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AIブームの影で?中国巨大企業FII、驚異の株価高騰と潜む課題

AI chip factory - AIブームの影で?中国巨大企業FII、驚異の株価高騰と潜む課題

2025年9月、中国の巨大テクノロジー企業「工業富聯(Foxconn Industrial Internet, FII)」が、その時価総額を1.2兆元(約25兆円)にまで急伸させ、A株市場で注目を集めています。わずか数ヶ月で株価が約200%も高騰した背景には、世界的なAI計算能力競争による関連機器需要の高まりがあります。しかし、この華々しい成長の裏で、一部の市場アナリストからは「過大評価」との厳しい声も上がっています。親会社である鴻海精密工業の複雑な資本関係や、NVIDIAといった高収益企業との比較から見えてくる、FIIの真の価値とは何でしょうか。

AIブームの波に乗る「下請け工場」の光と影

2025年9月12日、工業富聯(FII、SH:601138)の株価は61.9元に達し、時価総額は驚くべき1.23兆元(約25兆円)となりました。これは、2025年7月初旬から9月中旬にかけて、株価が実に195.2%も急騰した結果です。この劇的な上昇は、間違いなく「AI計算能力競争」が引き起こすサーバーやデータセンター関連機器への需要増が牽引しています。

しかし、この記事では、このAIブームに乗りながらも、FIIが抱える構造的な課題に警鐘を鳴らしています。FIIは主にAmazon、Microsoft、NVIDIAといった巨大テクノロジー企業のサーバーやストレージ機器を受託製造しています。いわば「AIインフラ建設の下請け工場」としての役割を担っているのです。

筆者は、FIIの粗利率がわずか5%程度であるのに対し、AI半導体の王者であるNVIDIAの純利益率が50%にも達することを指摘し、両者の企業価値には大きな乖離があるとしています。AI投資にまだまだ成長の余地があるとしても、単純な組み立て作業に留まるFIIが「高値を飲む」ことはできないという見方です。また、AI計算能力のインフラ建設も「周期律」から逃れることはできず、現在の拡大期がいつまで続くのか、あるいは既にピークに近づいているのかは、将来的な観測を待つ必要があると述べています。

親会社を超える子会社の時価総額?鴻海グループの複雑な構図

工業富聯の評価をさらに複雑にしているのが、その親会社である台湾の巨大EMS(電子機器受託製造サービス)企業、鴻海精密工業(Foxconn)との関係です。鴻海グループには、FIIを含め、以下の3社が上場しています。

  • 鴻海精密工業(Hon Hai Precision Industry、TW:2317):主にAppleのiPhone受託製造を担当する旗艦企業。
  • 富智康集団(FIH Mobile、HK:2038):Huawei、Xiaomi、OnePlus、Sony、Meizu、Oppoなど、Apple以外のスマートフォンブランドの受託製造を担当。
  • 工業富聯(Foxconn Industrial Internet、SH:601138):通信ネットワーク機器、クラウドサービス機器、精密工具などを主力事業とする。

もともとFIIが中国A株市場への上場を計画した際、多くのメディアやアナリストは、鴻海精密がiPhoneの組み立て事業という中核事業をFIIに注入すると予想していました。しかし、郭台銘(テリー・ゴウ)会長はA株の投資家にはその「ご馳走」を与えず、FIIにはクラウドサービス機器などの事業を割り当てました。一部の投資家は、スマートフォン受託製造が利益の薄い事業であるため、クラウドサービス機器事業が「時代の潮流に適応している」として、この郭会長の判断を肯定的に評価しています。

しかし、記事はここにも疑問を呈します。FIIのクラウドサービス機器の製造もまた受託製造であり、利益率は依然として低い水準です。さらに驚くべきは、2025年Q2の時点で、親会社である鴻海精密工業の時価総額が約7000億元であるのに対し、子会社であるFIIの時価総額は1.2兆元に達している点です。鴻海が保有するFII株の価値は1兆元に上り、これは鴻海自身の時価総額を43%も上回るという、極めて異例の状況が発生しています。

また、FIIの資産の質についても懸念が示されています。固定資産の帳簿価額が低いことや、海外資産2500億元以上が低収益であるにもかかわらず、減損損失の準備金が計上されていない点が指摘されており、これらがFIIの財務健全性に影を落とす可能性を指摘しています。

まとめ:AI時代の投資と「真の価値」を見極める目

工業富聯の株価高騰は、世界的なAIブームが中国市場にもたらした熱狂を象徴しています。AI計算能力需要の拡大は、関連インフラを提供する企業にとって追い風であることは間違いありません。しかし、その一方で、受託製造というビジネスモデルの特性、親会社との複雑な関係、そして実体経済との乖離といった課題も浮き彫りになっています。

FIIの事例は、AI関連銘柄への投資が過熱する中で、「真の価値」と「市場の期待」のバランスをいかに見極めるかという、重要な問いを私たちに投げかけています。日本の投資家やビジネスパーソンにとっても、中国市場におけるテック企業の評価や、AIブームの裏側にある構造的な問題は、今後の投資戦略や事業展開を考える上で示唆に富む事例と言えるでしょう。単なるニュース報道の表面だけでなく、その深層にあるビジネスモデルや企業間の力学を理解することが、変動の激しい現代市場を生き抜く鍵となります。

元記事: pedaily

Photo by Pachon in Motion on Pexels

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