中国の若者を中心に人気を集めるソーシャルアプリ「Soul」の運営会社Soulgateが、香港証券取引所への上場(IPO)申請を正式に提出したことが明らかになりました。テンセントが主要な外部株主として名を連ねるこの企業は、かつて見知らぬ人との匿名交流で一世を風靡しましたが、Z世代のソーシャル行動が多様化する中で、新たな挑戦に臨みます。今回のIPOは、ソーシャルメディア市場の変化とSoulの未来を占う重要な局面となるでしょう。
中国若者文化の変化とSoulの再挑戦IPO
中国の「00後」(2000年代生まれ)と呼ばれるZ世代は、今や小紅書(RED)でライフスタイルを共有し、Bilibili(ビリビリ)で共感を求め、ゲーム内でパートナーを見つけるなど、ソーシャルメディアの利用行動を大きく変化させています。かつて、こうした若者のトレンドを代表する存在の一つが、見知らぬ人との匿名交流を可能にするアプリ「Soul」でした。しかし、その潮目は静かに変わりつつあります。
2025年11月下旬、そのSoulの運営主体であるSoulgateが、香港証券取引所に目論見書を正式に提出し、IPOへの再挑戦を表明しました。かつてインターネット上でその姿を広く見かけたこの人気マッチングアプリが、再び市場の注目を集めています。
「孤独な人々に寄り添う」Soul誕生秘話と成長
Soulは、2015年に80年代生まれの女性起業家、張璐(Zhang Lu)氏によって上海で設立されました。中山大学を卒業後、国際的なコンサルティング企業で経験を積んだ彼女は、「魂のソーシャル(精神的なつながりを重視した交流)」というコンセプトを掲げ、見知らぬ人との交流という分野に切り込みました。
創業のきっかけは、ごく個人的な体験でした。自身の日常の心情を気軽に共有したいと思っても、既存のSNSでは友人関係に遠慮したり、フォロワーからの反応がなかったりすることに物足りなさを感じていたのです。そうした中で、「感情表現のための真のソーシャルプロダクトが市場に不足している」と確信し、起業を決意しました。
Soulは、電話帳の友人関係に依存せず、また顔の美醜やステータスのタグを強調することなく、ユーザーの興味関心テストとアルゴリズムによるマッチングを通じて「魂の交流」を促すことを目指しました。「天下に孤独な人はいなくなるように」というスローガンを掲げ、ユーザーは匿名で自分の内面を表現し、共感できる相手を探すことができます。
サービス開始後、Soulは特に2018年に音声マッチング機能を導入してブレイク。音声コンテンツ経済が盛り上がる中でブームに乗り、月間アクティブユーザー数(MAU)は1000万人を突破しました。その後もメタバース、デジタルコレクティブル(NFT)、AIといった新たなトレンドを積極的に取り入れてきましたが、概念先行に留まることも少なくありませんでした。
投資家の中には、テンセントがSoulの最大の外部株主として名を連ねるほか、miHoYo(『原神』の開発元)や複数の著名なVC/PEファンドも出資しています。
過去の挫折と変化する市場
実はSoulがIPOに挑戦するのは今回が初めてではありません。2021年には米国での上場を計画し、米国証券取引委員会(SEC)に目論見書を提出していました。当時の評価額は約20億ドル(約3000億円)とされていましたが、そのわずか1ヶ月後には上場計画を一時的に保留すると発表しました。
当時の上場延期の背景には、中国政府によるIT企業への規制強化やデータセキュリティに関する懸念があったと見られています。それから数年が経ち、Soulを取り巻く環境は大きく変化しました。かつては活況を呈した見知らぬ人との交流市場は、現在、深い淘汰の時期を迎えています。見知らぬ相手に簡単に課金させるような「ギフト経済」の時代は終わりを告げ、ユーザーのニーズはより多様化し、プラットフォームには真の価値提供が求められるようになっています。
まとめ
テンセントの強力な支援を受けながら、Soulが再びIPOの舞台に立つことは、中国ソーシャルメディア市場の成熟と変化を象徴しています。若者の交流スタイルが絶えず進化する中で、Soulがどのようにして新たな価値を創造し、持続的な成長を実現していくのかが注目されます。今回の香港IPOは、同社にとってはもちろん、中国テック業界全体の今後の動向を占う上でも重要な試金石となるでしょう。日本市場においても、中国のソーシャルメディアトレンドは常に新たなヒントを与えてくれるはずです。
元記事: pedaily
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