テクノロジーの新たな波が訪れるたびに、多くの人々が新たな金脈を求めて殺到します。しかし、最も先に富を築くのは、金を探す人々に「シャベル」を提供する人々だと言われています。AI時代の現代において、まさにその「シャベル売り」として驚異的な成長を遂げているのが、中国の潤沢科技(Runze Technology)とその創業者である周超男(Zhou Chaonan)氏です。創業当初は10年近くも赤字に苦しみながらも、AIブームの波を捉え、今やByteDance(TikTokの親会社)を主要顧客に据える中国有数のコンピューティングインフラ企業へと変貌を遂げました。直近の時価総額は870億元(約1.8兆円)に達し、周超男氏は河北省の女性トップ富豪に輝いています。その逆転劇の背景に迫ります。
AI時代の金脈を掘り当てる「シャベル売り」
潤沢科技の物語は、まさに「シャベル売り」の典型と言えるでしょう。2009年、周超男氏は中国河北省廊坊市に潤沢科技を設立し、コンピューティングインフラの構築に照準を合わせました。しかし、創業から最初の10年間は苦難の連続でした。市場の黎明期にあって事業は思うように伸びず、潤沢科技は長きにわたり赤字の泥沼で苦闘していたのです。
潤沢科技の軌跡:苦難の10年とAIの夜明け
潮目が変わったのは、2018年のことでした。この年、OpenAIがGPT-1を発表し、その後の大規模言語モデル(LLM)ブームの礎を築きました。MicrosoftやGoogleといったテック大手も次々とAI分野での進捗を公表し、中国国内企業もAI開発を加速させ始めます。これにより、コンピューティング能力とデータストレージの需要が爆発的に増加しました。
時を同じくして、中国では短編動画プラットフォーム「抖音(Douyin、国際版TikTok)」が急速に台頭し、そのデータセンター需要は青天井に拡大。潤沢科技は、偶然にもByteDanceを最大の顧客として獲得する幸運に恵まれました。公開情報によると、2018年から2021年10月までの期間、潤沢科技の最大顧客であるByteDanceが占める売上比率は50%から60%超に達していました。
ByteDanceからの大規模な受注を背景に、潤沢科技はついに光明を見出します。2019年には1.27億元(約26億円)の初の黒字化を達成しました。ByteDanceの他にも、河北省の元トップ富豪である王玉鎖氏が支配する新智雲データサービス有限公司や、Huawei、Kuaishou(快手)といった大手企業も同社の顧客リストに名を連ねています。
AIコンピューティング市場の巨人へ
AIの巨大な可能性をいち早く嗅ぎ取った周超男氏は、大規模な投資を決断します。彼女は会社を従来のIDC(インターネットデータセンター)からAIDC(スマートコンピューティングセンター)へと転換させ、全国の主要地域にAIDCスマートコンピューティング産業パークを建設。京津冀(北京・天津・河北)、長三角(上海周辺)、大湾区(広東省・香港・マカオ)、成渝経済圏など、中国の主要経済圏に6つの大規模AIDC施設を築き、全国規模の「一体型コンピューティングセンターシステム」の構築をほぼ完了させました。
そして2022年9月、潤沢科技は「普麗盛(Puluisheng)」への裏口上場(中国で一般的な、既存の上場企業を買収して間接的に上場する手法)を果たしました。当時の市場評価額は約140億元(約2,900億円)。この買収により、潤沢科技は中国の創業企業向け市場である創業板(ChiNext)に上場し、「普麗盛」は「潤沢科技」に社名変更しました。
AIブームがもたらした驚異的な成長と富
潤沢科技の上場後間もなく、世界を巻き込むAI大規模モデルの波が到来しました。このAIブームは、前例のないデータ処理需要を生み出し、世界中でコンピューティング能力の争奪戦が勃発。結果として、潤沢科技が手掛けるスマートコンピューティングセンターの受注は爆発的に増加しました。
世界的なコンピューティング能力争奪戦と潤沢科技の躍進
潤沢科技は再び大きな利益を生み出します。財務報告によると、2023年の売上高は前年比60.27%増の43.51億元(約900億円)に急増し、親会社株主に帰属する純利益は17.62億元(約360億円)を記録しました。2024年に入ってからも好調は続いており、上半期も成長が見込まれています。最新の時価総額は870億元(約1.8兆円)に達し、これは2022年の上場時の評価額から500%以上も上昇したことになります。
河北省女性トップ富豪、周超男氏の誕生
この驚異的な企業成長は、周超男氏個人の資産も押し上げました。胡潤研究院が発表した「2025年グローバル富豪リスト」によると、潤沢科技の成功を背景に、周超男氏の一家は世界で600位にランクイン。彼女は、今や河北省で最も裕福な女性トップ富豪としてその名を轟かせています。
まとめ
潤沢科技の事例は、テクノロジーの進化がもたらすビジネスチャンスの大きさと、それを掴むための先見性、そして困難な状況下での決断力の重要性を示しています。創業から苦難を経験しながらも、AIという次なる波を的確に捉え、その基盤となるコンピューティングインフラに特化することで、わずか数年で目覚ましい成長を遂げました。
今後もAI技術の発展は加速し、それに伴いコンピューティング能力の需要は増大し続けるでしょう。潤沢科技のような「シャベル売り」企業が提供するインフラは、AI革命を支える重要な柱となります。日本企業にとっても、AIの進化を支えるインフラ分野への投資や、中国テック企業の動向を注視することは、今後のビジネス戦略を練る上で非常に重要な示唆を与えると言えるでしょう。
元記事: pedaily
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