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CDPR開発陣が語る真実:完璧な物語は不誠実?ゲームデザインの深層

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世界中のゲーマーを魅了するポーランドのゲームスタジオ、CD Projekt Red(以下、CDPR)。『ウィッチャー』シリーズや『サイバーパンク2077』で知られる彼らのクリエイター3名が、2025年9月に中国で開催された銀河科幻大会で深層インタビューに応じました。

今回インタビューに答えたのは、今後の作品『Orion』で副ゲーム総監を務めるPaweł Sasko氏、同じくクリエイティブ総監のIgor Sarzynski氏、そして『サイバーパンク2077』の派生小説を多数執筆しているRafał Kosik氏の3名です。彼らは作品がなぜ感情に訴えかけるのか、『サイバーパンク2077』の困難な船出をどう乗り越えたのか、そして「完璧な物語は本質的に不誠実である」という彼らのゲームデザイン哲学の真髄を明かしてくれました。

重慶の“サイバーパンク”とコミュニティとの共創

長時間のフライトを経て中国に降り立った開発陣は、まず重慶の街のユニークさに心を奪われたと語ります。Paweł Sasko氏は「重慶は本当に最高でした。近代的な高層ビルと昔ながらの木造建築が混在し、街全体が巨大な地下要塞のよう。特に防空壕を活用した火鍋店は、インスピレーションの源です」と興奮気味に語り、「重慶こそ中国で最も“サイバーパンク”な都市でしょう」と称賛しました。一方、成都は対照的に穏やかで、美しい湖が散歩に最適だとIgor Sarzynski氏は述べました。

Modコミュニティとの連携がゲームを活性化する

CDPRは以前からコミュニティとの緊密な連携を重視しており、Mod開発者との協業にも積極的です。Paweł氏は「ゲームを長く活性化させる上で、プレイヤーによる創作活動(Mod)は非常に重要です。『スカイリム』や『フォールアウト』のように、Modがゲーム寿命を延ばす典型例です」と強調しました。現在、CDPRはMod開発会社を雇用し、REDkitと呼ばれるMod作成ツールキットを提供しており、『ウィッチャー3』や『サイバーパンク2077』でもプレイヤーがModをシームレスに導入できる仕組みを構築しているといいます。

Igor氏は、Modが単なる商業的価値だけでなく、芸術的価値も持つと指摘。「プレイヤーが自分だけのモデリングや衣装をアップロードし、特にフォトモードを通じてクールな画像を創作する光景は、ゲームの新たな楽しみ方を生み出しています」と、その可能性を高く評価しました。

『サイバーパンク2077』の困難がもたらした開発哲学の変革

『サイバーパンク2077』は、発売当初に深刻な技術的問題を抱え、大きな批判に直面しました。その時期をどう乗り越えたのかという問いに対し、Paweł氏は「スタジオ全体に途方もないプレッシャーがのしかかり、私たちは本当に打ちのめされました」と当時を振り返りました。ゲームを正常に動作させるためのパッチ開発、約束された無料追加コンテンツの提供、そしてDLC『仮初めの自由』の制作がすべて同時進行で進められたといいます。

Paweł氏は、本体の技術的な問題がまだ残る段階でDLCの制作を決定していたと明かし、「大規模なゲームでは、物語の設計は数ヶ月前から始まり、異なる作業が常に重なります」と語りました。Igor氏は、この困難な経験がチームを深く結びつけ、作業モデル全体を見直すきっかけになったと説明します。「チームの構造、コミュニケーション方法、計画の立て方まで、すべてが変わりました。もしあの問題がなければ、今も古いやり方で仕事をしていたかもしれません。それは私たちに、より良いゲームの作り方を教えてくれたのです」

『仮初めの自由』は、この変革の証です。「私たちは期待通りの時期にDLCをリリースし、遅延もなく、過度な残業もなく、作品の質も維持できました。プロセスは厳しかったものの、最終的にはより良いゲーム作りを学ぶことができたと証明できたのです」と、Igor氏は胸を張ります。

CDPRが描く「不完全な物語」の哲学

『サイバーパンク2077』本体が複雑な網状のストーリー構造を持つ一方で、DLC『仮初めの自由』がよりリニアな形式を採用した理由について、Paweł氏は現実的な理由を挙げました。「多くのプレイヤーはDLCリリース後に初めてゲームを始めるため、DLCが本体のストーリーに自然に溶け込むことを望みました。これは『ウィッチャー3』のDLC『石の心』でも同様に設計されたアプローチです」

「コンテンツカット」の真実:最高の体験のための取捨選択

「コンテンツがカットされた」というオンライン上の議論について、Igor氏は「それはあまり正確な表現ではない」と説明します。映画制作に例え、「何十時間も撮影しても、最終的な映画は2時間しかありません。残りの10時間は『カットされたコンテンツ』でしょうか?すべてを入れれば映画は良くなるでしょうか?」と問いかけます。ゲーム開発も同様で、物語の主体を支えない、プレイヤーの注意を散らす要素は削ぎ落とされ、洗練された最高の体験が残されるのだと語ります。

Paweł氏も「クリエイターとして、私たちは作品の最終的な品質に責任を負います。Excelに書かれた何百ものアイデアのうち、実際にゲームに採用されるのはわずか数パーセントに過ぎません。すべての不十分なものを取り除き、最も核心的で最高の部分だけを残すのです」と、クリエイティブな取捨選択の重要性を強調しました。

メインとサイド:物語の深層を多角的に描く

『サイバーパンク2077』のメインストーリーは比較的短く、一方でサイドクエストが非常に豊富で、複雑な世界観や哲学的な思弁がそこで展開される理由について、Igor氏は「20時間以上のメインストーリーは決して短いとは考えていません」と述べました。多くのプレイヤーは、20時間程度のメインストーリーであればクリアできるというデータに基づき、この長さを意識的に設定したといいます。

「オンラインでは『もっと長いゲームが好きだ』という声もありますが、実際には大多数のプレイヤーが最後までクリアできるメインストーリーはこの長さなのです」とIgor氏。CDPRは、メインストーリーで物語の核を提示しつつ、その周辺に広がる世界観や、より深い問いかけをサイドクエストに託すことで、プレイヤー自身の選択と探求の余地を最大化しているのです。「完璧に美しい物語は、本質的に不誠実である」という彼らの哲学は、まさにこの「選択」と「不完全さ」の中に息づいているといえるでしょう。

まとめ

CDPRの開発者たちが語ったのは、単なるゲーム開発の舞台裏だけではありませんでした。発売当初の大きな挫折を乗り越え、それを糧としてより洗練された開発体制と、ユーザー体験を追求する哲学を確立した彼らの姿は、困難に直面した際のクリエイティブな解決策を示しています。

「完璧な物語は不誠実」という言葉に象徴されるように、彼らはプレイヤーに理想的な結末だけを提供するのではなく、選択によって得られるものと失われるものを提示し、その全てをプレイヤー自身の経験として深く心に刻ませることを目指しています。重慶の「サイバーパンク」な風景から得たインスピレーションが、彼らの作品にどのような形で反映されていくのか。そして、今後の新作『Orion』で、CDPRがどのような新たな物語と体験を私たちに提供してくれるのか、その動向から目が離せません。

元記事: chuapp

Photo by Keira Burton on Pexels

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