中国のAI創薬スタートアップ「智源科技(Zhiyuan Technology)」が、このたび1億元規模のA1ラウンド資金調達を完了したと発表しました。今回のラウンドは、中国科学院傘下の主要な投資機関である国科投資(GuoKe Investment)がリードインベスターを務め、澤源基金(Zeyuan Fund)や翡智医薬(Feizhi Medicine)も参加しています。智源科技は「AI4S+疾病」企業と自らを位置づけ、AIを活用した「計算医学」プラットフォームを通じて、革新的な新薬開発、特に新メカニズムや新ターゲットの発見、そして臨床試験の効率化を目指しています。
AIが拓く創薬の新たな地平
智源科技は、長年の業界経験を積んだ創業者兼CEOの張春明氏のリーダーシップのもと、「疾患の深い理解」こそが新薬開発における最大の課題であると考えています。従来の分子設計技術では「特許可能な分子」を作り出すことはもはや困難ではなくなりましたが、本当に画期的な医薬品を生み出すには、疾患そのもののメカニズムをより深く解明する必要があります。
「計算医学」プラットフォームの革新性
同社が構築した「計算医学」プラットフォームは、「疾患を理解する」ためのインテリジェントエージェント(Agents)群を特徴としています。これにより、以下の3つの重要な洞察を創薬研究にもたらします。
- 全く新しいターゲットの発見: 新たな研究開発方向性を開拓します。
- 既知ターゲットの新メカニズム発見: 同クラスのパイプライン医薬品に対し、差別化された適応症を見つけ出します。
- 医薬品の再ポジショニング: 既存の市場薬に新たな適応症を見出し、その価値を再活性化することで、患者さんに新たな恩恵をもたらします。
「仮想臨床試験」で開発期間を短縮
さらに、智源科技の「計算医学」プラットフォームは、「仮想臨床試験」能力も備えています。これは、俗に言う「電子人間が電子薬を服用する」という概念を具現化したもので、単なる物理的なシミュレーションではありません。個々の患者の組織学的データを、人体の生体信号経路ネットワークにマッピングすることで、その患者の生命機能特性と疾患特性を反映した高次元の数学モデル、すなわち「仮想患者」を構築します。
この仮想世界で、患者のデジタルツインが薬物の影響を受けた後の結果をシミュレートすることが可能です。智源科技によると、この仮想臨床試験の手法を用いることで、医薬品のパイプライン検証段階で、数万種類の適応症サブタイプにおける薬物効果を評価できます。このAIベースの治療効果予測は、既に実際のプロジェクトでその有効性が実証されているとのことです。
まとめ:日本の創薬業界への示唆
今回の智源科技の大型資金調達は、中国におけるAI創薬分野への期待の高さを示すものです。特に、疾患の深い理解に基づいた新ターゲット発見や、仮想臨床試験による開発プロセスの効率化は、従来の創薬に要する莫大な時間とコストを劇的に削減する可能性を秘めています。これは、日本を含め、世界中の製薬企業や研究機関が直面する課題に対する強力な解決策となり得るでしょう。
AIの進化が、医薬品開発の未来をどのように変えていくのか、智源科技の今後の動向に注目が集まります。日本企業も、このような最先端のAI技術を積極的に取り入れ、革新的な医薬品をいち早く患者さんに届けるための戦略を練る必要があるでしょう。
元記事: pedaily
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