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英コスメ「Revolution Beauty」の危機:50億円から一転、中国サプライチェーンの光と影

Chinese factory Shipping containers - 英コスメ「Revolution Beauty」の危機:50億円から一転、中国サプライチェーンの光と影

かつて5億ポンド(約975億円、約48.66億人民元)の評価額を誇り、ロンドン市場最大のIPOの一つとまで言われた英国の人気コスメブランド「Revolution Beauty」が、現在、大きな岐路に立たされています。同社は売却プロセスを開始したものの、複数の外資系メディアの報道によると、唯一の買収提案を「企業価値を過小評価している」として拒否。既存株主からの資金調達を模索するという、異例の事態に陥っています。一体なぜ、この高評価を得た企業が売却危機に瀕し、独立した経営を模索しているのでしょうか?そして、そこには意外な中国サプライチェーンとの深いつながりがありました。

かつての評価額50億円超!人気コスメブランドの転落劇

上場時の栄光と突然の株取引停止

Revolution Beautyは2014年に創業された英国の大衆向け美容・パーソナルケア企業で、その高いコストパフォーマンスのメイクアップ製品で知られています。口紅、チーク、アイシャドウなど幅広い製品ラインナップを展開し、価格帯は2ポンドから28ポンド(約390円~5,460円)と手頃な設定です。創業以来、急速な成長を遂げ、2021年にはロンドン証券取引所のジュニア市場で最大規模の新規株式公開(IPO)を成功させ、一時は5億ポンド(約975億円、約48.66億人民元)に迫る評価額を記録しました。

しかし、この輝かしい上場をピークに、同社は瞬く間に困難に直面します。2021年以降、財務データの更新が停止し、2022年9月には監査法人が財務諸表への署名を拒否したことで、株取引が停止される事態に陥りました。これは「十分かつ正確な監査証拠が提供できない能力」や「特定の商業契約の有効性に対する疑義」が原因とされています。株取引の停止は2023年6月末まで続き、その間にグローバル億万長者のマイケル・アシュリー氏率いる英国ファッション小売大手Frasers Groupも買収を検討するものの、最終的にはプロセスから撤退。結果として、唯一買収提案を提出したプライベートエクイティ企業Trueの提案も、「企業価値を過小評価している」として拒否されることになったのです。

業績低迷と中国サプライチェーンの意外な関係

赤字転落と製品ラインナップの大幅削減

Revolution Beautyの業績は、上場後の2022年度、2023年度にはそれぞれ4,590万ポンド(約89.5億円、約4.47億人民元)、3,390万ポンド(約66億円、約3.3億人民元)の税前損失を計上するなど、不安定な推移を見せていました。2024年度には1,140万ポンド(約22億円、約1.11億人民元)の税前利益を計上し、ようやく黒字に転換したものの、2025年度(2025年2月28日まで)の純売上高は約1億4,160万ポンド(約276億円、約13.78億人民元)と、前年から26%も減少する見込みです。この大幅な売上減の背景には、6,000以上のSKU(商品管理単位)の生産停止がありました。業績の不安定さが、今回の売却計画の引き金となったことは想像に難くありません。

中国市場からの撤退と「メイド・イン・チャイナ」の重要性

興味深いのは、Revolution Beautyが2019年に越境ECを通じて中国市場に進出したものの、わずか4年後の2023年3月には公式旗艦店を閉鎖し、中国市場から撤退している点です。現在、中国の主要オンラインプラットフォームでは同社の製品を公式に購入する手段はありません。しかし、その一方で、同社のサプライチェーンは深く中国と結びついています。外資系メディアの報道によると、Revolution Beautyが米国で販売する製品の約60%が中国で製造されており、これがグループ全体の売上の23%を占めているとのことです。このため、米中間の関税問題が発生した際には、一時的に米国への出荷を停止せざるを得ない事態も経験しました。

なぜ中国サプライチェーンが国際ブランドに不可欠なのか?

Revolution Beautyの事例は、中国市場から撤退してもなお、国際ブランドが中国のサプライチェーンに深く依存している現実を浮き彫りにしています。これは同社に限った話ではありません。例えば、かつて米国でメイベリンを抜きトップに立ったe.l.f. Beautyも、中国に研究開発センター、生産拠点、運営センターを置いていました。元e.l.f. Beauty中国区総経理は、「大衆向け消費路線を歩む化粧品企業として、コストと速度に対する要求は非常に高い。中国およびアジア地域に完全なサプライチェーンを持つことが不可欠であり、その迅速な対応と物流の質は、米国本土のサプライヤーよりも優れている」と述べています。

また、コスマックス、コリアンマ、インターコスメティックスといった国際的に著名な化粧品OEM/ODM企業も、中国に大規模な生産拠点を設立し、現地の産業チェーンに深く組み込まれています。特にインターコスメティックスは、本国イタリアに次いで中国に4つの生産工場を構えています。中国の化粧品生産企業は2024年末までに5,935社に増加し、産業クラスター化も顕著です。中国は原料調達から生産製造、最終販売に至るまで、美粧産業の完全なエコシステムを構築しており、この全チェーンにおける協働体制が、国内ブランドの台頭を支えるだけでなく、「グローバル市場、中国智造(中国の知恵による製造)」という新たな産業構造を生み出しているのです。

今後の展望:Revolution Beautyの再起と中国サプライチェーンの未来

Revolution Beautyは、唯一の買収提案を拒否し、自社の価値を高く評価する姿勢を示していますが、その一方で、業績の継続的な変動と資金調達構造の見直し圧力は、同社の独立した成長が大きな課題に直面していることを示唆しています。株主からの資金調達によって独立運営を維持しようとする中で、いかにして業績の低迷を真に転換させ、市場の信頼を再構築していくか。そして、中国サプライチェーンへの依存とグローバル市場における戦略的配置のバランスをどう取るか、が問われています。

今回のRevolution Beautyの事例は、日本企業を含むグローバルブランドが、単なるコスト削減だけでなく、効率性、速度、品質といった多角的なメリットから中国のサプライチェーンを戦略的に活用している現実を改めて浮き彫りにしました。中国の製造業が高度化し、知恵と技術を伴う「中国智造」へと進化する中で、世界のサプライチェーンにおける中国の役割は今後も一層重要性を増していくでしょう。

元記事: 36氪_让一部分人先看到未来

Photo by Tiger Lily on Pexels

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