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『王者栄耀』が織りなす旧正月:中国若者の「新年俗」

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中国の国民的モバイルゲーム『王者栄耀』(Arena of Valor / Honor of Kings)が、若者たちの間で旧正月(春節)の新たな過ごし方、通称「新年俗」として定着しつつあります。単なるゲームプレイを超え、友人たちとゲーム内の「峡谷」で新年を迎え、期間限定スキンを購入し、イベントに没頭することが、まるで現実の年越し準備のように。本記事では、なぜこのバーチャルな年越しが中国の若者たちの心を掴み、熱狂的な支持を集めているのか、その背景にある感情的な繋がりや社会的意義を深掘りします。

『王者栄耀』が紡ぐ「年越し」の絆

『王者栄耀』プレイヤーにとって、旧正月が近づくと始まる「年限スキン」や「新春市集」といったゲーム内イベントは、まさに「年味(年末年始の雰囲気)」を濃厚に感じさせるものとなっています。CGアニメーションが公開され、プレイヤーたちが詳細について賑やかに語り合う頃から、彼らの中では「年味」が徐々に芽生え始めます。そして大晦日、日付が変わる瞬間に年限スキンを購入し、儀式のように新しい対戦を始め、ゲーム内で「新年おめでとう」を送り合うことで、ようやく新年が明けたと感じるのです。

Luluさん(28歳、EC関連勤務)は、9年間『王者栄耀』をプレイしているヘビーユーザーです。「大学1年生の19歳から28歳まで、毎年の春節休みを『王者栄耀』が彩ってくれました」と語ります。かつてはダイヤランクでも「すごい」と言われた日々。今は友人たちが入れ替わっても、ゲームの面白さは変わりません。特に最近は、新しく出会った気の合う仲間と「五排」(5人チーム戦)を組むのが楽しくて仕方ないと言います。「仕事が終わったらみんなとゲームができる、そう思うと頑張れるんです!」

また、Luluさんの人生初のスキンは、当時の彼氏(現在の夫)が贈ってくれた貂蝉(ちょうせん)の「仲夏夜の夢」。今年は貂蝉の「馬年限定スキン」を購入する予定だそうで、「年限スキンを買う瞬間は、昔の自分を慈しむような気持ちになるんです」と、ゲームが紡ぐ思い出の深さを教えてくれました。

別のプレイヤー、アワンさんは、自身の干支である虎年の年限スキンにまつわるエピソードを話してくれました。「虎年限定スキンで5人チーム戦を始めたら、相手チームも同じ5つの虎年スキンだったんです!」。対戦開始時の美しい花火エフェクトや、ゲーム内で新年を祝い合うチャットのやり取りは、彼にとって忘れられない「年味」体験だと言います。ゲームが単なる遊びではなく、大切な人との記憶を刻む場所となっていることが伺えます。

ゲームが日常の「錨」となる理由

先日、プレイヤーの本本(ベンベン)さんがSNS「小紅書(RED)」に投稿した「私の年越し習慣は『王者栄耀』」という記事は、多くの共感を呼びました。彼女は、「毎年旧正月が近づくと『王者栄耀』をダウンロードし直すんです。昔の夢はeスポーツ選手でしたが、学業で時間もなく…。でも、大学に入ってからは、旧正月中の『王者栄耀』は私の恒例行事になりました」と綴っています。

北京の大学院で機械学習を研究する本本さんは、日々大きなプレッシャーと向き合っています。研究は不確実性が高く、時には数週間かけても進展がないどころか「退展(後退)」することもあると言います。そんな彼女にとって、旧正月期間中に没頭する『王者栄耀』の時間は、一年の挫折感を洗い流す特別な瞬間なのです。「過去の勝利がランクの星になるように、対戦ごとに新たな始まりがある。それが『王者栄耀』の魅力です」と本本さんは語ります。

Luluさん、アワンさん、本本さん。彼らの言葉から見えてくるのは、『王者栄耀』が単なるゲームではなく、忙しい日常から解放され、仲間との絆を深め、そして自己肯定感を育む「錨」のような存在になっているということです。現実世界で感じる孤独や挫折感を、ゲームの世界で癒やし、新たな活力を得ているのです。

バーチャルとリアルが融合する「新年俗」

『王者栄耀』の旧正月イベントは、カウントダウン、新年特別放送、特殊なリザルト画面、そしてゲーム内での細やかな交流など、非常に体系的かつ周期的な「儀式」が組み込まれています。毎年決まった時期にこれらのイベントに参加し、その雰囲気を味わうことで、プレイヤーたちは自然と「辞旧迎新(古い年を送り、新しい年を迎える)」という気持ちになります。特定の時期に現れ、多くの人に期待され、安定した感情的意味を帯びる時、それは「年俗」となる条件を満たします。

ゲーム内の「年俗」は、現実世界のそれとも深く響き合います。ロビーでカウントダウンを待ち、ゼロになった瞬間に見知らぬプレイヤーと紅包(ご祝儀袋)を奪い合ったり、友達とボイスチャットで「新年おめでとう」と声を掛け合ったりするのは、まるで「守歳(年越しを徹夜で過ごす習慣)」のようです。峡谷で打ち上げられる花火や、対戦開始時の華やかなエフェクトは、現実の花火大会のような儀式感を与えます。年限スキンを購入し、記念にスクリーンショットを撮る行為は、現実で新しい服を着たり「年貨(旧正月用品)」を買い揃えたりするのと同じように、新しい年への期待と縁起の良さに満ちています。

さらに、『王者栄耀』自体が「国民的ゲーム」としての性質を持っています。幅広い層がプレイし、特別な門戸開放も必要ないため、気軽にコミュニケーションが取れます。つまり、旧正月期間に『王者栄耀』にログインし、年貨を買い、対戦を楽しむのは、単に慣習だからというだけでなく、過去一年、あるいはそれ以上のゲームの記憶、社会的繋がり、そして自己成長の物語がそこにあるからなのです。

まとめ

中国の若者にとって、『王者栄耀』は単なるゲームという枠を超え、友人や家族との繋がりを再確認し、過去の思い出を慈しみ、そして新たな一年を迎えるための重要な「場」となっています。ゲーム内の「峡谷」は、現実世界の忙しさやプレッシャーから一時的に解放される聖域であり、そこで培われる絆や喜びが、彼らの心を豊かにしているのです。

この現象は、デジタル空間が現代社会の伝統や文化に深く根付き、新たな「年俗」を創造する可能性を示唆しています。日本でもオンラインゲームでの交流は盛んですが、これほど大規模に「年越し」という文化と結びつく事例はまだ少ないかもしれません。中国の事例は、ゲームが文化や生活様式に与える影響の大きさ、そしてその進化の方向性を考える上で非常に興味深い示唆を与えてくれるでしょう。

元記事: chuapp

Photo by RDNE Stock project on Pexels

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