中国のゲームメディア「触乐(Chuapp)」の編集者が、2026年年始に経験した相次ぐ体調不良の苦しみと、AIを活用した鎮痛剤選びの経験を語ります。スキーでの負傷からインフルエンザ、片頭痛まで、肉体的な苦痛が続く中で、彼はAIが処方医と同じ止痛薬を推奨したことに驚き、その一方でオキシコドン乱用問題のドラマを思い起こします。本稿は、強烈な痛みと向き合う中でたどり着いた「ゲームの癒やし効果」に焦点を当て、単なる娯楽ではないゲームが、いかに心身の不調を和らげる「電子のイブプロフェン」となり得るかを考察。AIの意外な活用法から鎮痛剤の社会問題まで、現代を生きる私たちに示唆を与える内容です。
体調不良の連鎖とAIの意外な助言
2026年、波乱の幕開け:怪我と感染症、そして片頭痛
2026年の幕開けは、触乐(Chuapp)の編集者である周煜博氏にとって、思わぬ体調不良の連続でした。月初にはスキーで転倒し、背中を負傷。北京協和病院でのCT検査の結果、外傷ではなく筋膜炎と診断されます。しかし、急患対応の混雑した病院内でマスクを着けなかったためか、今度はインフルエンザに罹患し、高熱とひどい風邪に苦しみます。月末には流感が回復したものの、追い打ちをかけるように猛烈な片頭痛に襲われ、ベッドに倒れ込む事態となりました。急性的な痛みはすぐに引いたものの、その苦しみは彼に痛みの本質を深く理解させました。
あまりの痛みに、彼はAIに症状を伝えて止痛薬の相談を試みます。すると、AIが推奨する鎮痛剤のほとんどが的確で信頼できるものでした。後の診察で医師が処方した薬も、AIが推奨したものと同系統の処方箋薬であり、しかも市販されている中では最も強力な部類のものであったといい、AIの診断精度に彼は驚きを隠せません。
鎮痛剤の光と影:オキシコドンと『Dopesick』から考える
止痛薬を服用するたびに、周煜博氏は「オキシコドン」を巡るプデュー製薬の薬物乱用問題、そして同社が最終的に破産に至った事件を思い起こしたといいます。この出来事を描いたドラマ『成瘾剂量』(原題:Dopesick、日本では『DOPESICK アメリカを蝕んだ危機』として配信)は、物語のテンポこそ少々緩慢ではあるものの、特定の個人の実例を通して、痛みと薬物乱用がいかに人の人生を破壊し得るかを深く理解させてくれる作品だと、彼は日本読者にも推薦しています。
作中ではオキシコドン中毒になった医師が登場しますが、彼自身も激痛に苛まれる中で、「もし手元に一粒のオキシコドンがあったなら、この痛みから逃れるために、きっと飲んでしまっただろう」と想像したといいます。その時の思考は「とにかく痛みを止めてほしい、まだやるべきことがあるのに、痛みに一日を台無しにされたくない」という一点に集中していたそうです。幸い、彼の痛みは偶発的なものであり、そのような強力な薬は必要ありませんでしたし、入手もできませんでした。
ゲームは「精神的な痛み止め」となり得るか?
注意力を奪い、痛みを「バックグラウンド」へ
痛みは単に身体の病巣によるものだけではなく、注意力に大きく依存する、と周煜博氏は指摘します。つまり、脳の資源が反応、判断、操作を必要とするゲームで満たされる時、痛みに割かれるスペースは減少するのです。まるでゲームが一時的に痛みをバックグラウンドで処理しているかのように感じられる、と彼は語ります。これが、体調が悪い時にSNSやショート動画を漫然と見ていてもあまり効果がないのに、ゲームをすると気分が良くなる理由かもしれない、と。
SNSなどが受動的に情報を受け入れるのに対し、ゲームは継続的な参加を必要とします。体調が悪い時、現実世界は突然困難なものに変わります。身体は言うことを聞かず、感情は不安定になり、物事はうまく進まない。まるで自分や生活のコントロールを失ったかのような感覚に陥ります。しかし、ゲームはこのような「能動性」を取り戻す力があります。起き上がるのが億劫な時でも、座ってゲームを数時間プレイすることに抵抗を感じないのは、ゲームをしている間は少なくとも完全に無力ではないと感じられるからだといいます。
「心流」体験で自己意識から解放される
ゲームはまた、彼を「心流(フロー)」の状態へと誘いやすかったといいます。心理学において、心流体験の特徴の一つは、自己意識の低下です。つまり、「自分は今、ひどく苦しんでいる」という感覚への意識が薄れることで、苦しみそのものの強度も弱まるのです。このため、体調が最悪の時には、複雑なストーリーを理解したり謎を解いたりする精神状態にないため、シンプルで直感的に楽しめる「ハクスラ」のようなゲームが最も友好的だったと振り返ります。彼は、クリアなリズム、明確な目標、直接的なフィードバックが得られるゲームを求めていたのです。
このような状況において、ゲームはまるで精神的な止痛薬のように機能し、注意力を一時的に身体の不調やネガティブな感情から逸らしてくれました。彼は幼い頃、予防接種を受ける際に、医師がアメ玉や玩具で注意を惹きつけ、その隙に注射を済ませていたことを思い出します。気づいた時には針は刺さり終わり、痛みも既に和らいでいた、という記憶は、ゲームがもたらす効果と共通するものがあるのかもしれません。
まとめ:現代社会におけるゲームの新たな価値
周煜博氏の個人的な体験談は、AIが医療アドバイスの一端を担い、ゲームが精神的なケアに寄与する現代社会の一面を浮き彫りにしています。激しい身体の痛みという極限状態において、AIの的確な助言と、ゲームが持つ注意分散効果や「心流」体験が、彼を支える大きな力となりました。これは、単なる娯楽として消費されがちなゲームが、私たちの心身のバランスを保つ「電子のイブプロフェン」として、計り知れない価値を秘めている可能性を示唆しています。
日本の読者にとっても、AIの活用範囲の広がりと、ゲームが日常にもたらす癒やしの側面を再評価する良い機会となるのではないでしょうか。現代社会のストレスや不調と向き合う上で、テクノロジーとエンターテインメントが連携し、新たなウェルビーイングの形を提示してくれるかもしれません。
元記事: chuapp
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