一見するとシンプルな花育成ゲーム。しかし、中国市場で「女性向けゲームのダークホース」として急浮上し、驚くべき収益を上げているモバイルゲームをご存知でしょうか? その名は『私の庭の世界』。廈門鶻貝互娯(Xiamen Gubei Interactive Entertainment)が開発したこのカジュアルゲームは、国慶節前後に「ゲームで育てた花が本物の花束になって届く」というユニークなプロモーションで瞬く間に市場を開拓しました。iOS売上ランキングでTOP10、WeChatミニゲームでTOP5入りを果たし、ユーザーの多くが女性であることから「女性向けゲームの新トレンド」としても注目されています。しかし、その驚異的な収益の背後には、プレイヤーを深く引き込む巧妙な課金システムが隠されているのです。
『私の庭の世界』、見かけによらない驚異の収益性
『私の庭の世界』は、その見た目からは想像できないほどの収益を叩き出しています。ゲームの基本的なプレイ内容は非常にシンプルで、プレイヤーは花を植え、水やりをし、収穫し、注文を達成することでゲームを進めます。複雑なメインストーリーはほとんどなく、ゲーム体験に大きな影響を与えることもありません。しかし、その商業的成果は目を見張るものがあります。
データ分析プラットフォーム「点点数据(DianDian Data)」の推定によると、2025年8月のリリース以来、iOS版だけでも月間流水(売上総額)は1.8億元(日本円で約38億円)を突破。カジュアルゲームとしては異例のこの数字は、「なぜこれほど儲かるのか?」という疑問を多くの関係者に抱かせました。その謎を解明するため、私たちはこのゲームのヘビーユーザー「大力(ダーリー)」さんに話を聞きました。
ダーリーさんはゲーム開始からわずか1ヶ月余りで2,000元(約4万2千円)以上を課金。彼女の友人の中には8,000元(約16万8千円)以上を課金している人もいるそうです。ダーリーさん曰く、彼女が所属するゲーム内のギルドでは、この金額でも「まだ少ない方」だとか。こうしたヘビーユーザーの証言から見えてくるのは、『私の庭の世界』が単なる「女性向けゲームの新トレンド」ではなく、ミニゲームの根底にある巧妙なビジネスロジックで成り立っているという事実です。
中毒性の高い課金システム:巧妙な多層構造
ダーリーさんの課金体験は、このゲームの課金システムの典型的な例を示しています。『私の庭の世界』の課金システムは、複数の段階にわたってプレイヤーを深く引き込むように設計されています。
広告回避から始まった課金スパイラル
他のミニゲームと同様に、『私の庭の世界』にも多くの広告が存在します。ダーリーさんが最初に課金したのは、「広告を見たくない」という非常にシンプルな理由からでした。彼女は広告非表示機能とVIP特権を購入。VIPになることで、ワンタッチでの植え付け、水やり、収穫、さらには作業スピードアップといった便利な機能が手に入り、手動操作の煩わしさが劇的に改善されます。土地や育てる花の数が増えるにつれて、VIPの継続はダーリーさんにとって自然な選択となっていきました。
核心は「精霊花」!無保証ガチャと複雑な育成システム
しかし、VIPはあくまで「前菜」に過ぎません。ダーリーさんが本格的に「大金を投入」し始めたのは、ゲーム内の「抽選システム(ガチャ)」がきっかけでした。これはゲーム全体のビジネスモデルの核となる部分です。
毎月開催されるこの抽選システムでは、「精霊花」「ファッションアイテム」「仙品花束(実物花束と交換できるアイテム)」などが手に入りますが、これらを得るには専用の課金パックを購入して抽選券を獲得するしかありません。抽選の最重要アイテムは「精霊花」で、これを使って「花精霊」を育成し、最終的に「仙品花」と交換します。ゲーム内で「小人花」とも呼ばれるこの精霊花は、入手確率がわずか0.1%。しかも、天井(保証メカニズム)がないため、運が悪ければ際限なく課金パックを買い続けなければなりません。
さらに、精霊花を手に入れただけでは終わりではありません。「主花」と呼ばれる精霊花は、その月のイベントで指定された「副花」と組み合わせなければ花精霊を育成できません。この副花はイベント期間中に直接購入する必要があります。主花と副花を組み合わせて花精霊が誕生すると、「月光幣」を継続的に生産。プレイヤーはこの月光幣を使って「精霊商店」で「仙品花」と交換し、コレクション図鑑を完成させることができるのです。
主花と副花の組み合わせによって、より高性能な花精霊が誕生する可能性もありますが、その「成功確率」も依然として低いまま。このように、一見シンプルな花育成ゲームの裏には、広告回避から始まり、無保証ガチャ、そして複雑な組み合わせ育成まで、プレイヤーを飽きさせずに課金へと誘導する多層的な仕組みが巧妙に設計されているのです。
まとめ
『私の庭の世界』は、「女性向けゲームのダークホース」というキャッチーな見出しの裏に、徹底的に計算された収益化モデルを持つ中国発のモバイルゲームです。ユーザーを深く引き込むための「広告回避」という入り口から始まり、極めて低確率かつ天井なしの「精霊花ガチャ」、さらにそれを育成するための「副花購入」といった複雑な多層構造が、高額課金を促しています。
これは、単に「女性ユーザーに響くマーケティング」だけではなく、ミニゲームやカジュアルゲームにおける普遍的なビジネスモデルの洗練された事例と言えるでしょう。日本のモバイルゲーム市場においても、カジュアルゲームの収益化は重要な課題です。プレイヤーの心理を巧みに操り、持続的な課金を促す『私の庭の世界』の設計思想は、今後のゲーム開発やマーケティング戦略を考える上で、多くの示唆を与えてくれるかもしれません。
元記事: news












