中国で今、果実を原料とする「果酒」市場が急速に拡大しています。今年3月1日には、中国西部地域の奨励産業リストに「果酒製造」が正式に追加され、政府もこの分野の発展を後押ししています。さらに、アリババが発表した春節(旧正月)期間の消費レポートによると、果酒の購入者数は前年比でなんと2倍に増加し、そのうち女性が7割を占めていることが判明しました。経済的に自立した女性の消費力、通称「彼女経済」が牽引するこのブームは、なぜここまで女性の心を掴むのでしょうか?そして、千億元規模に達すると言われる「品目はあっても代表的なブランドがない」とされる果酒市場において、中国ブランドはいかにして頭角を現していくのでしょうか。その背景と今後の展望を探ります。
「彼女経済」が牽引!中国で花開く果酒市場
中国の若い女性たちは、グローバルな消費市場においてその存在感を日々増しています。中国本土では、実に家庭消費の4分の3もの決定を女性が主導するとされ、「彼女経済」に関連する新たな消費額は、2017年の3.3兆元から2022年には8.6兆元(約1.2兆ドル)に達すると予測されています。経済的に自立し、自分自身を豊かにすることに積極的な女性たちの購買力は、消費行動全体を動かす重要な原動力となっています。
この「彼女経済」の波は、ついに酒類業界にも押し寄せています。女性の酒類消費額の割合は増加傾向にあり、一人あたりの平均購入単価(客単価)の伸び率は男性を大きく上回るという報告もあります。実際に、多くの低アルコール果酒ブランドが次々と資金調達に成功し、大手白酒メーカーである茅台、五粮液、瀘州老窖なども、相次いで果酒製品を市場に投入しています。例えば、茅台は貴州省丹寨の特産品であるブルーベリーをベースにした「ブルーベリー精醸」を、瀘州老窖は成都大邑県の広大な青梅を原料に、若年層の女性に人気の「青梅酒」を開発し、好評を博しています。
女性に選ばれる3つの理由:なぜ「果酒」は魅力的なのか?
飲酒に対する女性と男性の意識には、多くの違いがあります。女性は、男性のような「酒席」や「酒の場の文化」を好まず、アルコールが体に与える影響をより気にかけます。泥酔するよりも、飲む行為そのものを楽しみ、その体験に高い質を求める傾向があります。こうした違いこそが、果酒が女性から熱い支持を得ている理由と言えるでしょう。
1. ほろ酔い気分で楽しめる低アルコール
消費意識の変化に伴い、「酔い潰れるまで帰らない」という豪快な飲み方から、「適度なほろ酔いを心地よく楽しむ」という理性的なスタイルへとトレンドが移行しています。女性の酒類市場では、心地よい微醺(ほろ酔い)をもたらす低アルアルコール酒の注文増加率が、他の酒類よりも顕著に高くなっています。
市販されている果酒は、一般的にアルコール度数が10数度から20度程度、中には数度というものもあり、まるでジュースのような感覚で楽しめます。甘くフルーティーな口当たりは、女性消費者の心を容易に掴みます。炭酸飲料よりも満足感がありながら、飲みすぎても泥酔しにくいため、アルコールがもたらす喜びを心ゆくまで味わうことができるのです。
2. 「映える」パッケージとデザイン性
中国の果酒はまだ発展途上にあり、ワインや白酒のような確立された文化体系を持たない分、パッケージデザインには大きな可能性が秘められています。多くの果酒ブランドは、トレンドを意識した斬新で目を引くデザインを採用し、果物本来の鮮やかさも相まって、多様なデザインを生み出しています。
男性が好む控えめなデザインとは対照的に、女性は明るい色使いやデザイン性の高い製品を好みます。暮らしのあらゆる側面に美意識を持つ女性にとって、お酒のデザインもまた重要な要素。実際に、味を試す前に、パッケージの美しさに惹かれて購入を決めることも少なくありません。また、飲み終わった後も、おしゃれな瓶を花瓶として再利用し、インテリアとして楽しむ女性も多く見られます。
3. 美容と健康を意識した選択
多くの果酒ブランドは、果酒がフルーツの原液を発酵させて作られているため、フルーツの栄養を余すことなく吸収でき、ビタミンや必須アミノ酸が豊富に含まれていると宣伝しています。生でフルーツを食べるよりも、果酒として摂取する方が栄養を効率よく吸収できるとされています。
女性にとっては、肌質の改善や睡眠の促進、さらにはクマや毛穴の目立ちにも良い効果が期待できるとされています。濃厚でまろやかな味わいは、内臓に負担をかけず、美容と健康を意識しながらお酒を楽しみたい女性にとって、非常に魅力的な選択肢となっています。また、アルコールは脂肪燃焼を阻害するため太りやすいと思われがちですが、果酒に含まれるポリフェノールには、体脂肪の蓄積を抑える働きがあるため、太りにくいという点も、体型を気にする女性には特に魅力的です。
「有品類無ブランド」の千億元市場:果酒ブランドの未来
ECデータ分析機関ECdatawayのデータによると、中国の主要ECプラットフォームであるアリババ(Tmall+Taobao)におけるプリミックス酒/果酒カテゴリの売上高は、2018年に2017年比で154%増、2019年も45%増を記録しました。さらに2020年の「独身の日(ダブルイレブン)」セール期間の速報では、果酒カテゴリの成長率は酒類全体で国産白酒に次ぐ第2位となっています。
しかし、果酒カテゴリはまだ市場の導入期にあり、今後の飛躍的な成長が期待される一方で、「品目はあっても代表的なブランドがない」という市場の現状は変わっていません。輸入果酒が供給面で課題を抱える中、消費者の代替品需要が高まり、国産果酒ブランドは急速に市場を拡大しました。また、酒類市場全体が若年層化しており、90年代生まれや95年代生まれの消費者が低アルコールで甘酸っぱい口当たりを好み、健康志向の「微醺(ほろ酔い)」とフルーティーな味わいが市場のキーワードとなっています。これらは果酒カテゴリにとって強力な追い風となり、商業化を加速させています。
しかし、この追い風に乗る一方で、中国の果酒ブランドはいくつかの課題に直面しています。第一に、醸造過程における酸味と甘味の調整、発酵の難しさ、品種体系の未整備といった技術的な問題から、品質管理が難しく、製品の品質にばらつきが生じています。この技術的障壁のため、多くの国産果酒はOEM生産に頼りがちで、製品の同質化が進んでいます。画一的な「小清新(清楚で素朴な)」や「文芸風(文学的な雰囲気)」のデザインは、消費者の審美疲労や認知の混乱を招き、ブランドの長期的な発展には不利な状況です。
第二に、国内市場の果酒分野はすでに海外ブランドにリードされており、中国ブランドは消費者の心の中に存在する「ブランドの壁」を打ち破る必要があります。例えば、フランスのシードル、ドイツのプラムワイン、日本の梅酒など、海外の果酒は早くから発展し、代表的なカテゴリを確立しています。これらのブランドが中国市場で普及したことで、「果酒といえば海外ブランド」という認識が消費者の心に深く根付いてしまっているのが現状です。白酒には茅台や五粮液、ビールには青島や雪花といった代表ブランドがあるにもかかわらず、果酒に関しては、誰もが思いつくような中国の代表的ブランドはまだ確立されていません。
したがって、この競争が激しい「品目はあっても代表的なブランドがない」果酒市場において、いち早く強力なブランドを確立し、消費者の認知を勝ち取った者が、市場をリードするチャンスを掴むことができるでしょう。
まとめ
中国の果酒市場は、「彼女経済」と若年層の消費志向に後押しされ、まさに成長の真っただ中にあります。低アルコールで健康志向、そしてSNS映えするデザインは、現代の消費者が求める価値観と強く結びついています。大手メーカーの参入により、市場はさらに活性化するでしょう。
しかし、品質管理の課題や海外ブランドとの競争、そして「代表ブランドの不在」といった課題も山積しています。今後の中国果酒市場では、いかにして消費者の心に響くブランドを確立し、製品の差別化を図るかが成功の鍵となるでしょう。このトレンドは、日本市場における低アルコール飲料や女性向け商品の開発においても、示唆に富む動きと言えるかもしれません。
元記事: kanshangjie
Photo by Ketut Subiyanto on Pexels






