近年、ゲーム業界において「宝箱(ルートボックス)」を巡る規制が世界中で強化されています。ベルギーやオランダでは賭博とみなされ、一部のゲームから機能が削除される事態にまで発展しました。そんな中、人気FPS『カウンターストライク2』(CS2)を運営するValve(V社)が、この問題を合法的に回避しつつ、プレイヤーの購買意欲を刺激する新たなシステム「Genesis Terminal」を導入し、注目を集めています。
規制の波とValveの新たな挑戦:Genesis Terminalとは?
これまで、ゲーム内の宝箱はランダムにアイテムを獲得する仕組みとして、多くのタイトルで収益の柱となってきました。しかし、そのランダム性ゆえに、特にヨーロッパ諸国では賭博性が指摘され、厳しい規制の対象となっています。EA Sportsのゲームが特定の国で抽卡(ガチャ)機能を停止せざるを得なくなったのも、この規制強化の表れです。
そんな逆風の中、V社が『カウンターストライク2』で“再発明”したと報じられているのが、この「Genesis Terminal」システムです。外見上は従来の宝箱のように見えますが、その中身の入手方法には決定的な違いがあります。
「開けてから買う」革新的なシステム詳細
Genesis Terminalのシステムは、まずプレイヤーが毎週無料で入手できる戦利品箱を開封するところから始まります。しかし、ここでランダムなスキンを「獲得」するわけではありません。箱を開けると、一つずつランダムなスキンが提示され、プレイヤーは提示されたスキンを固定価格で購入するかどうかを決定します。
このシステムは、次のような複雑な選択を伴います。
- Genesis Terminalをアクティベートすると、3日間のうちにスキンを選ばなければなりません。
- スキンは一度に一つだけ表示され、現在のスキンを拒否しないと次のスキンを見ることはできません。
- 一度拒否したスキンは二度と表示されないため、後戻りはできません。
これにより、プレイヤーは「このスキンを買うか、次の未知のスキンに賭けるか」という判断を迫られます。低価格で魅力的なスキンが出れば喜びますが、もし超高額な希少スキンが提示された場合、購入すべきか否か、大きな葛藤が生まれることでしょう。なお、購入したスキンは1週間後にゲーム内市場で販売可能ですが、必ずしも購入価格を回収できる保証はありません。
規制回避の妙手か、それとも新たな心理操作か?
このGenesis Terminalが注目される最大の理由は、その法的側面です。V社は、ランダムなアイテムを「獲得する」のではなく、ランダムに「提示されたアイテムを固定価格で購入するかどうか決定する」というこのシステムが、既存の反賭博法に抵触しないと考えています。実際、『カウンターストライク2』のアップデート情報では、「ベルギー、オランダ、フランスのプレイヤーもGenesis Terminalのアイテムを開封できるようになりました」と明記されており、規制の厳しい国々での提供開始は、この解釈に自信があることの表れと言えるでしょう。
V社は以前にも、2019年にフランス向けに「購入前に箱の中身を表示するスキャナー」を提供したことがあり、ゲーム内課金の法的課題に積極的に取り組んできた経緯があります。
「FOMO」を巧みに利用する心理戦略
Genesis Terminalは、法的な側面だけでなく、プレイヤー心理を巧みに突くシステムでもあります。「錯失の恐れ(FOMO – Fear Of Missing Out)」、つまり「これを逃すと二度と手に入らないかもしれない」という心理が強く働くのです。例えば、毎週の無料箱を開け、中からとんでもないレアスキンが現れたとしましょう。しかし、その価格が1600ドルだったとしたら、あなたは「手に入れたい」という喜びと「高すぎる」という現実の間で激しく揺れ動くはずです。
一部からは「EAやUbisoftがこんなシステムを出したら袋叩きに遭うだろうに、Valveなら許されるのはなぜか」という声も聞かれます。その理由の一つに、V社が提供するゲーム内アイテムが自由な市場取引が可能である点が挙げられます。しかし一方で、「それなら市場で直接欲しいスキンを買うのと何が違うのか」という疑問の声も上がっており、賛否が分かれるところです。
まとめ:ゲーム業界の未来と日本のプレイヤーへの示唆
Valveの「Genesis Terminal」は、世界的な宝箱規制の潮流に対し、ゲーム会社がどのように対応していくべきかを示す一つの革新的な試みと言えます。法律の抜け穴を突くような形ではありますが、「子どもを賭博行為に参加させたと訴えられるリスクを避ける」というV社の明確な目的を達成しつつ、ビジネスを継続する巧妙なバランスを見出しています。
このシステムが今後、他のゲームタイトルや日本のゲーム市場に直接どのような影響を与えるかはまだ不明ですが、ゲーム内マネタイズのあり方を考える上で非常に興味深い事例であることは間違いありません。規制と収益化の狭間で生まれる新たなメカニズムは、ゲームの未来をどのように形作っていくのでしょうか。
元記事: gamelook
Photo by Tima Miroshnichenko on Pexels












