中国が国家レベルで推進するスマート高齢者ケアプロジェクトにおいて、SenseTime(商湯科技)傘下の家庭用ロボットブランド「元萝卜(Yuán Luóbo)」が重要な役割を担うことになりました。同社は、潤沢科技が主導する「スマート介護ロボットイノベーションコンソーシアム」に参画。産業用ロボットの常識を覆す「家電価格」でAIロボットアームを量産し、すでに日本を含む20以上の国・地域に進出しています。今後は、高度なAIと言語モデルを統合し、高齢者の健康管理や感情的ケア、さらには一般的な家事までこなす「感情に寄り添うスマート介護ロボット」の普及を目指します。
中国が描くスマート介護の未来:国家プロジェクトに選出された「元萝卜」
近年、中国工業情報化部と民政部が共同で推進するスマート介護サービスロボットの応用試験プロジェクトが進行しており、280社を超える応募の中から、わずか32社が選出されました。その中で、AI分野のリーディングカンパニーであるSenseTimeの家庭用ロボットブランド「元萝卜(Yuán Luóbo)」がこの国家プロジェクトに名を連ね、さらに潤沢科技が主導する「スマート介護ロボットイノベーションコンソーシアム」への参加を打診されました。
このコンソーシアムは、燕達養老、松延動力ロボット、楽聚ロボットといった企業と共に、「AI演算能力(大規模モデル)+ロボット応用」を核としたクローズドループ型イノベーションプラットフォームを構築します。その目標は、Teslaのロボット技術エコシステムをベンチマークとし、多種多様なセンサー融合とAI大規模モデルの統合により、複数の介護シナリオで深い連携を実現することです。元萝卜は、コンソーシアム内部の評価で上位10位に入る実績を示しています。
常識を覆す価格破壊と世界戦略
元萝卜がこの重要なコンソーシアムに選ばれた背景には、その「家電価格」を志向する革新的な戦略があります。同社は、家庭用AIロボットアームのグローバル初の量産企業として、これまで30万元(約600万円)が一般的だった産業用ロボットアームの価格を、技術革新によってわずか3999元(約8万円)にまで引き下げました。これは従来の約1/75という驚異的な価格破壊であり、すでに10万台の販売実績を誇ります。その製品は、日本、韓国、アラブ首長国連邦、東南アジアなど、世界20以上の国と地域で市場に投入されており、「技術で価格の壁を打ち破る」というその姿勢が、今回のコンソーシアム参加の決め手となりました。
AIロボットが実現する高齢者ケアと家事支援
コンソーシアム参加後、元萝卜は二つの主要なミッションに注力し、スマート介護の実現を推進します。
チェスロボットから生まれる「感情的ケア」
一つ目のミッションは、同社の主力製品であるチェスロボットのアップグレードです。マルチモーダル大規模言語モデル(LLM)を搭載することで、介護施設などの環境で高齢者と流暢な音声対話を実現します。これにより、単なる「チェス対戦」に留まらず、「感情的な寄り添い」という新たな価値を提供します。同時に、AIが常時高齢者の健康状態をモニタリングし、服薬のリマインダーや、異常状態を検知した際には速やかに緊急通報を行う機能も備える予定です。このプロジェクトは年内に試験運用を開始し、継続的なアップグレードが計画されています。
2027年に向けた家庭用家事ロボットのビジョン
二つ目のミッションは、2027年の家庭用介護市場を見据え、家事ロボットの開発を全力で推進することです。これまでに10万台のAIロボットアームを量産した経験を活かし、元萝卜は「家電価格のロボット」のコンセプトのもと、料理、洗濯、部屋の整理整頓といった基本的な家事を自動化するロボットの実現を目指します。現在、技術調査と設計は完了しており、主要技術の開発とプロトタイプ製造が進められています。試験が成功すれば、一般家庭でも手頃な価格でスマート介護ロボット製品を利用できるよう、迅速な普及が図られる見込みです。元萝卜は、「実験室から家庭へ」という現実的なアプローチで、10万台規模の製品普及経験を新たな製品にも適用しようとしています。
機能から感情へ。「心价比」で新たな需要を創造
スマート介護の機能性追求と同時に、元萝卜はチェスロボットの10万台販売で培った市場基盤を活かし、機能的価値から感情的価値へのアップグレードを模索しています。具体的には、IP(知的財産)連携モデルを通じて、製品に感情的な温かみを注入する戦略です。これにより、消費者は単なる便利さだけでなく、「感情的なコストパフォーマンス」、つまり「心价比」(中国語で「心」を意味するXinと「性价比」のJia Biを組み合わせた造語で、感情的な満足度と価格のバランスを指します)を重視した新たな需要が喚起されると見込んでいます。
まとめ
超高齢社会の日本にとって、中国の低価格かつ高性能なAIロボットの動向は非常に注目に値します。特に「元萝卜」が提唱する「家電価格のロボット」というコンセプトは、ロボット介護の普及を大きく加速させる可能性を秘めています。単なる機能提供に留まらず、IP連携を通じて感情的価値を追求するアプローチは、ロボットとの共生社会における新たな可能性を示唆しています。将来的には、日本市場においても、こうした手頃で心温まるAIロボットが、高齢者の生活の質向上に貢献する日が来るかもしれません。
元記事: pcd
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