中国の革新的なロボット企業、宇樹科技(Unitree Robotics)の創業者である王興興(Wang Xingxing)氏が、2025年高通驍龍峰会(Qualcomm Snapdragon Summit)の対談セッション「具身智能の進化思考(Embodied AIの進化を考える)」で、汎用人型ロボットの未来について深掘りしました。
王氏は、人型ロボットが研究室から実際の応用へと進むための3つの主要な段階を体系的に整理し、現在、業界が「固定された動作実行」から「リアルタイム指示応答」への転換期にあると指摘。2026年末までには、ロボットが自律的なインタラクションを実現する可能性があると予測しています。この進化を加速させる鍵となるのは、消費電力の課題克服や内部通信アーキテクチャの改善、そして産業チェーン全体の協力です。私たちの日常生活に身体化された知能(Embodied AI)が溶け込む日は、もう目前かもしれません。
人型ロボットの進化ロードマップ:自律インタラクションへの道
現在の進化段階と画期的な突破
王興興氏は、汎用人型ロボットが進化する上で、特に重要な3つの段階があると説明しました。そして現在、業界は「固定されたプログラムに基づく動作実行」から、状況に応じて瞬時に指示に反応する「リアルタイム指示応答」への大きな転換点にあります。
宇樹科技のチームは、今年上半期にすでに重要なブレークスルーを達成したと王氏は明かしています。これにより、ロボットは複雑な指示を正確に解釈し、連続した動作をスムーズに実行できるようになりました。しかし、現段階ではまだ事前に設定されたプログラムの実行に留まっており、真に自律的にタスクを完了するには、さらなる進化が必要です。
王氏は、アルゴリズムの最適化と複数のセンサーからの情報統合(センサーフュージョン)が進むことで、2025年上半期にはロボットがリアルタイム指示応答能力を獲得すると予測しています。これは、ロボットが自身の能力範囲内で、物理法則に則った実行計画を自律的に生成できるようになることを意味します。
2026-2027年に実現する「自律インタラクション」
さらに革命的な進歩は、ロボットが環境に自律的に適応する能力において現れるでしょう。王氏は、未来のシナリオとして、ユーザーが「喉が渇いた」と言うだけで、ロボットが自律的に経路を計画し、コップの位置を認識して、それを手渡すといった一連の動作を完了する場面を描写しました。
このような異なる場面でのインタラクション能力は、2026年から2027年にかけて実現する可能性が高いと王氏は予測しています。この時期には、身体化された知能(Embodied AI)が文字通り私たちの日常生活に深く溶け込むことになるでしょう。ただし、スマートフォンを分解するような精密な作業や、99.9%という極めて高いタスク成功率を達成するには、さらに長期的な技術の蓄積が必要になるとの見方も示されています。
普及を阻む技術的ボトルネックと解決策
消費電力と計算能力のジレンマ
人型ロボットの普及を妨げる技術的なボトルネックとして、王氏が特に強調したのは、端末の演算能力と消費電力の間の矛盾です。彼は、300ワット級のGPU(グラフィックス処理ユニット)を人型ロボットの本体に組み込むことは「エンジニアリングの観点から完全に不可能である」と断言しました。高い消費電力はバッテリーの劣化を早め、発熱の問題も深刻であり、これらが規模化された応用における主要な障害となっているのです。
王氏は明確な技術目標を提示しました。将来的に、端末の演算能力における消費電力は100ワット以内に抑えられ、日常動作時の消費電力は20~30ワットの範囲に維持されるべきです。この目標は、スマートフォン向けのチップ技術をロボットに応用するための理論的な根拠となります。
見過ごされがちな内部通信アーキテクチャ
もう一つの見過ごされがちな課題は、ロボット内部の通信アーキテクチャです。王氏は、ケーブルシステムを「デジタル神経」に例え、産業用ロボットの故障の60%以上がケーブルの劣化や接触不良に起因していると指摘しました。
彼は、新型の通信プロトコルとモジュール設計によって、配線の数を減らすことの重要性を強調しました。この技術的価値は、自動車業界における電子・電気アーキテクチャの革新に匹敵すると言います。この改善は、システムの信頼性を向上させるだけでなく、ロボットの小型化や軽量化を実現するための条件を整えることにも繋がります。
産業エコシステムと未来への提言
世界の身体化された知能(Embodied AI)分野における技術ロードマップの多様性に対して、王興興氏は業界がまさに「爆発前夜」にあると見ています。彼は、チップメーカー、オペレーティングシステム開発者、そしてアルゴリズム開発チームに対し、オープンな協力エコシステムを構築するよう呼びかけています。宇樹科技自身も、自社で開発した視覚モデルと訓練データセットをオープンソース化していることを明らかにしました。
王氏の視点では、安全なオペレーティングシステムから統一された通信標準、精密な駆動部品から環境感知モジュールに至るまで、産業チェーンのあらゆる段階でのブレークスルーが、身体化された知能の時代到来を加速させる鍵となります。
まとめ
宇樹科技の王興興氏が提示した人型ロボットの進化予測は、SFの世界が現実のものとなる日がいよいよ近づいていることを強く示唆しています。特に、2026年末までに自律的なインタラクションが可能になるという見通しは、日本のロボット開発コミュニティや、ロボットが社会にどのように統合されるかを考える上で、非常に大きな示唆を与えます。
消費電力や内部通信といった技術的ボトルネックの克服、そして産業チェーン全体でのオープンな協力が、この革新的な未来を実現するための不可欠な要素です。中国のテック企業が主導するAIとロボット技術の進歩は、グローバルな技術競争において、日本がどのような戦略で臨むべきかという問いを投げかけています。私たちの生活に人型ロボットが当たり前のように存在する未来へ向けて、その動向から目が離せません。
元記事: pcd
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