中国の投資界で今、巨大な資金の動きが注目を集めています。全国社会保障基金と地方政府が連携し、科学技術革新を推進するための超大型ファンドが相次いで設立されているのです。特に、浙江省と江蘇省ではそれぞれ500億元(日本円で約1兆円)規模の「社会保障科技創新基金」が始動。AI、集積回路(半導体)、新エネルギー、バイオ製造といった戦略的新興産業への大規模な資金流入が予測されており、中国のイノベーション加速に向けた本気度がうかがえます。
中国、総額2兆円規模の「社会保障科技創新基金」が続々始動
中国の金融ニュースサイト「pedaily」によると、2025年11月1日から7日までの期間で、有限責任組合員(LP)による投資活動が合計52件記録されました。中でも特に目を引くのは、中国の年金積立金運用機関である全国社会保障基金理事会(日本のGPIFに相当)が主導し、地方政府や大手銀行と共同で設立する大規模な投資ファンドの動きです。
浙江省、科学技術革新の新たな担い手へ
まず、浙江省では「浙江社会保障科技創新基金」が正式に発足しました。初期規模は500億元(約1兆円)で、浙江省、全国社会保障基金理事会、中国農業銀行が協力して設立。浙江省の科学技術革新を加速する重要な担い手として期待されており、「マザーファンド(親ファンド)による牽引+専門ファンドによる深耕」というモデルを通じて、市場化、法治化、専門化された投資運営を進めていく方針です。これにより、浙江省のテクノロジーイノベーションエコシステムはさらなる高みを目指すとされています。
江蘇省、戦略的新興産業へターゲットを絞り投資
同様に、江蘇省でも10月31日に南京で「江蘇社会保障科技創新基金」の正式契約が締結されました。こちらも初期規模は500億元(約1兆円)。全国社会保障基金理事会が江蘇省政府、蘇州市政府、そして中国工商銀行と手を組み設立したもので、蘇州創新投資集団有限公司が運用管理者となります。このファンドは「マザーファンド+直接投資」の二層構造と共同管理モデルを採用し、江蘇省と蘇州の強固な産業基盤とイノベーションエコシステムを活用。企業の全ライフサイクルにわたる投資を展開し、AI、集積回路、バイオ製造、新エネルギー、ハイエンド設備、新素材といった戦略的新興産業分野の優良な科学技術プロジェクトを重点的に支援。地域産業チェーンの強靭性と安全性を高めることを目指します。
上場企業もLPとして参加、生物製造分野にも巨額資金
こうした政府系ファンドの動きに加えて、民間企業も活発に投資活動に参加しています。最近では、上場企業の貝泰妮(Betteni)が、医療健康産業投資ファンド「無錫金雨茂物医療健康産業投資合夥企業(有限合夥)」へ有限責任組合員(LP)として出資を計画していると発表しました。貝泰妮は以前にも紅杉中国(Sequoia China)のLPを務めるなど、積極的な投資姿勢が注目されています。これは、成長企業がその資金力を活かして、将来性のあるスタートアップやテクノロジー分野への投資を加速させる中国のトレンドを象徴する動きと言えるでしょう。
また、広州市白雲区では11月3日に「生物製造産業発展行動計画発表会」が開催され、総規模100億元(約2,000億円)の生物製造産業基金群の設立が発表されました。これは、特定の戦略的産業分野を地方政府が育成するため、集中的に資金を投入する方針を示しており、中国全土で類似の取り組みが加速していることを示唆しています。
まとめ
中国では、国家レベルの社会保障基金が地方政府や大手金融機関と連携し、AI、半導体、バイオといった先端技術分野への巨額投資を加速させています。これは、単なる経済成長だけでなく、国の長期的な競争力と産業の自立を目指すという、中国政府の明確な戦略的意図が背景にあります。
これらの大規模ファンドは、既存の産業構造に変革をもたらし、新たなイノベーションの波を生み出すことが期待されます。日本企業にとっても、中国市場の動向を注視し、中国の技術進化がもたらすビジネスチャンスとリスクの両方を深く理解することが、今後の戦略立案において不可欠となるでしょう。
元記事: pedaily
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