中国の上海交通大学と通信大手ファーウェイ(Huawei)が共同開発したAIスマートコンピューティングプラットフォーム「致遠一号(Zhiyuan-1)」が、中国の高等教育デジタル変革を加速する最先端事例として注目を集めています。国内大学では最大級の規模を誇るこのプラットフォームは、633PFLOPS(ペタフロップス)という驚異的な計算能力と13PB(ペタバイト)のストレージ容量を武器に、教育、研究、そして大学運営のあらゆる側面でAI活用を推進。中国全土の大学に新たなAI戦略の青写真を示しています。その驚異的なスペックと具体的な活用事例に迫ります。
中国高等教育の新たな旗艦「致遠一号」の誕生
上海交通大学が「致遠一号」スマートコンピューティングプラットフォームの構築に踏み切った背景には、AI(人工知能)関連授業の劇的な増加がありました。大学全体で500以上のコースがAI化に向けた改修を始め、従来の計算リソースでは需要を満たせない状況に直面。この課題に応えるべく、2024年12月に大学とファーウェイは共同プロジェクトを始動させました。彼らは「構築しながら利用する」という革新的なモデルを採用し、迅速な展開と実践的な活用を両立させています。
プロジェクトは順調に進み、2025年2月には国内の大学で初となるローカライズされたDeepSeek大規模言語モデルのオンライン展開を実現。同年11月にはデータセンターへの電力が全面供給され、12月にはシステム全体の導入が完了しました。現在、「致遠一号」は8種類の主要な大規模言語モデルをローカライズして展開しており、延べ3.8万人以上の教員・学生にサービスを提供。「モデル即サービス」という特徴的なエコシステムを形成しています。
このプラットフォームは、国内大学最大級のインテリジェントコンピューティングインフラとして、633PFLOPSという途方もない計算能力と、13PBという膨大なストレージ容量を誇ります。これは、学術研究の革新と次世代人材の育成を支える、まさに「心臓」となるエンジンと言えるでしょう。
教育・研究・運営を変革するAIプラットフォーム
最先端AI教育の実践
「致遠一号」は教育現場に深く浸透し、「人工知能+教育」の取り組みを強力に推進しています。具体的には、229のコースにAIアシスタントを導入し、学生の学習をサポート。さらに32のコースでは「HI+AI」(人間とAIの協調)モデルへの改革が完了しました。メディア学部では、同プラットフォームが提供するスマート技術サポートにより、学生チームが「チャレンジカップ」で全国哲学社会科学コンテストの特等賞という歴史的快挙を達成しています。
革新的な研究と効率的な大学運営
研究分野では、「致遠一号」が10以上のAI4S(AI for Science:科学のためのAI)学際プロジェクトを支援しています。既に胆嚢癌診断モデル「GBCseeker」などの成果を生み出しており、将来的にはスマートブドウ育種選抜システムや新型言語大規模モデル「BriLLM」といった先進的な研究成果が次々と発表される予定です。
大学運営においてもAIの活用は顕著です。AIによる文書承認やワンクリック経費精算などのアプリケーション導入により、業務効率が大幅に向上。特に経費精算の自動審査率は80%に達し、これまでに累計4.8万件ものプロセスを処理するなど、目覚ましい成果を上げています。
全国に波及する「交大ソリューション」のインパクト
持続可能なエコシステムと効率的な資源配分
「致遠一号」は単なる技術インフラに留まらず、中国全土の高等教育機関への「実践的な模範」としての役割を担っています。国家レベルのAI産学融合プラットフォームとして、教育、人材、イノベーションチェーンの深い融合を促進し、中国独自のAIエコシステムを探求しています。
また、インフラ、教育応用、研究支援、管理運営をカバーする「フルパスソリューション」を形成することで、他の大学がデジタル変革を進める際のコスト削減に貢献。さらに、計算能力の共有、授業連携、研究協力を通じて地域イノベーション連携体を構築し、リソースの最適化配置を促進しています。既に複数の地域の大学や研究機関と協力関係を築き、デジタルインテリジェンス革新の共同体を形成しつつあります。
プロジェクト責任者によると、「致遠一号」は従来の「サイロ型」(部門ごとの独立したシステム)構築モデルを打破し、学内のリソースを統一的に管理することで重複投資を回避。オープンで共有可能なアーキテクチャ設計により、多岐にわたる学問分野や多様なシナリオにおける高並列計算の需要に効率的に応えています。加えて、液冷技術を採用することでエネルギー消費を30%削減し、持続可能な発展への貢献も重視されています。
まとめ
上海交通大学の「致遠一号」スマートコンピューティングプラットフォームは、中国の高等教育機関におけるAI活用とデジタル変革の最前線を走っています。単なる高性能コンピューター施設ではなく、教育・研究・運営の全てをAIで高度化する総合的な「交大ソリューション」として、その影響力は中国全土に波及し始めています。ブレイン・マシン・インターフェースやリアルタイム診断モデルといった最先端の応用研究への取り組みも進められており、その機能は今後も進化し続けることでしょう。このプラットフォームが提示するAI時代の大学運営モデルは、日本の教育・研究機関にとっても、今後のデジタル戦略を考える上で多くの示唆を与えてくれるはずです。
元記事: pcd
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