中国を代表する家電大手「美的集団(Midea Group)」が、重要な人事発表を行いました。8月30日、同社は王建国(Wang Jianguo)氏を執行総裁に任命したことを公表。これは、現在のCEOである方洪波(Fang Hongbo)氏が実権を握って以来、初めて設置される「No.2」のポジションです。方洪波氏自身が近年、公の場で度々引退を示唆しており、今回の人事は同氏が60歳を迎える2年後の事業承継に向けた、本格的なカウントダウンの始まりと見られています。創業者の何享健(He Xiangjian)氏が構築したとされる、周到な後継者選定のフレームワークに則った動きとして、業界内外から注目を集めています。
美的集団、初の「執行総裁」設置で事業承継へ
中国の売上数千億元規模を誇る家電巨頭、美的集団が、まさに事業承継の途上にあります。8月30日、美的集団は「会社の戦略的計画の必要性に基づき、取締役会は王建国氏を会社の執行総裁に任命し、副総裁職は兼務しない」と発表しました。これは、方洪波CEOが実権を握って以降、美的集団が初めて設置する執行総裁職であり、文字通り同社に「No.2」が誕生したことになります。
今年に入ってから、58歳の方洪波氏はこれまでと異なり、公の場で度々引退に言及するなど、その発言が注目を集めるようになりました。今回のNo.2の出現は、彼が公に事業承継のカウントダウンに入ったことを意味します。その時期は、彼が60歳になる2年後になる可能性が高いと見られています。
創業者の何享健氏は、方洪波氏を10年間かけて観察し、後継者として指名したと言われています。王建国氏が2年後にトップを継承する場合、彼もまた方洪波氏から10年間観察されてきた計算になります。また、方洪波氏の承継時と同様に、現在の美的集団の主要部門の責任者は、45歳前後の若手幹部が多数を占めています。
中国で最も成功したプロ経営者の一人として、方洪波氏は業績面で何享健氏の信頼を裏切りませんでした。そして、事業承継においても、何享健氏が長年かけて築いたフレームワークを忠実に守っていると言えるでしょう。美的集団の事業承継には、これまで大きなサプライズはなかったと言えます。
後継者としての王建国氏、その経歴と実力
今年に入り、方洪波氏はそれまでの控えめな姿勢を一変させ、公の場で引退のシグナルを頻繁に発信するようになりました。5月8日の美的集団アナリスト会議では、後継者問題について「年を取ると認識が退化し、徐々に人に嫌われるようになる。しかし、その時には自分が嫌われていることに気づかず、皆が自分を好きだと思い込んでいる。私は決してそんな日まで引きずらない」と語っています。
さらに彼は「我々にはいつでも承継できる人材が6、7人いるが、今は言えない」とも明かしていました。これらの発言から、方洪波氏が早くから引退の準備を進めていたことが伺えます。5月19日には、中国メディア「晩点LatePost」が方洪波氏への独占インタビュー記事を掲載。これは、方洪波氏が美的集団を率いてきてからの全面的な整理と考察であり、ある種の“お別れのスピーチ”とも見なされています。
インタビュー記事のタイトルに使われた方洪波氏自身の言葉「私は単なる通りすがりで、誰にも覚えてもらう必要はない」は、13年前の事業承継式典で彼が「私は美的発展の歴史における単なる通りすがりだ」と語った言葉と重なります。
こうした方洪波氏の姿勢に続き、執行総裁の任命が行われたことで、No.2に就任した王建国氏が、方洪波氏の後継者候補の筆頭と見なされています。
現在48歳の王建国氏は、1999年に美的集団に入社しました。サプライチェーン管理部門の研修生からキャリアをスタートし、家庭用エアコン事業部、行政・人事部門、冷蔵庫事業部、国際事業ライン、スマートホーム事業群など、会社のほぼすべての核心事業部門で経験を積んできました。例えば、エアコンのサプライチェーン部門では、在庫日数を90日から15日に短縮する実績を上げ、美的国際事業総裁に就任後は、海外売上をほぼ倍増させました。
26年間の経験を持つ王建国氏は、美的集団内部で真に成長してきた中堅幹部であり、豊富な管理経験とグローバルな視点を兼ね備えています。まさに方洪波氏が語っていた「今日の美的が後継者を探すなら、それは必ず社内育成だ」という言葉を体現する人物と言えるでしょう。
まとめ:中国家電の巨頭が描く未来図
美的集団の一連の動きは、単なる人事異動に留まらず、計画的かつ周到に進められている事業承継のプロセスを示しています。創業者の何享健氏が確立し、方洪波CEOが継承してきたリーダーシップのバトンが、次の世代へとスムーズに受け継がれる準備が着々と進んでいると言えるでしょう。
このような安定した事業承継の枠組みは、美的集団が今後も持続的な成長を続けるための強固な基盤となります。グローバル市場で存在感を増す中国企業にとって、リーダーシップの移行は企業の将来を左右する重要な課題です。美的集団の今回の動きは、中国の巨大企業がいかに長期的な視点で企業運営を捉えているかを示す好例と言えるでしょう。今後、王建国氏がどのような手腕を発揮し、美的集団をさらなる高みへと導くのか、その動向から目が離せません。
元記事: pedaily
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