中国の公安部が、乗用車の新たな国家標準「機動車運行安全技術条件」の意見募集稿を公開し、自動車業界に大きな波紋を広げています。特に注目されているのは、新エネルギー車(NEV)を含む乗用車の「0-100km/h加速時間をデフォルトで5秒以上に義務付ける」という規定です。これは、近年多発する電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)における「加速制御不能」事故への対策が主な目的とされており、ドライバーの安全意識向上と誤操作の減少を目指すものです。一体なぜこのような規制が導入されるのでしょうか。その背景と具体的な内容を見ていきましょう。
中国公安部が新基準を提案:EV加速性能に制限か
2023年11月14日、中国の公安部が「機動車運行安全技術条件」という強制性国家標準の意見募集稿を公表しました。この草案の中で、特に自動車ユーザーやメーカーの関心を集めているのが、乗用車に関する新たな加速性能の要件です。
具体的には、「乗用車は、電源投入またはエンジン点火後(エンジン自動停止機能を除く)、毎回、0-100km/h加速時間が5秒以上となるデフォルトの動作状態にあるべきである」と規定されています。これはつまり、車両が起動した初期状態では、急加速ができないよう設計される必要があるということです。ドライバーがより速い加速性能を求める場合は、手動で「スポーツモード」などに切り替える操作が必要となります。
なぜデフォルト加速性能を制限するのか?
この新基準が導入される背景には、いくつかの重要な理由があります。意見募集稿の「編制説明」には、その目的が明確に記されています。
- 現行基準の課題: 現在の2017年版GB7258(国家標準)は、新エネルギー車や先進運転支援システム(ADAS)搭載車に対する具体的な要件が不足しており、これらの新技術が急速に発展する中での交通安全管理ニーズに対応しきれていませんでした。
- 加速制御不能事故の多発: 近年、中国国内では純粋な電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)において、「加速失控(加速制御不能)」事故が多発しています。これらの事故の多くは、ドライバーが意図せず高加速モードを使用し、その際の運転準備や操作能力が不足していたことに起因すると分析されています。
- ドライバーの安全意識向上: 新基準の目的は、車両が起動時に加速性能の低いデフォルト状態となることで、ドライバーが高速加速モードを使用する際に、意識的な操作を促し、運転への準備意識を高めることです。
- 誤操作の防止: 統計によると、現在の教習所の教習車や、多くのガソリン乗用車の0-100km/h加速時間は一般的に5秒より長いです。この「5秒以上」という加速速度は、新米ドライバーや高齢ドライバーにとっても適応しやすく、誤操作のリスクを軽減する効果が期待されています。
今後の展望と日本への影響
この新たな国家標準は、公布から6ヶ月後に正式に施行される予定です。これにより、中国市場に投入される全ての乗用車、特に高性能なEVやPHEVは、デフォルトの走行モードで加速性能を制限する設計変更を余儀なくされるでしょう。
これは単なる技術的な変更だけでなく、ドライバーへの「安全警告」としての意味合いも持ちます。日常の運転をより安定させ、ドライバーが制御可能な状態を保ち、過剰な加速による操作ミスを根本から減らすことを目指しています。高性能車の運転には、それに見合ったスキルと意識が必要であるというメッセージが込められていると言えるでしょう。
中国は世界最大の自動車市場であり、特にEVシフトを強力に推進しています。このような安全規制の強化は、グローバルな自動車開発にも影響を与える可能性があります。日本の自動車メーカーも中国市場での展開を考慮する際、この新基準への対応が不可欠となります。また、EVの高性能化が進む中で、各国でも同様の安全対策が検討されるきっかけとなるかもしれません。
元記事: mydrivers












