中国でゲームIP関連グッズの市場が急成長し、特に若年層の間で「拼谷(ピンクー)」と呼ばれる共同購入が日常化しています。しかし、その急速な拡大の裏側では、思わぬトラブルや独特の消費文化が生まれています。人気キャラクターのグッズを手に入れるために、ユーザーはどのような体験をしているのでしょうか? 本記事では、この活況を呈する「IPグッズ経済圏」の実態を深掘りします。
謎の「谷圏」スラングと奇妙な抱き合わせ販売
「まとめ役はどうかしてる?」 中国SNSで飛び交う悲鳴
エンターテインメント系メディア「エンターテインメント資本論」がSNSで、「今のまとめ役はどうかしてるんじゃないか?」といった「谷圏」(グッズ経済圏)に関する投稿を数多く見かけるようになりました。ゲームIPとのコラボレーションが頻繁になるにつれて、同志たちとグッズを共同購入する「拼谷(ピンクー)」は、もはや若い世代の日常的な消費行動となっています。しかし、その盛り上がりの裏側で、さまざまな軋轢も生じています。
あるネットユーザーは、人気キャラクターの二次流通品を購入しようとしたところ、売主から他の商品との「抱き合わせ販売」を要求されたと不満を漏らしています。しかも、「ブラインドボックス形式で、何が抱き合わせになるか全くわからない」という状況でした。売主は親切そうに彼の年齢を尋ね、まだ学生だと知ると、なんと学習参考書12冊をグッズと一緒に送ってきたそうです。彼は「笑えて呆れるが、少し腹立たしさも覚える」と語っています。他にも「被害者」たちは、サツマイモ、ジャガイモ、魚介類など、想像もしないような様々なものが抱き合わせにされたと訴えています。
親も頭を抱える「谷圏」用語の壁
「谷圏」経済の急速な発展に伴い、そこには独自の言語システムが形成されています。「ママ(妈咪)」、「団ママ(团妈)」、「冷門(冷たい門、人気のないキャラクターやグッズ)」、「排単(商品の注文リスト作成)」といったスラングは、この世界に足を踏み入れた人々を困惑させます。中国語なのに、なぜか意味が分からないのです。
あるメディア関係者の友人は、自分の子どもが通う学校が、ある保護者会でわざわざ「谷圏スラング学習会」を企画したと話していました。その目的は「子どもたちが共同購入でお金を使うのを防ぐため」だというから驚きです。
『原神』で加速するブラインドボックス商法と共同購入文化
新キャラクター登場で高まる公式グッズ熱
これまで「谷圏」を外側から観察するばかりでしたが、今回は「谷圏初心者」のプレイヤー、シャオウェイ(小薇)さんの体験を通して、このディープな世界を覗いてみましょう。
シャオウェイさんは『原神』の古参プレイヤーで、これまでゲーム本体に時間と資金を投じてきました。しかし、2025年上半期からゲームに登場する「愚人衆執行官」たちが次々とゲーム内で姿を現し始めると、関連する議論が活発化し、公式からも関連グッズが発売され始めました。これにより、彼女の消費行動にも新たな選択肢が加わったのです。
2025年9月、『原神』はバージョン6.0にアップデートし、新マップ「ナタ」が開かれました。愚人衆とこの地域は深い関係があり、公式オンラインショップでは「霜痕と権威」シリーズのグッズがタイムリーに新作として登場。数年前の「冬夜愚戯」シリーズとは異なり、「霜痕」シリーズはブラインドボックス(中身の見えない箱)形式が主流となっています。
例えば、1個18元(約360円)の缶バッジブラインドボックスからは、ランダムでいずれかの執行官関連の缶バッジが一つ出てきます。もし205元(約4,100円)でコンプリートボックスを購入すれば、11人全員の執行官の缶バッジが手に入ります。このシリーズのアクリルカード、アクリルスタンド、ブラインドエッグ(中身の見えない卵型カプセル玩具)も同様の形式です。
シャオウェイさんは大いに悩みました。1/11の確率で推しキャラを当てるのはあまりにも低い。かといって、コンプリートボックスは「決して高価ではないが、推しではないキャラクターのグッズが家に山積みになり邪魔。二次流通に出すのも面倒だ」と感じました。そこで彼女にとっての「最適解」は、他のプレイヤーと一緒に「拼箱(ピンシアン、箱買いして分配する共同購入)」することでした。
推しを求めて「拼箱」へ!
11人の執行官はストーリーでの登場状況や設定が異なり、当然ながら人気にも差があります。シャオウェイさんにとって幸運だったのは、彼女の好きなキャラクターが「冷門中の冷門」、つまり非常にニッチな人気キャラクターだったことです。彼女がSNSで共同購入の募集をかけてみたところ、すぐに「団長(共同購入のまとめ役)」が彼女を共同購入グループに招き入れてくれました。シャオウェイさんは「新しい世界の扉が開かれた」と感じたそうです。
そのグループは総勢500人近く。普段の雑談はそれほど多くないものの、共同購入に関する活動は活発で、シャオウェイさんはその中で「谷圏」の独特な文化と消費行動を目の当たりにすることになります。
まとめ
中国のIPグッズ経済圏は、オンラインコミュニティと商売が密接に結びついた独自の発展を遂げています。特に「拼谷」のような共同購入文化は、消費者同士の協力によって、ブラインドボックス形式のビジネスモデルが抱えるリスクを軽減し、より効率的に推しキャラのグッズを手に入れる手段として普及しています。
しかし、その熱狂的な市場の裏側では、抱き合わせ販売や情報の非対称性がトラブルの温床となる可能性も秘めています。また、親世代をも巻き込む「谷圏」独自の言語文化は、その影響力の大きさを物語っています。今後も中国のIP経済の動向、特に消費者保護の観点からの規制や業界の自主的な取り組みが注目されるでしょう。日本市場においても、中国のゲームIPが国際展開を進める中で、このような文化の違いや消費行動の理解は、ビジネス戦略上、ますます重要になっていくと考えられます。
元記事: pedaily
Photo by Arina Krasnikova on Pexels












