中国の有名な世界遺産、峨眉山で提供されているユニークな観光ガイドサービス「陪爬(ペイパー)」が、思わぬ形で中国SNSのホットトピックとなっています。女性観光客を「お姫様抱っこ」や「おんぶ」で運ぶ動画が拡散され、「擦边(cābiān)=セクハラまがい」ではないかと多くのネットユーザーから批判が殺到。「炎上」騒ぎへと発展しました。しかし、この騒動に対し、ガイドチームのリーダーは「観光客の安全確保こそが最優先の任務」だと反論しています。一体何が問題で、ガイド側は何を訴えたいのでしょうか?その真相に迫ります。
中国・峨眉山の「陪爬」サービス、炎上の背景
中国の世界遺産として知られる風光明媚な峨眉山。ここで近年人気を集めているのが、専属ガイドが登山をサポートする「陪爬(ペイパー)」サービスです。しかし先日、このサービスが中国のSNSで大きな議論を巻き起こしました。複数の動画が拡散され、そこには「陪爬」の男性ガイドが、女性観光客を「お姫様抱っこ」したり、肩に担いだり、おんぶしたりする様子が映し出されていたのです。
これらの映像に対し、多くのネットユーザーは「身体の接触が多すぎる」「過剰なサービスではないか」と疑問を投げかけました。特に「擦边(cābiān)」という言葉が飛び交い、これは「際どい」「グレーゾーン」「セクハラまがい」といったニュアンスを含みます。この問題は瞬く間にSNSのトレンドワードとなり、サービス内容の適切性が問われる事態となりました。
リーダーが語る「グリーンガイド」の真意
この騒動を受け、9月2日に峨眉山「陪爬」サービスの総リーダーである楊氏が、中国メディア「瀟湘晨報」の取材に応じました。楊氏は、彼のチームが提供するのは「緑色陪爬(グリーンガイド)」であり、その主要な任務は「観光客の人身の安全を確保すること」だと強調しました。さらに、野生のサルが多数生息する峨眉山において、観光客にサルへの正しい対応方法を教えることも彼らの重要な仕事の一部だと言います。
楊氏によると、峨眉山の登山道は長く、道中には野生のサルやヘビといった予測不能な危険が潜んでいます。また、天候の変化も激しく、場所によって気温が大きく異なるため、十分な防寒着を準備していない観光客は体調を崩しやすいとのこと。こうした状況下で、観光客が安全かつ快適に登山できるよう、ガイドが適切なサポートを提供していると説明しました。
ネット上で広まった「擦边」疑惑については、「メディアに対しては『緑色陪爬』を提供していると説明した」と回答。また、サービスは性別や年齢に関わらず提供しており、特に子供連れの利用が多いものの、女性観光客も利用していると述べました。動画で話題となった「抱っこやおんぶ」については、「子供は体が軽いので、時にはおんぶすることもあります」と説明。さらに、女性観光客を抱きかかえるシーンに対しては、「峨眉山を何時間もかけて登るのに、ずっと抱っこし続けることができますか?」と反論し、動画は状況の一部を切り取ったもので、常に抱きかかえているわけではないことを示唆しました。
まとめ
今回の峨眉山「陪爬」サービスを巡る騒動は、中国におけるサービス提供のあり方や、SNS時代における情報発信と受け止め方の難しさを浮き彫りにしました。ガイド側は安全確保という明確な意図をもってサービスを提供しているものの、一部の行動が「セクハラまがい」と解釈され、大きな波紋を呼んだ形です。
日本の観光業界においても、インバウンド需要の高まりとともに、様々な文化背景を持つ観光客へのサービス提供が求められています。今回の事例は、サービス内容が意図せず誤解を招く可能性や、過剰なサービスと受け取られるリスクについて、改めて考えるきっかけとなるでしょう。顧客の安全と快適性を追求する一方で、倫理的な配慮や文化的なセンシビリティがいかに重要であるかを、私たちに教えてくれる出来事と言えそうです。
元記事: gamersky
Photo by Quang Nguyen Vinh on Pexels