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iPhoneではおなじみ「磁石でピタッ」、なぜAndroidは追いつけないのか?

2025年にもなった今、スマートフォンのワイヤレス充電を使う頻度は以前より高まっただろうか?多くの人にとって、答えは「ノー」かもしれない。ワイヤレス充電技術は15年近く前から存在するにもかかわらず、デュアルスピーカーや複数カメラほどには普及していないのが現状だ。

誰も見向きもしなかった充電規格

この状況に対し、ワイヤレス充電の標準規格を策定するWPC(Wireless Power Consortium)は、決して諦めてはいない。WPCは先日、ワイヤレス充電の共通規格「Qi2」の最新版「Qi2 v2.2.1」、通称「Qi2 25W」を発表した。

今回のアップデートの要点は以下の通りだ。

  • 充電電力の向上: 従来の15Wから25Wへと約70%向上。
  • エコシステムの拡大: iPhoneに加え、一部の主要なAndroidスマートフォンも初めてQi2エコシステムに参加。 ただし、最初に準拠するAndroid端末は磁気吸着機能をサポートしていない。
  • 磁気吸着の堅持: Qi2 25W規格では、高速で効率的なワイヤレス充電の基礎として、初代規格から提唱されている磁気吸着機能を改めて強調している。

AppleのMagSafe技術をベースにした磁気吸着機能は、Qi2規格の重要な柱の一つだ。しかし、この数年間、Qi2に対応した製品はほとんど市場に出ておらず、その存在感は無に等しい状態だった。

皮肉なことに、その傍らでは巨大な市場が活況を呈している。2020年にAppleがiPhone 12でMagSafeを発表して以来、磁石でアクセサリーを固定するこの機能は大きな話題を呼び、サードパーティメーカーも追随して多種多様なアクセサリーを発売。今ではすっかりおなじみの光景となった。

AppleはWPCのメンバーでもあり、2023年にQi2規格が策定された際には、MagSafeの技術の一部を提供した。これにより、「磁気による位置合わせ」がQi2の標準技術の一つとなった。

しかし、ここで話が食い違ってくる。Qi2規格には磁気吸着の仕様が含まれ、サードパーティ製の磁気アクセサリー市場も活況を呈しているにもかかわらず、AndroidでQi2に完全対応した製品はほとんど登場していない。現在、iPhoneのMagSafeに匹敵する機能を持つとされるのは、HMD Skylineなどごく一部の機種に限られている。

魔法の充電が抱える物理的な矛盾

共通規格が目の前にあるのに、なぜAndroidメーカーの参加は進まないのか?その背景には、主に2つの要因があると考えられる。

  1. 独自規格の壁: 中国メーカーを中心に、多くのAndroidスマートフォンメーカーは、Qi2を大幅に上回る高速な独自ワイヤレス充電規格をすでに確立している。 商業的にも製品エコシステムの観点からも、自社規格を優先するのは当然の選択だ。WPCが15WのQi2を発表した2023年には、市場はすでに独自規格の激しい競争の渦中にあった。
  2. スペースの制約: Qi2規格が要求する本体内蔵の磁石は、現在のスマートフォンのように部品が極限まで詰め込まれた内部スペースと両立が難しい。iPhoneが背面パネルを貫通して磁石を埋め込んでいるのに対し、多くのAndroidメーカーは、大容量バッテリーや高性能カメラのためにスペースを確保するのに精一杯で、厚さ0.3mmの磁石を追加する余裕がないのが実情だ。過去には、磁気充電を採用したことでバッテリー容量が犠牲になった例もある。

さらに、この問題には多くのサードパーティアクセサリーメーカーも関わってくる。AppleがMagSafeを発表してからQi2が策定されるまでの3年間で、アクセサリー市場は急速に成熟し、磁石を内蔵したケースなど、スマートフォンの外側から位置合わせの問題を解決する製品が普及した。

海外市場でも状況は芳しくない。もう一方の雄であるサムスンは、Sペン(スタイラスペン)との干渉を理由に、磁気充電の採用に消極的だった。Sペンは画面下の電磁共振層を利用しており、磁石がその機能に影響を与える可能性があったからだ。

しかし、希望の光もある。サムスンがSペンの機能を縮小し始めていることや、WPCが「Qi2 25W」を発表し、「主要なAndroidスマートフォン」が対応すると明言したことだ。 具体的な機種名はまだ発表されていないが、GoogleのPixel 10シリーズやサムスンのGalaxy S26シリーズなどが候補として噂されている。

結論として、本体サイズがますます限られ、独自規格が普及した今日の市場でQi2を推進するのは、WPCにとって依然として困難な道のりだ。しかし、世界で最も柔軟で完成された電子製品市場にいる私たちは、それほど心配する必要はないのかもしれない。

なぜなら、華強北(ファーチャンペイ)がきっと何とかしてくれるからだ。

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