中国の大手自動車メーカー、上海汽車集団(SAIC Motor)がインキュベートするモビリティサービスプロバイダー「享道出行(SAIC Mobility)」が、香港証券取引所への上場(IPO)に向けて正式に申請書を提出しました。今年5月には13億元(約270億円)超のCラウンド資金調達を成功させており、その勢いのままIPOを目指します。中国の巨大IT企業アリババグループなど大手からの出資も受ける同社は、今回のIPOで得た資金を自動運転技術の研究開発やRobotaxi(無人タクシー)事業の運営強化などに充てる計画です。中国の三大自動車メーカー傘下のモビリティ企業が香港市場に集結する動きが加速しており、今後の動向から目が離せません。
中国モビリティ市場を牽引する「享道出行」の挑戦
享道出行は、上海汽車集団が2018年に立ち上げたモビリティ戦略ブランドです。上海でのサービス開始以来、急速に事業を拡大し、わずか2年間で配車サービスの登録ユーザー数は2000万人を突破。上海、南京、杭州、鄭州、合肥など20都市でサービスを展開しています。
同社は2020年12月、企業向けカーシェアリングサービス「享道租車」を統合し、配車サービス、企業向けサービス、個人向けレンタカー、タクシーサービスを網羅する「全シーンスマートモビリティ統合体」を構築しました。これにより、あらゆる移動ニーズに対応するワンストップソリューションを提供しています。
累計資金調達額は26.3億元(約540億円)に上り、特に注目すべきは、2020年末に完了したAラウンド戦略的資金調達です。この際、中国の巨大IT企業アリババグループ(中国語では「宝王」とも呼ばれる)と、世界最大のEVバッテリーメーカーである寧徳時代(CATL)が共同で出資を行っています。これらの有力企業がバックアップする形で、享道出行はさらなる成長を目指しています。
IPOで描く未来:自動運転とRobotaxiへの投資
享道出行が今回の香港IPOで調達する資金は、主に以下の分野に投じられる予定です。
- 自動運転技術の研究開発とRobotaxi(無人タクシー)運営サービスの強化
- 配車サービスの研究開発
- ユーザーおよびドライバー基盤の拡大、ブランド認知度の向上、市場シェアの増加
- 車両購入によるフリート(車両保有台数)および運営規模の拡大
特に自動運転技術とRobotaxiへの注力は、モビリティサービスの未来を見据えた戦略的な一歩と言えるでしょう。これにより、より安全で効率的な移動体験の提供を目指します。
激化する中国モビリティ市場のIPO競争
中国のモビリティサービス市場では、IPOを目指す企業が相次いでいます。既に広汽集団(GAC Group)傘下の「如祺出行(Ruqi Mobility)」が2024年7月に、吉利集団(Geely Group)傘下の「曹操出行(Cao Cao Mobility)」が今年6月にそれぞれ香港市場に上場しています。
享道出行のIPOが成功すれば、香港市場には中国三大自動車メーカー(上汽、広汽、吉利)傘下の主要モビリティブランドが出揃うことになり、今後の競争はさらに激化すると予想されます。
また、Robotaxiサービスを提供するPony.aiやWeRide(文遠知行)といった企業も香港IPOを計画中です。WeRideは2024年10月にNASDAQへ上場済みですが、今年11月6日には香港での二重上場を控えており、自動運転分野の企業も資本市場での存在感を高めています。この競争の波は、日本のモビリティ業界にも少なからず影響を与える可能性があります。
まとめ
上海汽車集団傘下の享道出行による香港IPOは、中国のモビリティ市場が次の成長フェーズに入ったことを示す象徴的な動きです。アリババなどの強力な後ろ盾と、自動運転技術への積極的な投資により、同社は今後、中国国内だけでなく世界のモビリティサービスにおける主要プレイヤーとなる可能性を秘めています。日本のモビリティサービス事業者や自動車メーカーにとっても、中国市場のこうした動きは、将来のビジネスモデルや技術開発の方向性を考える上で重要な示唆を与えてくれるでしょう。今後の享道出行、そして中国モビリティ市場全体の発展に注目していきましょう。
元記事: pedaily
Photo by Vladimir Srajber on Pexels












