2025年の年末、中国のベンチャーキャピタル(VC)業界が大きな活気を見せています。12月だけでも21件もの資金調達が報じられ、特にハードテックや新エネルギーといった戦略的な産業分野に巨額の資金が流れ込んでいることが明らかになりました。嘉御資本(Jia Yu Capital)や中科創星(CAS Star)、国際的なGranite Asia、そして凱博成都基金(Kaibo Chengdu Fund)といった主要な投資会社が相次いで大型ファンドの組成やクローズを発表。中国の産業政策と市場の動向が色濃く反映された、年末の資金調達ラッシュを深掘りします。
中国VC業界、年末に駆け込み資金調達が集中
中国の投資情報サイト「投資界(Pedaily)」によると、2025年12月(12月1日~31日)に報告された資金調達の動向は合計で21件に上りました。これは、年末に向けて多くのファンドがクローズを急いだことを示唆しています。特に注目すべきは、数億元、数億ドル規模の大型ファンドの組成が複数あったことです。これらの資金は、国の主要な産業戦略である「ハードテック(硬科技)」や「新エネルギー」といった分野に集中的に投じられる見込みです。
嘉御資本:40億元超の新ファンドを設立
12月5日、嘉御資本は上海陸家嘴で開催された投資家年次総会で、総規模40億人民元(約800億円)を超える複数の新ファンドの組成・設立を発表しました。主要な投資家(LP)には、長沙、寧波、天津といった地方政府が主導する誘導基金、エコシステムを連携させる上場企業の産業資本、市場をリードする人民元建てマザーファンドなどが名を連ねています。創設パートナー兼会長の衛哲氏(Mr. Wei Zhe)は、「投資とは信頼の伝達である」と述べ、14年にわたり「終わりから始める」という原則と、投資家へのリターン(Return)、リスク(Risk)の厳格な管理、多方面からの尊敬(Respect)という「3R原則」を遵守してきたことを強調しました。
中科創星:ハードテック向けに40.8億元を最終クローズ
12月11日、ハードテック分野の早期投資に特化した中科創星科技投資有限公司(CAS Star)は、傘下の中科創星先導創業投資基金が最終クローズし、総規模が40.8億人民元(約816億円)に達したと発表しました。今回の最終クローズでは、太保資本長航母基金、海淀区中関村科学城科技成長基金、アリババグループ、広州産投、珠海科技産業集団、南京市創投集団、復旦科創母基金、国聯民生など、多様な機関投資家が新たなLPとして加わりました。これは、クロスドメインのトップ資本がハードテック分野への長期主義的アプローチを高く評価していることを示しています。このファンドは、今年7月にも19のLPと初回クローズを完了しており、その際の金額は26.17億人民元でした。
Granite Asia:プライベートクレジットで3.5億ドルを調達
国際的な投資会社Granite Asiaは、12月10日にプライベートクレジットファンド「Libra Hybrid Capital Fund」が初回クローズで3.5億米ドル(約500億円)超を調達したと発表しました。この資金調達は、シンガポールのテマセク・ホールディングス傘下のAranda Principal Strategies、マレーシア政府系ファンドのKhazanah Nasional Berhad、インドネシアの政府系ファンドINA(Indonesia Investment Authority)がリード投資家として参加しました。目標総額は5億米ドルで、世界中の機関投資家、政府系ファンド、Granite Asiaのパートナーチーム、そして過去25年にわたり築き上げてきた起業家や企業ネットワークから多様な資金が集まっています。
凱博成都基金:新エネルギー分野で20億元規模に拡張
12月12日、凱博資本(Kaibo Capital)が運用する凱博(成都)新エネルギー株式投資基金が追加資金調達を完了しました。既存のアンカー投資家である中創新航科技集団が追加投資を行っただけでなく、成都産投先進製造産業株式投資基金という重要な戦略的パートナーも新たに導入されました。これにより、同基金は総額20億人民元(約400億円)規模となり、新エネルギー分野における投資をさらに加速させることが期待されます。
まとめ:中国の産業戦略が投資トレンドを牽引
2025年年末の中国VC業界の活況は、政府主導の産業政策が投資トレンドに深く影響を与えている現状を浮き彫りにしています。特に「ハードテック」と「新エネルギー」は、中国が国の競争力強化のために重点的に育成する分野であり、国内外の資金が集中していることはその証左と言えるでしょう。これらの分野は、米中間の技術覇権争いや脱炭素化の流れといったグローバルなマクロトレンドとも密接に連動しています。
日本企業にとっても、中国市場のこのような投資動向は無視できません。ハードテックや新エネルギー分野での中国企業の台頭は、サプライチェーンや技術開発における新たな競争と協業の機会を生み出す可能性があります。中国の政策誘導型投資の動向を注視し、今後のビジネス戦略に活かしていくことが重要となるでしょう。
元記事: pedaily
Photo by Jimmy Chan on Pexels












