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miHoYoが法律顧問と契約解除!一体何が?その裏側

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中国の大手ゲーム企業miHoYo(ミホヨ)が、長年の法律顧問を務めていた上海市汇業(フイイエ)律師事務所との提携を突如解除し、さらに同事務所を「永久ブラックリスト」に登録するという衝撃的な声明を発表しました。一体何がmiHoYoをそこまでさせたのでしょうか?

この異例の事態の背景には、ゲーム内要素が発端となった企業間の訴訟と、弁護士による「利益相反」疑惑がありました。本記事では、この事件の全容を解き明かし、中国の弁護士業界に潜む複雑な事情、そしてmiHoYoがIP保護にいかに力を入れているかについて、専門家の見解を交えながら深掘りします。

miHoYo、法律顧問との契約を突如解除!

発端は2026年2月10日、miHoYoが発表した一枚の声明でした。声明によると、miHoYoの常年法律顧問を務めていた上海市汇業律師事務所の管委会委員兼高級合伙人(シニアパートナー)である周弁護士が、miHoYoと遠景能源(ENVISION)社との間で争われている「ネットワーク侵害責任紛争」訴訟において、自身が利益相反状態にあることを知りながら、遠景能源のために訴訟証拠の収集・固定を行っていたとされています。

この事態を受け、miHoYoは汇業律師事務所との全ての協力関係を終了し、同事務所を永久に協力パートナーのブラックリストに入れることを決定しました。

ゲーム内の反派が発端となった訴訟

この利益相反の火種となったのは、2025年6月に遡ります。miHoYoが開発中のゲーム『絶区零(ゼンレスゾーンゼロ)』に、架空の悪役として「遠景公司」という企業が登場しました。ところが、現実世界には「遠景能源(ENVISION)」という同名の企業が存在します。

『深圳商報』の報道によると、遠景能源側はゲーム内の悪役の中国語名称と英語ロゴ「VISION」が自社と酷似しており、企業名誉を損なったと主張。2025年6月、miHoYoを相手取って提訴に踏み切りました。この訴訟は同年7月に一審、9月に二審が開かれ、miHoYoも12月に「商業毀損紛争」で遠景能源を反訴するなど、激しい法廷闘争へと発展しました。

しかし、miHoYoが発表した声明により、遠景能源が訴訟を取り下げ、裁判所もこれを認めたことで、この訴訟自体は終結を迎えたことが明らかになりました。

利益相反行為が明らかになった経緯と司法局の処分

miHoYoの声明から読み取れるのは、汇業律師事務所がmiHoYoの常年法律顧問であるにもかかわらず、同事務所の周弁護士が「利益相反に関わることを知りながら、プライベートで遠景能源の依頼とは契約範囲外の行為、すなわちインターン弁護士に証拠収集・固定を指示し、遠景能源に提供した」ことが、契約解除の決定打となった点です。

miHoYoはこの件に関して上海市徐匯区司法局に訴えを起こし、司法局の調査の結果、周弁護士は「弁護士が職務活動において私的に委託を受けることを禁じる」という規定に違反したと認定され、警告処分が下されました。これを受け、汇業律師事務所も翌日には声明を発表し、周弁護士の管理委員会での職務を停止したことを明らかにしています。

声明の裏側に隠された、中国の弁護士業界事情

なぜこのような事態が起こってしまったのでしょうか?ゲーム法に詳しい任俣(レン・ユー)弁護士に話を聞くと、中国の弁護士業界の複雑な構造が見えてきました。

「二重取り」ではない?中国律所の特殊な報酬体系

任弁護士によると、中国の法律事務所の多くは歩合制(提成制)を採用しています。この制度の下では、事務所は弁護士に資格を提供するものの、弁護士は顧客獲得や案件受注、費用の徴収などにおいて「絶対的な業務自主権」を持っています。つまり、弁護士は個人の裁量で業務を進める「個人事業主」に近い存在であり、事務所が弁護士を厳しく管理するケースは稀だというのです。関連規定により、弁護士は必ず事務所名義で案件を受注する必要がありますが、実態としては各弁護士が独立したチームとして活動していることが多いとされています。

今回のケースも、周弁護士とmiHoYoを担当する弁護士チームは、同じ汇業律師事務所に所属しながらも、それぞれが異なるクライアント(遠景能源とmiHoYo)にサービスを提供しており、普段から密な連携はなかった可能性が高いとのことです。任弁護士は「このような状況は業界ではよくあることです。大規模な法律事務所は、多くの大企業クライアントを抱えています」と述べています。

機能しなかった「利益相反検索システム」

通常、弁護士事務所では利益相反のリスクを避けるため、利益相反検索システムを導入しています。任弁護士の説明では、弁護士は依頼を受ける前にクライアント名をシステムに登録し、利益相反の可能性がある場合は警告が発せられ、事務所のコンプライアンス部門が厳格に評価します。原則として、書面での同意や免除がなければ、利益相反の案件は受託できません。

しかし、今回のケースではこのシステムが利益相反を防げませんでした。周弁護士が登録を怠ったのか、登録情報に不備があったのか、あるいはシステムが警告を発しなかったのか、その詳細はいまだ不明です。miHoYoの声明によれば、周弁護士はアシスタントに遠景能源の証拠収集・固定を指示しましたが、汇業律師事務所の声明では、収集された証拠は「公開情報(企業公示情報など)に限られる」とされています。とはいえ、miHoYoの視点からすれば、提携先の法律事務所が係争相手に間接的にせよ協力する行為は、信頼関係を著しく損なうものであり、看過できないのは当然でしょう。

未確認情報ではありますが、周弁護士のアシスタントが収集し遠景能源に提供した証拠には、周弁護士の「タイムスタンプ」が付いていたとも言われています。この証拠が遠景能源からmiHoYoに提示されたことで、miHoYoは自社の法律顧問が利益相反行為を行っていたという「証拠」を掴んだ可能性も指摘されています。

「利益相反」ではなく「私的な委託受理」と判断された理由

任弁護士によると、訴訟代理と常年法律顧問は異なる法的サービスであり、証拠収集は通常、別途訴訟委託代理契約を結ぶ必要があります。この点に関して、司法局は周弁護士の行為を「常年法律顧問契約のサービス範囲外」と認定しています。

「利益相反があることを知りながら、なぜ弁護士は証拠収集を手伝ったのか?」という問いに対し、任弁護士は「利益相反がなければ、顧客維持のために簡単な手助けをすることはある。費用も発生せず、事務所のシステムを通さないことも。しかし、本件は利益相反があったため、弁護士は回避すべきだった」と説明しています。

さらに注目すべきは、司法行政部門が周弁護士の行為を「利益相反」ではなく「私的な委託受理」と判断した点です。任弁護士は、大規模法律事務所における「利益相反検索」が強制的な事前手続きであるため、もし周弁護士が正規のプロセスを踏んでいれば、システムが直接業務を阻止したはずだと指摘します。そのため、このような行為は「会計処理せず、公印も押さず、報告もしない」といった私的な形で行われることが多いと見られ、中国の『弁護士法』第40条が禁じる「私的な委託受理」という客観的事実が立証しやすかったため、司法局はこの項目を適用したと分析しています。

一般的に、このような事態が発生した場合、大手法律事務所は双方に説明し、免除を得るか、それが不可能であれば中立を保ち、両社に別の弁護士を探すよう求めるのが通例です。

miHoYoの視点から見れば、いくら別チームの弁護士とはいえ、自社の法律顧問を務める事務所が、係争相手に証拠収集という形で協力することは、企業としての信頼関係を根底から揺るがす行為です。IPを生命線とするゲーム企業であるmiHoYoにとって、このような法務リスクに対する態度は非常に厳格なものとなるのは当然で、契約解除という決定はごく自然な流れと言えるでしょう。

最も不運だったのは誰か?

汇業律師事務所は翌日の声明で、周弁護士の職務停止に加え、「動的な利益相反監視体制の不足」を認め、今後コンプライアンス基準の向上に努めることを表明しました。

この一連の騒動で、実は最も「とばっちり」を受けたのは、匯業律師事務所内でmiHoYoの案件を担当していた、本件に全く関わりのない別の弁護士チームかもしれません。彼らは何ら問題のある行動はしていなかったにもかかわらず、miHoYoという大手クライアントを失うことになったのです。これが厳しい現実と言えるでしょう。

今回の事件は、中国の法律業界における特殊な事情と、企業が法務リスク管理をいかに徹底する必要があるかを示す事例となりました。特に中国で事業を展開する日本企業にとっても、現地の法律事務所との関係構築や契約内容には、より一層の注意が求められるでしょう。

元記事: chuapp

Photo by www.kaboompics.com on Pexels

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