中国の江蘇省塩城市にある「塩城経済技術開発区」が、大規模な産業投資を加速させるため、約10億元（日本円で約200億円）規模の第一期産業投資母体ファンドの運営を担うGP（ゼネラルパートナー）の公募を開始しました。これは、地域経済の質的向上と産業構造の転換を図るための重要な一手です。自動車、新エネルギー、電子情報といった既存の主力産業に加え、デジタル経済、グリーン低炭素、さらには低空経済（ドローンや空飛ぶクルマなど、低高度空域を活用した経済活動）やヒューマノイドロボットといった最先端の戦略的新興産業への投資を強力に推進し、中国が提唱する「新質生産力（新しい品質の生産力）」の創出を目指します。日本企業も注目すべき中国地方政府の最新動向を探ります。
中国・塩城経済技術開発区が描く未来産業の姿
今回公募が行われているのは、「塩城経済技術開発区高品質第一期産業投資母体ファンド」のサブファンドの管理機関（GP）です。この母体ファンドは、総規模約10億元という大規模なもので、江蘇悦達プライベートエクイティ基金管理有限公司が管理を担っています。
このファンドの主な目的は、社会資本を呼び込み、塩城経済技術開発区の産業転換と高度化を支援し、より強固なファンドシステムを構築することにあります。投資対象となる重点産業は多岐にわたり、国家、省、市、区の主要戦略に沿って投資活動を展開します。具体的には、自動車、新エネルギー、電子情報といった既存の主力産業に加え、デジタル経済、グリーン低炭素といった戦略的新興産業に注力。さらに、低空経済やヒューマノイドロボットといった、まさに未来を担う新しい生産力に繋がるプロジェクトも支援対象としています。
産業サブファンドのGP公募：投資戦略と条件
今回の公募では、全国の優れた機関がこの産業サブファンドの設立に積極的に参加することを促すため、サブファンドの管理機関を公開で選定しています。
サブファンドの基本要件と投資方向
設立が予定されている産業サブファンドは、「塩城経済技術開発区先進科学技術産業ファンド」と銘打たれ、規模は約2.5億元です。原則として、塩城経済技術開発区内に登記されることが求められます。投資の方向性としては、デジタル経済、現代サービス、スマート製造、新素材などの関連産業に重点的に投資されます。
出資比率と存続期間
出資比率については、母体ファンドからのサブファンドへの出資が、サブファンド総規模の30%を超えないことが条件です。また、サブファンドの管理機関は、サブファンド総規模の1%以上、または500万元（約1億円）以上を出資する必要があります。さらに、管理機関が募る外部資金はサブファンド総規模の20%以上と定められています。
サブファンドの存続期間は8年間が基本で、ファンドパートナー会議の決定により、1回限り、最長2年間の延長が可能です。
投資地域の特定条件
注目すべきは投資地域に関する条件です。サブファンドは、塩城経済技術開発区内への投資額が、ファンド内の塩城経済技術開発区からの各種出資主体の出資総額の1倍以上であることが求められています。これは、地域経済への確実な貢献を促すための重要な規定と言えるでしょう。
日本企業への示唆：中国地方政府の産業育成戦略
塩城経済技術開発区の今回のGP公募は、中国の地方政府が「質の高い発展」と「新質生産力」の創出をいかに重視しているかを示す好例です。大規模な政府系ファンドをテコに、先端技術や戦略的産業への投資を加速させ、地域経済の再構築を図るこの動きは、日本企業にとっても、中国市場における潜在的なビジネスチャンスや、現地でのパートナーシップ戦略を検討する上で重要な情報となります。
特に、特定の地域への投資を促すインセンティブが明確に設定されている点は、日本企業が中国市場で事業展開する上での機会だけでなく、現地の政策動向を深く理解することの重要性を示唆しています。中国の地域経済が目指すイノベーションと成長の方向性を理解し、今後の動向を注視することが、グローバル市場で競争力を維持するために不可欠となるでしょう。
元記事: pedaily
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