中国で、勤務中の「睡眠」や「外食」を理由に解雇された女性プログラマーが会社を提訴し、最終的に勝訴したというニュースが報じられました。企業が監視カメラを通じて従業員の行動を細かく管理する中、どこまでが正当な解雇理由となるのか、そして労働者の権利はどのように守られるべきなのか、多くの示唆に富む事例と言えるでしょう。
監視カメラが捉えた「不適切行為」と女性プログラマーの解雇
この物語の主人公は、小陳(シャオチェン)さんという女性プログラマーです。彼女は担当していたプロジェクトが中止になった後、会社の指示で研修に参加するため、宝山のオフィスに配属されました。このオフィスでは、監視カメラシステムを導入し、従業員の勤怠管理を行っていたのです。
それから約3ヶ月後、小陳さんは「勤務中の睡眠」を理由に書面での警告を受けました。さらにその翌日には、「持ち場を離れる」「外食をする」といった理由で、立て続けに3回の口頭警告を受けます。
会社側は、これらの口頭警告を合算して1回の書面警告に「昇格」させ、結果的に1ヶ月以内に2回の書面警告があったとして、これを「重大な規律違反」と見なし、彼女との労働契約を解除しました。解雇された小陳さんは、まず労働仲裁に訴えましたが、残念ながら支持を得られませんでした。しかし、彼女は諦めず、地方裁判所に提訴することを決意します。
裁判で小陳さんは、外食は配達の遅延によるものであり、一時的に持ち場を離れたのは給湯室に行くためや仕事の電話に対応するためだったと主張しました。そして、これらの行為は決して「重大な」規律違反と呼べるものではないと訴えたのです。
裁判所の厳しい判断:会社は「意図的な解雇条件」をねつ造
裁判所は、提出された証拠、特に監視カメラの映像を詳細に調査しました。その結果、驚くべき事実が明らかになります。
裁判所は、小陳さん以外の他の同僚たちにも「勤務中の睡眠」など、同様の行為が見られたにもかかわらず、会社が小陳さんに対してのみ、このような規律違反を追及したことを指摘しました。これは「選択的な追及」とみなされます。
また、小陳さんが持ち場を離れた時間も非常に短く、その行動が職務に重大な支障をきたすほどではなかったことも確認されました。さらに裁判所は、会社が研修期間中の監視カメラ映像を遡ってチェックし、過去の複数の行為を組み合わせて「重大な規律違反」という解雇条件を意図的にねつ造したと厳しく判断したのです。
宝山人民法院は、小陳さんの行為は、注意喚起で是正可能な程度の規律違反であり、労働契約を解除するほどの「重大な」違反には当たらないと結論付けました。会社が複数の警告を合算して解雇の理由としたことは、法的根拠を欠くものと断定され、会社の解雇は不法であると判決が下されました。
その結果、会社は小陳さんに対し、11万3千元余り(日本円で約240万円以上、為替レートにより変動)の賠償金を支払うよう命じられました。
今回の判決が示すもの、そして日本への示唆
この判決は、中国における労働者の権利保護が強化されている現状を浮き彫りにしています。特に、監視カメラやデジタルツールによる従業員のモニタリングが一般的になる中で、企業が従業員の行動をどこまで監視し、それを理由に解雇できるのか、その限界と法的根拠の重要性を示したと言えるでしょう。
日本でもリモートワークの普及やオフィスでの監視カメラ設置が増える中、同様の事案が発生する可能性は十分にあります。企業側は、従業員のプライバシーや人権に配慮し、解雇は最終手段であることを改めて認識するとともに、就業規則や懲戒規定の運用においては、客観的かつ公平な視点を持つことが求められます。
一方で従業員側も、自身の労働契約や就業規則を理解し、不当な扱いに直面した際には、適切な法的手段を講じる重要性を改めて示す事例となりました。この判決は、単なる一つの労働争議を超え、現代社会における労働と監視のあり方を問いかけるものです。
元記事: gamersky
Photo by Christina Morillo on Pexels












