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『太吾絵巻』完全版、英語対応で世界へ!中国ゲーム市場の深層

Chinese video game Wuxia game - 『太吾絵巻』完全版、英語対応で世界へ!中国ゲーム市場の深層

中国の武侠サンドボックスRPG『太吾絵巻』(The Scroll Of Taiwu)が、8年間の早期アクセス期間を経て、ついに2024年6月17日に1.0完全版『太吾绘卷:天幕心帷』をリリースしました。この最新バージョンでは、待望の英語ローカライズが初めて実装され、世界中のプレイヤーが中国の奥深い文化とユニークなゲームプレイを体験できるようになりました。

本作は、近年世界的な成功を収めた『原神』や『黒神話:悟空』以前から、「中国製ゲーム」が持つ巨大な潜在市場を業界に認識させてきた先駆者です。この記事では、『太吾絵巻』の開発チームが語る中国ゲーム市場の変遷、プレイヤーとの交流の重要性、そして議論の的となっている生成AI技術への見解を深掘りし、中国ゲーム産業の現在と未来を紐解きます。

『太吾絵巻』が切り開いた中国ゲームの新たな道

2018年9月20日にSteamで早期アクセスを開始した『太吾絵巻』は、武侠と中国神話の要素を融合した独自のサンドボックスRPGとして、瞬く間に注目を集めました。当時、Steamの中国ユーザーはすでに3000万人を超えており、Niko Partnersのアナリスト、ダニエル・アハマド氏が指摘するように、『Dota 2』のヒットを皮切りに、多くの中国製ゲームや中国語対応ゲームの登場、地域別価格設定の導入、現地決済対応などにより、中国でのSteam利用者は急増していました。

その中で、『太吾絵巻』は早期アクセス開始からわずか2ヶ月で200万本以上を売り上げ、最終的には340万人以上のプレイヤーを魅了。英語非対応ながらSteamの売上ランキングで2位に食い込み、その斬新なテーマとゲームプレイは、多くの欧米プレイヤーに強い印象を与えました。「中国製ゲーム」がSteamのトップチャートに名を連ねることは、今や珍しくありませんが、その潮流を初期に作り出したのが『太吾絵巻』だったのです。

そして2024年6月、螺舟工作室は完全版をリリースし、満を持して英語を全面サポート。これにより、これまで言語の壁に阻まれてきた海外プレイヤーも、中国の壮大な世界観と独特なゲームシステムに没頭できるようになりました。

中国プレイヤーの嗜好とグローバル展開へのヒント

螺舟工作室の創設者で『太吾絵巻』のメインクリエイターである「茄子」氏は、本作の成功要因として、その独創的な題材と遊び方を挙げています。10年前、日本のRPGの影響が色濃かった中国のインディーゲーム界において、同スタジオは武侠を核とした全く新しい体験の創造を目指しました。プレイヤーが自由に探索し、様々なメカニズムとインタラクションできる構造は、当時の中国インディーゲームでは非常にユニークだったのです。

中国市場で成功するための鍵

茄子氏は、無料ゲームが主流の中国市場で、買い切りPCゲームへの関心が高まっていると指摘します。「過去1年間だけでも、『太吾絵巻』には数十万件のウィッシュリストが追加されており、中国プレイヤーが良質なゲームを求めている証拠です」と語ります。

もし欧米のデベロッパーが中国市場で成功を望むなら、まずはゲームの物語と文化的内包に注力すべきだと提言。説得力のあるストーリーは、プレイヤーを長く引きつける力があるからです。また、中国文化を扱ったゲームでなくても成功は可能で、例えばヨーロッパの歴史を背景にした『キングダムカム・デリバランス』は、その収益の5分の1以上が中国市場からだと推計されています。これは、中国プレイヤーがゲームのメカニズムよりも異なる文化に興味を持ち、多様な文化に対してオープンな姿勢を持っていることを示唆しています。

ローカライズとコミュニティ運営の重要性

『太吾絵巻』のアートディレクター「木桶」氏は、欧米企業が中国市場で犯しがちな誤りとして、ローカライズの質の低さを挙げます。特に翻訳の拙劣さや、上辺だけの中国要素は、中国プレイヤーにすぐに見破られてしまうとのことです。一方で、ローカライズの質が平凡でも、開発チームが積極的にプレイヤーと交流し、フィードバックに耳を傾ける姿勢があれば、中国での成功の可能性は十分にあると強調しています。

中国のプレイヤーコミュニティを構築・運営する上で、欧米とは異なるアプローチが必要です。茄子氏によると、『太吾絵巻』のコミュニティは、百度貼吧(Baidu Tieba)、Bilibili、QQやWeChatのチャットグループ、そしてゲーム情報アプリの小黒盒(Xiaoheihu)など、様々なプラットフォームで活発に活動しています。中国プレイヤーはDiscordのような単一のプラットフォームに集まるのではなく、それぞれが慣れ親しんだSNSを利用する傾向があるため、多角的なアプローチが不可欠です。

一方、海外プレイヤーとの交流においては、Discordが主要なプラットフォームとなります。『太吾絵巻』のパブリッシングコンサルタントであるYager氏は、海外のコミュニティを研究し、大部分のプレイヤーがDiscordに集まっていることを発見。たとえAI翻訳ツールを使っても、開発者が真摯にプレイヤーと向き合い、彼らの視点に立ってゲームを体験し、問題や要望を理解する姿勢が最も重要だと語っています。

中国ゲーム市場の未来と生成AIへの見解

茄子氏は、中国ゲーム市場が今後も急速に発展し、その構図も変化すると予測しています。かつてはごく少数のインディースタジオしか知られていませんでしたが、今では多くの中小規模チームが優れたゲーム一本で成功を収めています。これは『黒神話:悟空』や近年の人気インディーゲームで顕著であり、中国のPCゲーム市場は間違いなく成長期にあり、今後も規模が拡大していくでしょう。

技術的なハードルが下がり、プログラミングスキルがなくてもゲーム開発が可能になった現代において、創造性とコンテンツ制作が重要であると茄子氏は語ります。この文脈で、彼は生成AIについても言及しています。中国では特にモバイルゲーム開発において生成AIの利用が広く普及しており、欧米よりも浸透している可能性が高いとされています。

しかし、螺舟工作室は『太吾絵巻』の開発において、AI生成素材を一切使用していません。茄子氏は、AIをツールとして活用することは容認しつつも、ゲームコンテンツの創作には使わない方針を明確にしています。「ゲームには独創性が必要であり、これまで誰も考えつかなかったような内容を提供すべきです。そうしたコンテンツはAIからは生まれません」と語ります。

Yager氏もこの見解に同意します。ゲーム創作はデベロッパーの夢と表現の融合であり、生成AIは他者の作品をコピーするに過ぎません。他人の夢を奪うようなことはせず、人間だけが可能な創造性を発揮すべきだと主張します。

さらに茄子氏は、中国プレイヤーはAIに好奇心旺盛であるものの、AI生成コンテンツがゲームに含まれていると、ゲームが安物だと感じられ、開発チームの評判を損ねる可能性があると付け加えています。AIの痕跡が明確な場合、プレイヤーは「デベロッパーは手抜きをしている」と感じる傾向があるからです。

まとめ

『太吾絵巻』の完全版リリースと英語対応は、単なるゲームのアップデートに留まらず、中国ゲーム産業が持つ多様性と成熟、そして世界市場への強い意欲を象徴しています。螺舟工作室の開発者たちが語る、独自の文化表現へのこだわり、プレイヤーとの真摯な交流、そして生成AI技術への慎重ながらも現実的な姿勢は、日本のゲーム開発者にとっても多くの示唆を与えることでしょう。

中国のPCゲーム市場は成長を続け、中小規模チームの台頭により多様な作品が生まれています。独自の文化と革新的なゲームプレイで世界を魅了する中国製ゲームの動向に、今後も注目が集まります。

元記事: chuapp

Photo by mingche lee on Pexels

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