中国政府が、510億元（約1兆1000億円）もの巨額を投じる新たな「中央企業戦略性新興産業発展ファンド」（略称「中央企業戦新ファンド」）を北京に設立しました。これは、国務院国有資産監督管理委員会（国資委）が主導し、中国国新（China Reform Holdings Corporation）が管理を担う国家主導の巨大ファンドです。人工知能（AI）、ハイエンド装備、量子技術といった戦略性新興産業、さらには未来エネルギー、未来情報、未来製造といった「未来産業」の重点分野への大規模投資を通じて、中国の産業構造の高度化と技術的自立を目指す、その狙いを詳しく見ていきましょう。
中国、国家主導で「巨大ファンド」を発足
去る10月29日、北京で「中央企業戦略性新興産業発展ファンド」の発足式が盛大に執り行われました。このファンドは、中国の政府系資産を管理する国務院国有資産監督管理委員会（国資委）が主体となり、傘下の中央企業（国有大手企業）の戦略性新興産業への参入と発展を加速させるために設立されました。第一期のファンド規模は驚異の510億元（約1兆1000億円）に上り、これは中国が次世代技術分野での主導権を確立しようとする強い意志の表れと言えるでしょう。
ファンドの投資期間は5年間、その後の管理・回収期間は8年間と定められており、投資期間は最長2年延長が可能で、合計で最長15年間という長期的な運用を見込んでいます。これは短期的な利益追求ではなく、国家戦略に沿った長期的な視点での産業育成を目指していることを示唆しています。
中国を代表する国有企業が結集！その出資構成と狙い
この巨大ファンドには、中国を代表する数々の中央企業が出資者として名を連ねています。中でも、中国国新が約150億元（約3200億円）を出資し、29.41%の筆頭株主となります。その他、北京金融街資本運営集団（19.61%）、中移資本控股有限責任公司（中国移動資本、11.76%）、中国石化集団資本有限公司（9.80%）などが主要出資者です。さらに、中国移動、中国石化、中国海洋石油、中国石油天然気、中国電信、中国聯通、中国電子科技、国家電投、中国宝武、招商局集団、華潤集団、中煤集団、中国物流、北京市西城区といった、各業界をリードする国有企業が名を連ねており、まさに「国家総がかり」での取り組みと言えるでしょう。
投資の方向性としては、人工知能（AI）、ハイエンド装備、量子技術といった戦略性新興産業が重点的に支援されます。また、未来エネルギー、未来情報、未来製造といった「未来産業」の重要分野もターゲットとされており、これらの分野における中央企業の産業チェーンの弱点補強、フロンティア技術への布陣、革新の推進が期待されています。
「新質生産力」を支える中国の次世代戦略
国務院国資委の李鎮（リ・チェン）副主任は、このファンド設立が中央企業の戦略性新興産業発展を支援する「重要な一手」であると強調しました。彼は、「新質生産力（新しい質の生産力）」の賦活を主軸とし、資本と産業、そしてイノベーションの連鎖をより良く機能させることで、国有経済の配置最適化と構造調整を支援するとの考えを示しました。
ファンドの管理を担う中国国新の徐思偉（シュー・スーウェイ）董事長は、このファンドが「新しい位置付け、新しいメカニズム、新しいモデル、新しいチーム」の方針で運営されると説明しました。そして、「産業資本の増幅器」「産業エコシステムのコネクター」「産業イノベーションの探査機」「産業発展の加速器」となることを目指し、国家の重点分野におけるハイレベルな自立自強を促進する役割を担うと表明しました。
まとめ
この「中央企業戦新ファンド」の設立は、中国がAIや量子技術などの最先端分野で世界のリーダーシップを確立し、欧米諸国の技術的優位性に挑戦しようとする明確な意志を示しています。国家主導で巨額の資金を投入し、中央企業を巻き込みながら、産業チェーンの強化と技術革新を推進する戦略は、今後、世界の技術競争の構図に大きな影響を与える可能性があります。日本企業にとっても、中国の巨大市場における新たな機会や、技術競争の激化といった側面から、その動向を注視する必要があるでしょう。
元記事: pedaily
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