中国の巨大国有企業「中国建材集団」が主導する新材料ファンドが、設立わずか4年で目覚ましい成果を上げています。半導体材料をはじめとする重要新材料分野に100億元(約2000億円)以上を投じ、国家戦略として掲げる「ボトルネック技術の国産化」と「サプライチェーンの自立」を強力に推進。「国家チーム」と称されるこのファンドの戦略と、その背景にある中国の狙いを深掘りします。
中国の新材料「国家チーム」が始動
2021年、中国では産業投資ブームが巻き起こる中、国家のイノベーション駆動型発展戦略と製造強国建設を推進するため、中国建材新材料基金(CNBM新材料基金)が設立されました。中国建材集団と安徽省、そして国家発展改革委員会傘下のファンドなどが共同で立ち上げたこの基金は、総規模200億元(約4000億円)、第一期150億元(約3000億円)という大規模なものです。
設立以来、CNBM新材料基金はすでに40以上のプロジェクトに累計100億元(約2000億円)を超える投資を行っています。その投資の焦点は、新材料産業における「ネック技術」(ボトルネック技術)の国産化、輸入代替、そしてサプライチェーンの安全性確保といった、国家戦略上極めて重要な分野に置かれています。無機非金属材料、有機高分子材料、複合材料、特殊金属など、幅広い新材料領域をカバーしています。
半導体材料への戦略的投資とその成果
CNBM新材料基金が特に注力したのは、集積回路(半導体)産業チェーンの材料分野でした。基金の総経理である郭輝氏は、当時を振り返り「集積回路は国家が強力に発展させる産業であり、優れた企業が多数出現し、産業チェーンも急速に構築されている。したがって、集積回路および関連する主要戦略材料のサプライチェーンは、我々の重点投資方向となるべきだ」と判断したといいます。
この戦略に基づき、半導体産業チェーンの材料分野を詳細に分析し、投資マップを作成。特に、電子産業全体の基盤であり、性能と供給能力が半導体産業の競争力に直結するシリコンウェーハを重点投資対象と位置付けました。これは、シリコンウェーハが無機非金属材料の典型であり、中国建材集団が長年培ってきた技術的蓄積と優位性があったためです。
その結果、2022年には西安奕斯偉材料科技(西安Eswin Materials Technology)への投資が実現。当時、西安奕斯偉は複数のベンチャーキャピタルやプライベートエクイティからの資金調達が競合していましたが、CNBM新材料基金が持つ中国建材集団の技術力と将来的な産業連携の可能性が決め手となり、両者は協力関係を築きました。そして先日、西安奕斯偉は上海証券取引所科創板(STAR Market)に正式に上場し、初日の時価総額は一時1600億元(約3兆2000億円)を突破。これは今年A株市場で最大級のIPOの一つとなり、CNBM新材料基金にとって初のIPO成功となりました。同基金は他にも、鑫華半導体、初源新材、東岳未来、阜陽欣奕華、先導薄膜といった多数のユニコーン企業にも投資しており、その手腕が注目されています。
日本への示唆と今後の展望
CNBM新材料基金の活動は、中国が国家を挙げて「製造強国」を目指し、特に基幹技術やサプライチェーンの国産化・自立化を加速させている明確な証左です。設立わずか4年でこれほどの成果を上げている背景には、政府系ファンドが持つ潤沢な資金力に加え、中国建材集団のような巨大国有企業が持つ産業基盤や技術力が組み合わされている点が挙げられます。
この動きは、日本の産業界にとっても重要な示唆を与えます。半導体や重要材料分野におけるサプライチェーンの再編、技術競争の激化は避けられません。中国のこのような「国家チーム」による戦略的投資は、今後も世界の新材料・先端技術市場に大きな影響を与え続けるでしょう。日本企業は、このような中国の動きを注視し、自社の技術戦略やサプライチェーン戦略を常にアップデートしていく必要があると言えるでしょう。
元記事: pedaily












