AIブームの最中、37歳という若さで今年の最年少億万長者に輝いた人物がいます。彼の名はエドウィン・チェン氏。創業したAIスタートアップSurge AIは、初の資金調達で評価額が驚異の約240億ドル(約2.4兆円)に達しました。AI開発に不可欠な「データラベリング」という地味ながらも極めて重要な分野で、外部資金に頼らず5年間で年間売上10億ドル超を達成した、まさに現代の成功物語の主役です。
AI新時代の億万長者:エドウィン・チェン氏とは
Forbes誌の報道によると、中国系アメリカ人のエドウィン・チェン氏が創業したSurge AIは、初の資金調達ラウンドで10億ドルを調達し、その評価額は約240億ドル(日本円で約2兆4000億円、人民元で約1712億元)にまで跳ね上がりました。この急成長により、チェン氏は自社株式の約75%を保有し、純資産は180億ドル(約1兆8000億円)に達し、今年のForbes米国最年少億万長者リストに初めて名を連ねました。
Surge AIの驚くべき点は、これまでの5年間、一度も外部からの資金調達を行わずに年間売上10億ドル(約1000億円)以上を達成していたことです。まさにAI業界の「伝説」とも言える快挙を成し遂げ、これまでAI投資家たちの間で密かに語られてきた同社が一躍脚光を浴びることになりました。
AIを支える「シャベル売り」:データラベリングの重要性
チェン氏が32歳だった2020年に設立したSurge AIの主要事業は「データラベリングサービス」です。これは人工知能の精度を向上させるために、AIが学習するデータを人間が分類・タグ付けする作業を指します。いわゆる「AI時代のシャベル売り」とも形容されるこの分野は、AIそのものを開発するのではなく、AI開発に必要不可欠なインフラを提供するビジネスモデルです。
AI業界には「どれだけ人間がいるか、それがどれだけの知能か」という有名な格言があります。データラベリング企業は、大量のアウトソーシングチームを擁し、データを精錬することでAIの「最も鋭利な部分」に注力しています。技術がどれほど進化しようとも、モデルの学習には常に「クリーンなデータ」が不可欠であり、これがデータラベリングが代替不可能な根本的な理由なのです。
AIの三本柱は、データ、アルゴリズム、計算能力と言われます。NVIDIAが計算能力の「シャベル売り」であれば、データラベリング企業はデータの「シャベル売り」にあたります。これがSurge AIや、競合であるScale AI(Metaが150億ドル出資し、評価額290億ドル超)が、数兆円規模の評価額に達する理由です。
37歳までの軌跡:MIT卒のエリートが掴んだ成功
1988年生まれのエドウィン・チェン氏は、ごく普通の家庭に育ちました。両親は中華料理店を営んでおり、彼は幼い頃から数学とSF小説に夢中でした。なんと8歳で独学で微積分を学び、17歳でマサチューセッツ工科大学(MIT)に進学。数学、言語学、コンピューターサイエンスを専攻しました。
卒業後、チェン氏はウォール街へ。シリコンバレーの著名な投資家ピーター・ティール氏が創業したヘッジファンド「Clarium Capital」でアルゴリズム開発に従事しました。その後は、シリコンバレーの多くのエンジニアと同様に、Twitter、Google、Facebookといった巨大IT企業を渡り歩き、データ関連の業務を担当しました。そして32歳の時に大企業を辞し、自らSurge AIを立ち上げたのです。
急激な富の増加について問われたチェン氏は、淡々と「Surgeを創業していなくても、データマイニングやAIトレーニングはしていたでしょう。生まれつきこの仕事をする運命だったのです」と語り、「たまたま儲かることをしただけ」と謙虚な姿勢を見せています。
まとめ
エドウィン・チェン氏の成功物語は、AI時代において、目立たないながらも極めて重要な基盤技術にこそ大きなビジネスチャンスが潜んでいることを示しています。AIモデルの進化には良質なデータが不可欠であり、そのデータの整備を担う「データラベリング」は、まさにAIの根幹を支える「縁の下の力持ち」です。
彼のように、特定分野の深い知見と先見性を持って創業し、着実に実績を積み上げていく起業家精神は、日本をはじめとする世界中のスタートアップエコシステムにとって大きな示唆となるでしょう。AI技術のさらなる発展のためには、こうした「シャベル売り」ビジネスの価値を認識し、適切な投資と人材育成を進めることが不可欠です。
元記事: pedaily
Photo by Kindel Media on Pexels












