シリコンバレーに再び激震が走っています。イーロン・マスク氏率いるAI企業xAIが、なんと元従業員Xuechen Li氏を提訴しました。訴訟の理由は、Li氏がxAIの独自AIチャットボット「Grok」に関する企業秘密を盗み出し、ライバル企業であるOpenAIに持ち込んだというもの。マスク氏自身もSNS「X」で激しく非難しており、この一件はAI業界の熾烈な競争と、企業秘密保護の重要性を浮き彫りにしています。一体何が起こったのでしょうか?詳細を見ていきましょう。
xAIとOpenAI、因縁の対決に新たな火種
イーロン・マスク氏とOpenAIの間には、創業当初からの因縁があります。マスク氏はOpenAIの共同創設者の一人でしたが、その後袂を分かち、OpenAIを「クローズドな営利企業になった」と批判。そして自身のAI企業xAIを立ち上げました。そんな中で今回、xAIの元従業員がOpenAIに転職し、企業秘密を持ち出したとされる事件が浮上したのです。
イーロン・マスクの怒り:Grokの「コードベース全体」が流出か
xAIの訴状によると、元従業員のXuechen Li氏は、同社が開発するAIチャットボット「Grok」の最先端AIモデルのトレーニングと開発を担当していた初期の重要エンジニアの一人でした。彼が盗んだとされる企業秘密には、「ChatGPTや他の競合製品を凌駕する」技術が含まれており、OpenAIが「より革新的なAIと想像力豊かな機能」を持つChatGPTを開発するのに役立つ可能性があり、OpenAIに「AI分野での潜在的な巨大な競争優位」をもたらす恐れがあるとされています。
この事態に対し、マスク氏自身も自身のSNS「X」で激しく反応。「彼(Li氏)はOpenAIからの誘いを受け入れ、xAIの全コードベースをアップロードした!」と投稿し、怒りをあらわにしました。xAIは、Li氏をカリフォルニア州北部連邦裁判所に提訴しています。
元エンジニアXuechen Li氏の疑惑の行動
Li氏の不正行為は、綿密な計画のもと行われたとxAIは主張しています。Li氏は昨年2月にxAIに入社しましたが、今年6月から7月にかけて、自身のxAI株を2回に分けて売却し、約700万ドル(約10億円)もの大金を手にしていました。
そして退職のわずか3日前である7月25日、Li氏は会社のノートPCから「機密情報および企業秘密」をストレージデバイスにコピー。その後、自身の不正行為を隠蔽するため、ブラウザ履歴やシステムログの削除、ファイルの名称変更、圧縮など様々な手段を講じ、最終的にこれらのファイルを自身の個人デバイスにアップロードしたとされています。
7月28日にxAIを正式に退職する際、Li氏は「会社資産をすべて返却し、コピーを削除した」と書面で表明していました。しかし8月11日、xAIのセキュリティ監査によってデータ流出の兆候が発見され、Li氏に協力が求められますが、Li氏は主要なアカウントのパスワードを変更するなどで協力を拒みました。その後、弁護士同席のもと、Li氏は8月14日に企業秘密の窃盗行為を認めました。
さらに8月18日、xAIはLi氏の個人デバイスへのアクセスとデータ調査・削除に同意を得ましたが、Li氏は主要なアカウントのパスワードを提供せず、「パスワードを覚えていない」と弁護士を通じて回答。しかし、これらのアカウントは最近まで使用されていたことが判明しています。そして、この一連の出来事の直後、8月19日にLi氏はOpenAIに正式に入社しました。退職前にすでにOpenAIから招待を受けていたことも明らかになっています。
繰り返される機密情報流出、AI業界の課題
xAIが訴訟で求めているのは、一時的な差し止め命令、Li氏がOpenAIまたは競合他社で生成AI関連の業務を行うことの禁止(データが完全に削除されるまで)、関連デバイスやアカウント情報の開示、盗んだデータの返却と永久削除、そして実際の損害賠償、懲罰的賠償、弁護士費用など多岐にわたります。現時点ではOpenAIが直接の被告ではありませんが、マスク氏とOpenAIの長年の対立を考慮すると、OpenAIがこの件で全く無関係でいられる可能性は低いでしょう。
AI技術の進化が目覚ましい現代において、企業間の競争はかつてなく激化しています。その一方で、人材の流動性も高く、企業秘密の保護はAI企業にとって非常に重要な課題となっています。特に最先端のAIモデルは膨大なデータと計算リソース、そして独自のアルゴリズムによって成り立っており、その情報が流出すれば企業の競争力に壊滅的な打撃を与えかねません。今回の事件は、AI業界全体に警鐘を鳴らすものであり、各企業はより厳格な情報管理体制の構築を迫られることになるでしょう。
まとめ
この事件は、AI技術が国家戦略レベルで重要視される現代において、企業秘密の保護がいかに困難で、かつ重要であるかを再認識させます。特に、OpenAIとマスク氏の間には以前から複雑な関係があり、今回の訴訟は単なる従業員の不正行為に留まらず、両社の競争に大きな影響を与える可能性があります。日本のAI関連企業も、人材流動性が高いテック業界における機密情報管理の徹底が喫緊の課題となるでしょう。今後の裁判の行方と、それがAI業界全体に与える影響に注目が集まります。
元記事: gamersky
Photo by Markus Winkler on Pexels












