中国のエンタメ業界で、あるライブ配信を巡る騒動が大きな話題となっています。ゲーム情報サイト「gamersky」の報道によると、中国の「発魔社(ファーマーシャー)」という企業が、中国で絶大な人気を誇る俳優・歌手の王一博(ワン・イーボー)と同名のスタッフのアカウントを使ってライブ配信を行い、多くのファンを混乱させました。
わずか2000人ほどのフォロワーしかいなかったアカウントが、配信開始と同時に一気に6万人もの視聴者を集め、多くのネットユーザーが本物の王一博が配信していると誤認。この騒動は瞬く間に中国版TwitterであるWeibo(ウェイボー)のトレンドワードに浮上し、企業のマーケティング手法と個人情報保護のあり方に疑問が投げかけられています。
中国の人気俳優「王一博」と同名アカウントで起きた騒動の経緯
事の発端は、1月21日に「発魔社」が行ったライブ配信でした。同社は「王一博」という名前のアカウントで配信を開始しましたが、このアカウントはフォロワーがわずか2000人程度。しかし、配信が始まるとすぐに6万人もの視聴者が集まりました。これは、中国で絶大な人気を誇る俳優の王一博(ワン・イーボー)本人が配信していると多くのファンが誤解したためです。
「発魔社が王一博と同名アカウントでライブ配信」というハッシュタグはすぐにWeiboのホットサーチ(トレンドワード)入り。ネットユーザーからは「騙された」「誤解を招くやり方だ」といった批判の声が相次ぎました。
企業側の釈明と世論の反発
この状況に対し、「発魔社」はWeiboのコメント欄で、当該スタッフの身分証明書を公開し、本名が「王一博」であることを証明しました。さらに、そのスタッフは18歳の頃から10年間、同社で働いているベテランであると説明。また、10年前に人気バラエティ番組『天天向上(ティエンティエンシャンシャン)』の収録に際し、すでに芸能人の王一博本人に、チーム内に同名のスタッフがいることを伝えていたと主張しました。
同社は、ライブ配信はあくまで「参加して楽しむ」という意図であり、誤解を招いたことについては「申し訳ない」とコメント。さらに、「皆が楽しければそれでいい」とし、6万人の視聴者数も「極めて正常なデータだ」と述べました。
しかし、世論はこれを額面通りには受け止めませんでした。企業が人気俳優の同名を利用してトラフィック(視聴者)を集めようとしたのではないかという疑念が噴出。「同名であることを告知すること」と「商業目的でその名前を使用することを許可すること」は全く別次元の話であり、「発魔社」が意図的に概念をすり替えていると厳しく指摘されました。
個人情報保護法違反の疑いも浮上
さらに深刻な問題として、個人情報保護法違反の疑いが持ち上がっています。「発魔社」がスタッフの身分証明書の写真(氏名、身分証番号、住所などの完全な個人情報)を公開したことに対し、これは『中華人民共和国個人情報保護法』に違反し、個人のプライバシー権を侵害する行為であるとの批判が上がっています。
中国では、2021年に施行された『個人情報保護法』により、個人の情報保護に対する意識が高まっています。企業が意図せず、あるいは意図的に個人情報を公開することは、厳しく問われる時代となっており、今回の「発魔社」の対応は、法的にも倫理的にも問題視される事態となりました。
まとめ
今回の騒動は、中国におけるSNSマーケティングの倫理的な問題点と、個人情報保護の重要性を浮き彫りにしました。人気や話題性を追求するあまり、消費者の誤解を招くような手法や、個人のプライバシーを侵害する行為に及ぶことは、企業の信頼を失墜させるだけでなく、法的な制裁を受ける可能性もあります。
日本でも、インフルエンサーマーケティングやライブコマースが盛んになる中で、著名人の名前や肖像を巡るトラブルは起こり得ます。今回の中国の事例は、企業がデジタルプラットフォームで活動する上での透明性、誠実さ、そして法令遵守の徹底がいかに重要であるかを再認識させるものと言えるでしょう。
元記事: gamersky
Photo by Tima Miroshnichenko on Pexels












