中国で圧倒的な人気を誇るドリンクチェーン「蜜雪氷城(Mixue Bingcheng)」が、新たな戦略の一手としてビール市場への参入を発表しました。その買収額はなんと約2.968億元、日本円にして約58億円という巨額です。同社が掲げる「朝C(Coffee)晩A(Alcohol)」戦略の一環として、生ビールブランド「鮮啤福鹿家(Xianpi Fulujia)」の株式53%を取得したことで、今後の事業展開に大きな期待が寄せられています。しかし、この買収には市場から多くの疑問符が投げかけられています。その理由は、買収先である鮮啤福鹿家の筆頭株主が、蜜雪氷城CEOの張紅甫氏の配偶者である田海霞氏だったからに他なりません。高すぎる評価額と身内取引の疑惑が絡み合い、中国飲食業界に大きな波紋を広げています。
蜜雪氷城、ビール市場へ本格参入!「朝C晩A」戦略の加速
蜜雪氷城は、そのリーズナブルな価格設定と広範な店舗ネットワークで、中国の若者を中心に絶大な支持を得ているドリンクチェーンです。今回、同社がターゲットとしたのは、急成長を続ける中国のアルコール市場。
約58億円で生ビールブランドを買収
最近発表された公告によると、蜜雪氷城は生ビールブランド「鮮啤福鹿家」の株式53%を約2.968億元(約58億円)で取得しました。この動きは、同社がこれまで推進してきた「朝C(コーヒー)晩A(アルコール)」戦略における重要な一歩と見られています。蜜雪氷城は、既にコーヒー市場にも参入しており、今回のビール事業への拡大は、一日を通して顧客の多様なニーズに応えるための多角化戦略の現れと言えるでしょう。
蜜雪氷城は、新たに2.856億元を投じて鮮啤福鹿家の新規登録資本金を払い込み51%の株式を取得し、さらに独立した第三者株主の趙杰氏から2%の株式を1120万元で買い取るという複合的な手法で、合計53%の支配権を獲得しました。これにより、鮮啤福鹿家は蜜雪氷城の非全額出資子会社となり、将来的にその財務実績は蜜雪氷城の連結決算に組み込まれることになります。
市場の疑問符:高すぎる買収額と「身内取引」の疑惑
一見すると通常の事業拡大に見えるこの買収ですが、発表直後から市場の憶測を呼び、大きな注目を集めています。その核心は、高額な評価額と、蜜雪氷城のCEOの配偶者が買収先の筆頭株主であるという「関連会社取引」の疑惑にあります。
CEO配偶者への莫大な利益
買収発表前の鮮啤福鹿家の筆頭株主は、蜜雪氷城CEOの張紅甫氏の配偶者である田海霞氏でした。田氏は直接および間接的に80%以上の株式を保有しており、今回の取引後も、残りの保有株式の評価額は約2.2億元(約43億円)に達するとされています。田氏と関連会社の初期投資額が合計約2683万元(約5.2億円)であったことを考えると、今回の取引は約8.2倍という莫大な投資回収率をもたらしたことになります。また、株式を売却した趙杰氏も、2%の株式売却で1120万元(約2.2億円)の利益を得ています。
異常な高評価:523年で元が取れる計算?
市場が特に疑問視しているのは、買収額の妥当性です。公開情報によると、鮮啤福鹿家は2023年に153万元の赤字、2024年に107万元のわずかな黒字を計上しています。未監査の純資産は1952万元です。にもかかわらず、蜜雪氷城の買収評価額は約5.6億元(約109億円)にも上ります。
この評価額に基づいて計算すると、鮮啤福鹿家の株価収益率(P/E比率)は約523倍、株価純資産倍率(P/B比率)は約29倍という驚異的な数値になります。これは、A/H株市場のビールセクターの平均P/E比率が30倍未満、P/B比率が約2.5倍であることと比べると、著しく高い水準です。
この状況は、「蜜雪氷城が投資額を回収するには、現在の利益水準で523年かかる」と揶揄されるほどです。蜜雪氷城は公告で、独立した第三者評価に基づいて価格を決定したと強調していますが、市場では高すぎる評価額と関連会社取引の組み合わせに対し、公正な取引であったのかという疑念が払拭されていません。
まとめ:蜜雪氷城の挑戦と市場の動向
蜜雪氷城の今回の買収は、同社の多角化と「朝C晩A」戦略への本気度を示すものとして注目されています。しかし、その背後にある高額な関連会社取引は、中国企業のガバナンスと市場の透明性に関する議論を再燃させることになりました。
巨大な消費者市場を持つ中国において、大手飲食チェーンの戦略的な動きは常に業界内外の関心を集めます。蜜雪氷城がビール市場でどのような存在感を示すのか、そしてこの買収に関する市場の疑念にどう対応していくのか、今後の動向が注目されます。日本の消費者市場への直接的な影響は小さいものの、中国大手企業のダイナミックな市場戦略と、それに伴う課題は、グローバルなビジネス環境を理解する上で重要な事例となるでしょう。
元記事: pedaily
Photo by Tembela Bohle on Pexels












