米国国土安全保障省が、不法移民の取り締まりを宣伝する動画に、世界的な人気を誇るゲーム「ポケモン」のキャラクターやテーマ曲を無断で使用し、大きな波紋を呼んでいます。特に「Gotta Catch ’Em All(全部捕まえようぜ!)」というポケモンのキャッチフレーズが、逮捕・拘留の文脈で用いられたことに、ファンからは怒りの声が殺到。通常、知的財産権の保護に非常に積極的な任天堂とポケモンカンパニーですが、今回は当初沈黙を守り、その異例の対応に注目が集まっています。一体何が起きているのでしょうか?
米国政府によるポケモン無断使用の経緯
米国では、トランプ政権の厳しい移民政策が施行されており、不法移民の取り締まりが強化されています。移民税関執行局(ICE)が移民の逮捕・送還を積極的に進める中、米国国土安全保障省(DHS)が、その活動を宣伝する目的で制作した動画に問題が発生しました。
問題の動画では、人気アニメ「ポケットモンスター」の映像やテーマ曲が使用され、手錠をかけられた人々が逮捕される様子と重ね合わされています。さらに、ポケモンの有名なスローガン「Gotta Catch ’Em All」を引用し、逮捕された不法移民の「弱点は氷タイプ(ICEの暗喩)」と表記するなど、露骨な形でポケモンのブランドが悪用されました。この動画は公開からわずか2日で7,190万回以上の再生を記録し、急速に拡散しました。
これを見た多くのポケモンファンは、SNS上で任天堂とThe Pokémon Company International(ポケモンカンパニー)のアカウントに言及し、知的財産権侵害に対する法的措置を強く求めました。
なぜ任天堂は沈黙を貫くのか?元法務責任者が語る背景
通常、知的財産権の侵害に対しては「東半球最強の法務」とも言われるほど、厳格な対応で知られる任天堂ですが、この件に関しては当初、沈黙を保っていました。ポケモンカンパニーも、当初は明確な対応を示しませんでした。
その後、ポケモンカンパニーは「我々のブランドに関連する画像と文言が米国国土安全保障省の動画に使用されていることは認識しています。当社はこのコンテンツの制作や配信に関与しておらず、IPの使用許可も与えていません」と声明を発表しましたが、それ以上の具体的な法的措置については言及がありませんでした。
ポケモンカンパニーの元法務責任者は、この件について「任天堂が訴訟を起こす可能性は非常に低いだろう」と発言しています。その理由として、以下の点を挙げています。
- 企業のメディア露出回避: ポケモンカンパニーはブランドそのものを焦点に置くことを好み、メディアに積極的に登場することを避ける傾向にある。
- 米国における任天堂幹部の永住権問題: 任天堂の米国拠点には、グリーンカード(米国永住権)を持つ幹部が多く、米国政府を相手取った訴訟は彼らの立場に影響を及ぼす可能性がある。
- 問題の沈静化を待つ戦略: 訴訟に積極的だった元法務責任者自身も、この件は数日で収束すると見ており、企業は静観することで風評が収まるのを待つ可能性が高い。
実際に、他のソーシャルメディアではこの問題に関する投稿がロックされ、コメントが削除されるといった情報統制の動きも見られました。しかし、X(旧Twitter)などでは、ファンが「世界中の力を結集して、任天堂とポケモンカンパニーが国土安全保障省を訴えるべきだ」と訴えるなど、反発の声は根強く残っています。
今後の展望と日本への影響
他のケース、例えば「パルワールド」を巡る知的財産権問題などでは、非常に積極的に法的措置を検討している任天堂・ポケモンカンパニーが、米国政府に対しては静観の構えを見せていることは、多くのファンに驚きと失望を与えています。特に、動画が7,000万回以上再生され、明らかにブランドイメージを損なう形で利用されているにもかかわらず、です。
ポケモンカンパニーの元法務責任者の言葉通り、両社は沈黙を貫くことでこの騒動をやり過ごし、その後、他の個人や企業に対しては引き続き厳しい姿勢で臨む可能性が高いと見られています。
日本の企業、特に国際的に展開するコンテンツホルダーにとって、今回の件は、海外政府機関によるIP無断使用という新たなリスクと、それに対する対応の難しさを示す事例となるでしょう。今後、任天堂とポケモンカンパニーがどのような最終的な対応を取るのか、その動向が注目されます。
元記事: gamelook
Photo by Caleb Oquendo on Pexels












