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「アンチャーテッド」を無料で千人導いた「虎哥」の死。ゲームコミュニティに遺された足跡

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中国のゲームコミュニティに衝撃が走っています。人気タイトル「アンチャーテッド」シリーズで、1000人以上ものプレイヤーに難関トロフィーの獲得を無料で手助けし続けた伝説のゲーマー「虎哥(フー・グォ)」こと郭暁虎(グォ・シャオフー)氏が、39歳の若さで突然この世を去りました。彼の死は、オンライン上での見返りを求めない献身と、それが築き上げたゲーマー間の深い絆を浮き彫りにしています。リアルな生活での苦悩と、ゲームの世界で多くの人々に希望を与え続けた彼の物語を、日本の読者の皆様にお伝えします。

一人のゲーマーの突然の死と、そのリアルな生活

ゲームと隣り合わせの日常、そして予期せぬ悲劇

郭暁虎氏の死は、あまりにも突然でした。妻の劉小唯(リウ・シャオウェイ)さんの記憶では、2024年8月18日の夜、彼はいつも通りリビングでゲームに没頭していました。彼のプレイしていたのは、人気アクションアドベンチャーゲーム「アンチャーテッド」シリーズ。狭いリビングの片隅に置かれたプラスチックの椅子に座り、有線ヘッドホンをつけ、時にはコーラを片手に、ゲームを楽しんだり、誰かの手助けをしたりするのが彼の日常でした。散らかった日用品や宅配便の箱に囲まれたその空間は、彼のパーソナルなゲームスペースだったのです。

その夜、妻が彼のパソコンの不具合について相談したこと以外、特別なことは何もありませんでした。夫婦はそれぞれの部屋に戻り、眠りにつきます。しかし、翌朝早く、劉さんは夫の部屋から聞こえる大きないびきに起こされ、そこで血を流して意識を失った郭暁虎氏を発見。救急車が到着した時にはすでに朝6時を過ぎていました。

診断は高血圧による突発性脳溢血。6時間に及ぶ手術は成功したものの、自発呼吸ができず、人工呼吸器に頼る状態に。医師からは、高血圧、高血糖、高脂血症、腎臓に深刻な問題があり、このまま治療を続ければ透析や気管切開が必要になる可能性があり、最終的には植物状態になるかもしれないと告げられます。手術費用や入院費など約3.3万元(日本円で約70万円相当)の医療費は、彼の用途不明のローンと家族の貯蓄を切り崩して賄われました。しかし、5日後、郭暁虎氏の父親は治療の断念を決断。彼は8月25日に火葬され、39歳という短い生涯を閉じました。

「虎哥」が築いた、千人を超えるゲーマーとの絆

無料で難関トロフィーを導いた「アンチャーテッド」の伝説

郭暁虎氏の訃報がオンライン上に広まったのは、彼が火葬されたその日でした。ゲームのトロフィー獲得を記録する中国の大手サイト「PSNINE(ピーナイン、通称P9またはトロフィーサイト)」に、彼を追悼するスレッドが立てられたのです。オンラインでの彼の名は「虎哥」「虎神」「暁虎」、IDは「gxhcafu2」。

「虎哥」は、2013年からP9の約戦区(一緒にゲームをするプレイヤーを募集する掲示板)で精力的に活動し、「アンチャーテッド」シリーズ、特に「アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝」(通称「アンチャーテッド4」)のマルチプレイモードで最も難しいとされる2つのトロフィーの獲得を、無償で手助けしてきました。その数は1000人を超え、2024年だけでも62人ものプレイヤーを導いたといいます。

彼の活動は、まるで「アンチャーテッド4」と一体化した固定の存在のようでした。P9の約戦区には、「『惨烈三星』トロフィーをまだ取っていない方はいますか?私が連れて行きます」という彼の募集メッセージが常に並び、QQ(中国のメッセージアプリ)のグループチャット「神秘海域4協力(アンチャーテッド4協力)」が連絡先として添えられていました。

「淡々と、しかし情熱的に」プレイヤーが語る虎哥の人物像

「虎哥」と交流のあった多くのプレイヤーは、彼のことを「淡々としているけれど、技術は超一流」と評します。2023年に虎哥のグループに参加した長歌(チャン・グァ)さんは、彼がいたからこそ「アンチャーテッド4」をプレイし始めたと言います。長歌さんでさえ、「虎哥は、自分が寝ていてもクリアさせてくれる最初の人だった」と、その実力に舌を巻きました。彼は虎哥レベルのプレイヤーは中国全土でも10人もいないだろうと推測しています。

「虎哥」は常に穏やかで、まるで先生のように指示を出し、どんなに騒がしい状況でも冷静さを保っていたそうです。2018年に知り合ったFrozen(フローズン)さんは、「虎哥は明るく、話好きで、何より頼りになる人だった」と振り返ります。彼らはよく一緒にプレイし、特に重要な場面では虎哥が常に指揮を執り、他のプレイヤーは彼の指示に従うだけでよかったといいます。また、初心者や指示を聞かないプレイヤーに対しても、彼は子供に教えるように根気強く接し、決して不平を言わなかったそうです。

平日は夜、週末や祝日には日中も活動していた虎哥ですが、グループチャットの雰囲気作りには非常に気を遣っていました。管理者を置かず、自分一人でグループを運営し、不適切な発言があればすぐに取り消すなど、厳格な一面も持ち合わせていました。ゲーム終了後には、感謝の言葉が飛び交いますが、虎哥はいつも静かにそれを受け止めていました。

彼の活動は10年近く続き、その間、新型コロナウイルスの影響でプレイヤーが増え、手助けが追いつかない時期もありましたが、彼の献身的な姿勢は変わりませんでした。長歌さんは、「虎哥は、単に人を助ける過程が好きで、助ける喜びを享受していただけだろう」と推測しています。彼は毎日朝7〜8時頃にはグループに「皆さん、おはようございます」と挨拶を欠かさず、2024年3月からは毎月「月報」として、その月に何人を助けたか、どんなゲームをプレイしたかなどを、少し楽しげな調子で投稿するようになりました。彼の技術は高く、仮に有料で手助けしたとしても多くの人が喜んでお金を払ったでしょうが、彼は一度も金銭を要求することはなかったのです。

「虎哥」が遺したもの:ゲームが繋ぐ見返りのない友情

郭暁虎氏、通称「虎哥」の突然の死は、彼のリアルな生活が抱えていた苦悩と、オンラインでの見返りを求めない無償の善意を鮮明に対比させました。彼の死後、プレイヤーたちは初めて、彼の家族や経済状況といった現実の側面を知ることになったのです。

しかし、彼の行動は、ゲームが単なる遊びの枠を超え、人々の人生に深く関わり、見返りを求めない友情や助け合いの精神が生まれる場であることを雄弁に物語っています。彼の死を悼む多くの声は、オンラインコミュニティが持つ温かさ、そして一人のゲーマーが築き上げた絆の深さを私たちに示してくれました。日本を含む世界のゲームコミュニティでも、同じように無名のヒーローたちが活躍していることでしょう。「虎哥」が遺した足跡は、ゲームを通じて人々が繋がり、互いを支え合うことの尊さを、これからも私たちに語りかけ続けるはずです。

元記事: chuapp

Photo by Anastasia Shuraeva on Pexels

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