数年後に本格的なファンになった経験を語っています。
サッカーとゲームが融合する新しいW杯体験
今年のワールドカップは、かつてサッカーに全く関心がなかった人々までをも巻き込んでいます。筆者の身近な友人たちも、普段はサッカーとは無縁にもかかわらず、ワールドカップの話題に加わったり、中国版Instagramとも呼ばれるSNS「小紅書(シャオホンシュー)」で試合をライブ視聴したりしているそうです。特に、筆者は小紅書で中央テレビの解説に切り替えて4K画質で視聴していると語っており、新たな視聴方法の広がりを感じさせます。
一方で、「今年はワールドカップの雰囲気が薄い」と感じる友人の声も紹介されています。これに対し筆者は、それは年配の世代が徐々に情熱を失いつつあるだけで、大量の10代や20代の若者たちは連日徹夜で試合を追いかけており、「熱気がないのではなく、熱気が我々の身近にないだけだ」という「生存者バイアス」の可能性を指摘しています。
また、初めてサッカーを見る友人たちからは、「オフサイドって何?」「PKって何?」といった基本的な質問から、「アメリカ・カナダ・メキシコ共催なのに、なんで全部アメリカでやってるの?」という鋭い指摘まで飛び出します。実際、今大会はアメリカが78試合、カナダとメキシコがそれぞれ13試合しか担当しておらず、決勝トーナメントはほとんどアメリカで行われるという不均衡な状況です。さらに、ヴェルデ岬のGKの家族が観戦できない、試合が突然4クォーター制になった、一部のチームがロサンゼルスでの試合後に現地で宿泊できないといった「サッカー界の裏側」にも言及し、スポーツが単なる競技に留まらない側面があることを示唆しています。
ゲームがW杯人気を加速させる仕掛け
そして、今回のワールドカップの熱狂を語る上で欠かせないのが、ゲームが果たす役割です。サッカーのビッグイベントが開催されるたびに、多くのモバイルゲームやオンラインゲームが、その熱気に便乗しない手はありません。
ワールドカップをテーマにした期間限定のタスク、新しいゲームモード、カードパックなどが次々とリリースされています。中には、サッカー場でキャラクターがバトルを繰り広げたり、スタジアムをタワーディフェンスのマップに見立てたりといったユニークなアイデアも見られます。
さらにシンプルかつ強力なのが「ワールドカップ予想(競猜)」イベントです。これは、ゲーム内の通貨を使って試合のスコアや得失点差を予想し、正解すれば報酬が得られるというもの。ワールドカップとは全く世界観の異なる二次元ゲームでもこのようなイベントが開催されており、サッカーに興味のないゲーマーまでもが熱中していると筆者は語ります。
筆者自身も友人に頼まれ予想に挑戦しましたが、結果は8つの予想中3つしか当たらず、ベテランサッカーファンの面目丸潰れだったそうです。しかし、それでも利益が出たのは、システムがプレイヤーに優しい設計だったからだと冗談めかして振り返っています。この競猜は、現金ではなくゲーム内通貨のみを使用するため、サッカーを見ないゲーマーが夢中になっても金銭的なリスクがなく、純粋にイベントを楽しめる点が大きな魅力となっています。友人たちが「昨日はもっと稼げたのに!」「次は全額賭けよう!」と熱狂する様子は、ゲームが新たな形のW杯観戦体験を生み出していることを雄弁に物語っています。
まとめ:変わるスポーツ観戦とエンターテイメントの未来
2026年FIFAワールドカップは、深夜開催という課題をものともせず、中国で空前の熱狂を巻き起こしています。この現象は、単なるスポーツイベントとしてだけでなく、若年層の視聴習慣の変化、ソーシャルメディアの浸透、そしてゲームという強力なエンターテイメント媒体との融合が深く関わっていることを示しています。特にゲーム内での「ワールドカップ予想」イベントは、これまでサッカーに無関心だった層までも取り込み、イベント全体の盛り上がりを加速させています。
スポーツ観戦の形が多様化し、エンターテイメントの境界線が曖昧になる現代において、この中国でのワールドカップ熱狂は、私たち日本のコンテンツプロデューサーやマーケターにとっても、今後の戦略を考える上で多くの示唆を与えてくれるでしょう。単一のメディアに依存せず、多角的なプラットフォームとコンテンツでユーザーを巻き込む視点が、ますます重要になってきそうです。
元記事: chuapp
Photo by George Zografidis on Pexels












