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快手の“反逆”フードデリバリー参入の深層

Kuaishou app Food delivery app - 快手の“反逆”フードデリバリー参入の深層

中国の大手ショート動画プラットフォーム「快手(Kuaishou)」が、激化するフードデリバリー市場に参入し、業界内で大きな注目を集めています。美団(Meituan)や淘宝閃購(Taobao Now)、京東(JD.com)といった大手各社が「無秩序な競争」からの減速を呼びかける中、快手のこの動きはまさに「反逆」とも言えるでしょう。しかし、その戦略は一見すると矛盾しているようにも見えます。単なる収益化ではない、快手独自の深い狙いとは何なのでしょうか?

「反逆児」快手がフードデリバリー参入?その狙いとは

2025年7月、美団、淘宝閃購、京東が当局から事情聴取を受け、フードデリバリー市場の過熱競争が一度は落ち着くかに見えました。8月1日には、各社が協調して「無秩序な競争」への反対を表明し、収益を度外視した過剰な補助金競争からの転換を示唆しました。抖音(Douyin)でさえ、フードデリバリーの自社構築には否定的でした。そんな矢先に、快手は独自の「フードデリバリー」機能をアプリ内に実装したのです。

しかし、快手のフードデリバリーは、私たちがイメージする「自社運営」とは少し異なります。実際に注文しようとすると、美団や餓了麼(Ele.me)といった第三者のミニプログラムにジャンプして取引を完了する仕組みです。つまり、快手は自社で店舗や配送チームを持つのではなく、あくまで既存のフードデリバリープラットフォームへの「入口」としての役割を担っているのです。昨年美団との提携を更新し、「今後3年間で100都市1万店舗」を目指すと表明した背景には、このような導流(トラフィック誘導)モデルがありました。快手はユーザーを既存のプラットフォームに送ることで、手数料収入を得るのが現状のビジネスモデルと言えるでしょう。

激化する競争下の「トラフィック不安」と「ユーザー定着」戦略

では、なぜ快手はこのタイミングで、利益が見込みにくい「導流」型のフードデリバリーに参入したのでしょうか。その背景には、快手が抱える「流量焦慮(トラフィック不安)」があります。

フードデリバリー業界は、数円の割引でユーザーを奪い合うほどの激しい競争が繰り広げられており、短期的な収益は見込めません。モルガン・チェースのレポートによると、主要フードデリバリープラットフォームの予測利益率はわずか1.5%~3.3%とされており、決して高収益なビジネスではありません。快手もこの状況を理解しており、単に広告収入を得るために参入したわけではありません。

快手の真の狙いは「ユーザー定着」にあります。快手の2025年第1四半期の平均月間アクティブユーザー(MAU)は7.12億人に達していますが、前年同期比で増加したのはわずか0.15億人にとどまり、成長の鈍化が顕著です。一方、競合の抖音は2025年3月時点でMAUが10億人を突破しており、差は開く一方です。さらに追い打ちをかけるように、先月には快手にとって大きな価値を持つIPであった「周杰倫(ジェイ・チョウ)唯一の中国語アカウント」を抖音に引き抜かれ、ユーザー層の多様化を図る上での機会を失いました。

このような状況下で、快手はユーザーの獲得(引流)よりも、既存の7億人を超える「老鉄(ラオティエ:快手の熱心なユーザーを表す言葉)」をいかにアプリ内に留め、彼らの利用頻度を高めるかという「留存(定着)」戦略に舵を切ったのです。快手はEC事業において月間平均リピート購入率が4.2回と非常に高く、その「老鉄コミュニティ文化」が強固なユーザーエンゲージメントを築いています。フードデリバリー機能をアプリ内に組み込むことで、ユーザーが外卖を注文する際に他のアプリに移動する必要がなくなり、快手アプリ内での滞在時間を延ばすことを狙っています。

自社運営モデルへの挑戦?フードデリバリーのその先

フードデリバリーへの参入は、快手が現在進めている多角的な収益化探索の一環でもあります。2025年第1四半期には、ローカルライフサービス(本地生活)のGMV(流通総額)が大幅に増加し、収入も前年比2倍となりました。まだ売上全体の15%未満ですが、コア事業であるオンラインマーケティングサービスの成長鈍化(前四半期の13.3%から8%へ減速)を補う新たな柱としての期待が寄せられています。

快手の模索はフードデリバリーに留まりません。最近では、快手自身の公式自社運営店舗である「快手官方自营旗舰店」を開設しました。これは、快手が将来的に自社でECやフードデリバリーの店舗運営に乗り出す可能性を示唆しています。

例えば、フードデリバリーにおいて、京東は自社でゴーストレストラン「七鮮小厨(Qixian Xiaochu)」を展開しています。快手も同様に、独自の「快手外卖店」を展開する可能性は十分に考えられます。配送インフラの構築は困難ですが、店舗運営であれば比較的低いコストで試行錯誤が可能です。特に、快手は地域や都市によってユーザーの集中度が高いという特徴があります。特定の地方都市では、快手のデイリーアクティブユーザー浸透率が60%を超える地域もあり、このような地域を「試験都市」として、ユーザーの好みに合わせたセントラルキッチン型の「快手外卖店」を展開することも考えられます。ショート動画プラットフォームとしての強みを生かし、調理風景をライブ配信することで、ユーザーは安心感を持ち、さらに「老鉄」文化が加わることで、単なる注文を超えたユニークな体験を提供できるかもしれません。

まとめ

快手のフードデリバリー市場参入は、単なるトレンド追随ではなく、自身の成長鈍化に対する深い危機感と、既存の強固なユーザーコミュニティをいかに活用していくかという戦略的な判断から来ています。当面は「導流」モデルでユーザー定着を図りつつ、将来的には自社運営店舗の可能性も視野に入れていると言えるでしょう。

これは、プラットフォーム企業がいかにユーザーの囲い込みとエンゲージメントを深めるかという、現代のデジタルビジネスにおける普遍的な課題に対する快手なりの回答です。日本のサービス事業者にとっても、ユーザーの「離脱」を防ぎ、自社プラットフォーム内での体験をいかにシームレスで豊かにするかという視点は、今後のビジネス戦略を考える上で重要な示唆を与えてくれるのではないでしょうか。

元記事: 36氪_让一部分人先看到未来

Photo by Norma Mortenson on Pexels

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