中国北部の古都、西安が、記録的な長雨に見舞われ、その美しい景観が異変を呈しています。公園のベンチにはキノコが顔を出し、威厳ある古城壁はしっとりと苔むす緑に覆われる事態に。9月上旬からの38日間連続降雨は、過去半世紀で二番目の規模を記録し、陝西省の降水量は平年の1.6倍にも達しました。この異常気象は、西安のみならず、山西省の脆弱な古建築にも深刻な影響を与え、文化財保護の新たな課題を浮き彫りにしています。この記事では、中国の歴史的遺産が直面する危機と、その保護に向けた取り組みについて深掘りします。
1. 異常気象が変える中国古都の景観
西安の美しい秋は、本来は澄み切った空と爽やかな気候が特徴ですが、今年は一変しました。公園のベンチには小さなキノコが顔を出し、雄大な古城壁は湿気でしっとりと緑のコケに覆われています。レンガの隙間からは、小さな花が咲く光景も。
今年9月上旬以来、古都西安はまるで「水の月額プラン」を強制されたかのように、38日間連続で雨が降り続きました。陝西省気象局の統計によると、全省の平均降水量は平年の同時期に比べて1.6倍となり、1961年の観測記録開始以来で2番目に多い量です。これは過去半世紀余りで2番目に強い連続降雨を意味します。
一見すると小雨でも、連日降り続くことで甚大な影響を及ぼします。陝西省に隣接する山西省もこの湿潤な状況を免れませんでした。晋城や運城など複数の場所にある国家級文化財保護単位は、国慶節の連休明けを待たずに閉鎖され、緊急の修繕・保全作業に入りました。人々は「湿気で気分が悪くなる」と感じる一方で、文化財や古建築は「全身が不調」とでも言うべき状況に置かれているのです。
2. 歴史を守る知恵と現代技術:西安城壁の例
観光客の皆さんが最近西安を訪れたなら、城壁沿いに「水柱」が流れ落ちる奇妙な光景を目にしたかもしれません。遠くから見ると秦嶺山脈の滝のようですが、近づけば城壁が排水していることが分かります。このような光景を目撃した観光客は、その珍しさからスマートフォンで記録する一方で、「この古いレンガと土でできた城壁は、果たして持ちこたえられるのか?」と心配を募らせます。
しかし、ご安心ください。この古城壁には数百年前から「排水システム」が備わっています。城壁の頂上は完全に平らではなく、両側に向かってわずかに傾斜しており、雨水は自然と流れ落ちるように設計されています。さらに、城壁基部の排水溝を通じて、水は一気に排出されます。これにより、水が溜まるのを防ぎ、城壁本体への浸透を防ぐことができます。これは、古代中国の建築技術の知恵の結晶と言えるでしょう。
古代の職人の技術に加え、現代のテクノロジーも城壁の保護に貢献しています。城壁には3,000以上の24時間稼働する監視ポイントとセンサーデバイスが設置されており、天気予報、降水量、城壁周辺の河川水位といったデータがプラットフォームに集約されています。どこかに危険な兆候があれば、すぐに担当者が駆けつけ、排水作業を行ったり、防水シートを敷いたりする緊急対応が可能です。
3. 脆弱な文化財への脅威:「小土豆」が示す警鐘
レンガや石材でできた古建築は、このような連続した降雨にも比較的耐えられますが、柔らかい泥でできた文化財にとっては、はるかに敏感で深刻な問題となります。山西省運城市新絳県にある三官廟には、SNSで「小土豆(シャオトゥードウ、小さなジャガイモという意味)」の愛称で親しまれる人気の神像があります。国慶節期間中、雨に打たれるその姿は、多くの文化財愛好家の心を痛めました。
この「小土豆」は、元代に作られた彩色泥塑(泥でできた彫像)で、真武元帥の人間界の代理人とされています。約700年間の湿気による腐食で、その美しい彩色が剥がれ落ち、黄土色の本体が露わになっています。顔の部分には黒い「豆」のような目だけが残り、泥まみれのジャガイモのように見えることから、その愛称がつきました。
▲「小土豆」の損傷前後の比較。(図/小紅書截図)
今年の国慶節期間中、新絳県では雨が降り続き、瓦の隙間から雨水が漏れて「小土豆」の顔を直撃。結果として、「小土豆」の顔の半分以上が剥がれ落ち、可愛らしい「豆のような目」も薄くなってしまいました。本殿にはこの神像のレプリカも展示されていましたが、やはりオリジナルの「小土豆」のかわいい姿が見られなくなったことに、多くの愛好家が遺憾の意を示しました。「古跡巡りは早めに」というお馴染みのスローガンが、ソーシャルメディアで改めて叫ばれています。
小面新聞の報道によると、三官廟の職員は10月6日にはすでに、プラスチックシートで一時的な天幕を張り、「小土豆」を雨から守る応急処置を行いました。新絳県文化財局も、さらなる保護対策を検討しているとのことです。
まとめ:気候変動と文化財保護の未来
中国の古都や文化財が直面するこの長雨による危機は、気候変動が世界の歴史的遺産にもたらす深刻な影響を浮き彫りにしています。乾燥地帯に位置する古建築が、想定外の湿潤な気候に見舞われることは、従来の保護対策では対応しきれない新たな課題を生み出しています。
この事例は、日本の文化財保護においても重要な示唆を与えます。地震や台風などの自然災害に加え、予測困難な異常気象への対応は、今後ますます重要になるでしょう。特に、木造建築が多い日本では、湿気によるカビや腐食、土壌の軟化による地盤沈下など、異なる形での脅威が考えられます。
デジタル技術を活用した監視システムや、古代の知恵に学ぶ持続可能な保全方法の再評価は、国境を越えて共有すべき知見です。私たちは、これらの貴重な人類の遺産を未来に繋ぐため、地球規模での環境変化に適応し、より柔軟かつ強靭な保護戦略を構築していく必要があります。そして、訪れる際には「古跡巡りは早めに」という言葉が示すように、今ある姿を大切に見守る意識が求められるでしょう。
元記事: pedaily












