中国の大手長編動画プラットフォームiQIYI(愛奇芸)が、厳しい競争環境の中で目覚ましい決算を発表しました。2025年第3四半期の総収入は66.8億元(約1,336億円)、会員サービス収入は42.1億元(約842億円)と前四半期比3%増を達成。AI技術によるコンテンツ制作・配信の革新、積極的な海外事業展開、そしてオフライン体験事業の強化という「技術駆動+エコシステム拡張」戦略が功を奏し、株価も決算発表当日に6.34%上昇しました。同社は今、新たな成長の章を開いています。
AIがコンテンツの未来を再構築:制作から視聴体験まで
iQIYIの成功の核心は、卓越したコンテンツ力にあります。同社のドラマは5四半期連続で市場シェア首位を維持し、映画事業も15四半期連続でトップを走り続けています。バラエティ番組では「コンテンツ+派生商品」という新たな収益モデルを確立し、IPの多角的な活用を進めています。
特に注目すべきは、ショートドラマ戦略の強化です。現在2万本以上の作品をストックしており、長編ドラマの開発経験とAI技術を組み合わせることで、「一魚多食」(ワンコンテンツ・マルチユース)というIP運用モデルを模索しています。AIは、コンテンツ制作コストの削減(特に漫画アニメ分野)に大きく貢献し、コンテンツ革新の重要な推進力となっています。
技術面では、iQIYIは3年をかけて制作、配信、消費の全チェーンをカバーするAI活用システムを構築しました。GoogleやByteDanceとのAIショート動画制作コンテストの開催、さらにはアカデミー賞受賞カメラマンとの協業による「AI劇場」作品の発表も控えており、AIによるコンテンツ制作の新たな地平を切り開いています。
ユーザー体験の面でもAIは活躍。「速見」機能はAIが長編動画を縦型ショート動画に編集し、主要なコンテンツを素早く楽しめるようにします。また、AIアシスタント「桃豆」に追加された「追劇戦報」機能は、ユーザーの視聴時間を可視化し、インタラクションの面白さを高めています。
海外市場への積極展開とオフライン体験の融合
iQIYIの成長を牽引するもう一つの柱は、海外事業の著しい伸長です。国際版アプリのデイリーアクティブユーザー数および会員数は過去最高を記録し、会員収入は前年同期比40%以上増加しました。特にブラジル、スペイン語圏、メキシコ、インドネシアなどの市場では100%を超える大幅な成長を達成しています。
海外でのコンテンツ戦略は、「中国語コンテンツを基盤に、現地制作でブレイクスルーを目指し、ショートドラマで新市場を開拓する」という三本柱で展開。タイ語吹き替え版ドラマ「朝雪録」が吹き替えドラマの記録を更新し、タイで制作された現地ドラマ「ソウル・リボーン」は複数の国のトレンドランキングでトップを獲得しました。また、海外でのショートドラマ会員収入は前四半期比140%増と急成長しており、長編ドラマに次ぐ第二の主要コンテンツタイプとして確立されつつあります。英語、タイ語、韓国語、インドネシア語などでの現地制作ショートドラマも加速しており、年内にはさらに多くの作品が発表される予定です。
さらに、iQIYIはオフライン体験事業という新たな成長軸を構築しています。豊富なIPライブラリを活かし、「オンライン消費+オフライン体験」のビジネスサイクルを推進。IP派生商品事業は、これまでのライセンス供与だけでなく自社運営も強化し、収入は前年同期比100%以上増加しました。揚州、開封ではテーマパークの建設が着々と進められており、北京でのプロジェクトも正式発表されるなど、仮想と現実が融合したエコシステムを構築し、IPのライフサイクルを延長し、収益源の多様化を図っています。
まとめ:技術革新とグローバル戦略でエンタメの未来を拓く
iQIYIの最新決算は、同社が単なる動画配信プラットフォームではなく、AI技術を核としたコンテンツ制作会社であり、グローバルなエンターテイメント企業へと変貌を遂げていることを明確に示しています。AIによるコンテンツの質向上とコスト効率化、海外市場での現地化戦略、そしてIPを軸としたオフライン体験事業の展開は、中国テック企業の新たな成長モデルとして注目されます。
このような動きは、日本のコンテンツ業界やエンターテイメント市場にも大きな示唆を与えます。技術革新によるコンテンツ体験の再定義、グローバル展開における現地化の重要性、そしてオンラインとオフラインを融合したIPエコシステムの構築は、今後のエンターテイメントビジネスを考える上で避けては通れないテーマとなるでしょう。
元記事: pcd
Photo by Jakub Zerdzicki on Pexels












