Metaが20億ドル(約3100億円)を超える規模で進めていたAI企業Manus(バタフライ・エフェクト社)の買収が、中国当局によって阻止されました。これは、中国の「外商投資安全審査弁法」が2021年に施行されて以来、AI分野において国家安全保障を理由に公に停止された初めての外資によるM&A案件となります。Metaは買収撤回に向けた具体的な措置を講じ始めていますが、すでに流入した技術の扱いなど、事態は複雑さを増しています。
MetaのAI企業買収が中国当局により阻止
Metaは2025年12月30日、AI技術を手掛けるManus(中国語名:蝴蝶效应、バタフライ・エフェクト社)を20億ドル(約3100億円)超で買収する計画を発表しました。しかし、この大型M&Aに待ったをかけたのが中国当局です。
2026年4月28日、中国国家発展改革委員会(NDRC)の外商投資安全審査工作メカニズム弁公室は、このManus買収案を「国家安全保障に影響を及ぼす」と判断し、投資禁止を決定。Metaに対し、買収取引の撤回を求めました。
この決定は、中国が外国企業による国内投資を審査する「外商投資安全審査弁法」が2021年に施行されて以来、AI分野における外資M&Aが公に阻止された初の事例となります。米国と中国の技術覇権争いが激化する中で、AI技術が国家安全保障上の重要課題として厳しく監視されている現実を浮き彫りにしています。
Meta、システム分離に着手も技術流出は不可避か
中国当局からの禁止決定を受け、Metaおよび関連投資機関は買収撤回に向けたプロセスを開始しました。具体的な措置として、2026年6月初旬からは、Manusの従業員がMetaの内部データシステムにアクセスすることが禁じられ、同時にMetaの従業員も内部業務でManus関連ツールを使用することができなくなりました。
Metaはさらに、内部メモを通じて、Manusプラットフォームを段階的に停止し、既存の関連プロジェクトをMeta自身のシステムに移行する方針を示しています。これは、規制当局の要求に応じた最初の実質的な措置と見られています。
しかし、Manusの核心的な価値は、そのモデルパラメータとエンジニアリング技術経験にあります。これらは過去半年間にわたりMeta内部に継続的に流入してきたとされており、単純なシステム分離や資産の返還だけでは、Metaがすでに習得した技術コンテンツを完全に抹消することは困難であると指摘されています。
Metaは、中国国家発展改革委員会に対し、自社の技術システムからManus関連技術を完全に排除したことをどのように証明するのか、具体的な説明はまだ行っていません。この点については、今後も両者間で複雑な交渉が続くものと予想されます。
Manus創業者は自社株買いを模索
一方、買収が禁止されたManus側も動きを見せています。創業者である肖弘氏、季逸超氏、張涛氏らは、外部からの約10億ドル(約1550億円)の資金調達を通じて、会社の自社株買い(バイバック)を計画していると報じられています。このバイバックでは、少なくともMetaによる当初の買収額である20億ドルと同等の企業価値を目指しているとのことです。
ただし、この資金調達交渉の進捗状況は現時点では不明です。また、Tencent(テンセント)、ZhenFund(真格基金)、HSGなどのManusへの早期投資家は、Metaによる買収発表の時点で既に相応の利益を手にしているとされています。
まとめ:AI覇権争いと国家安全保障の複雑な交錯
今回のMetaによるManus買収阻止は、AI技術がもはや単なる商業的な領域にとどまらず、国家間の安全保障や戦略的競争の最前線に位置づけられている現実を強く示しています。中国が「外商投資安全審査弁法」をAI分野に適用した初の事例であることは、今後のハイテク分野におけるM&Aや国際協力に大きな影響を与えるでしょう。
Metaにとっては、せっかく獲得しかけた技術を放棄する形となり、今後のAI戦略に影響が出る可能性があります。また、すでに技術が流入している中で、いかにして規制当局の要求を満たすのか、その対応が注目されます。
一方で、Manus創業者が目指す自社株買いが成功すれば、新たな形で独立を保ち、事業を継続する道も開かれます。しかし、これもまた大規模な資金調達が必要であり、予断を許さない状況です。
AI技術の進化が加速する中、国家間の技術規制や安全保障を巡る動きは今後も活発化すると考えられます。日本企業にとっても、中国市場におけるM&Aや技術提携を検討する上で、今回の事例は重要な教訓となるでしょう。
元記事: mydrivers












