中国のGPU開発企業Moore Threads(摩尔线程)が12月5日、上海証券取引所の科創板(スター・マーケット)に正式上場し、初値は425.46%の急騰を見せ、時価総額は一時3000億元(約6兆円)を突破しました。この驚異的なスタートは、かつてAIチップ業界で「寒武紀(Cambricon)」が成し遂げた急成長を彷彿とさせ、「次なる覇者」の登場かと市場の注目を集めています。果たしてMoore Threadsは、高い研究開発投資と広範な事業戦略で、AI時代のGPU市場をリードする存在となれるのでしょうか。本記事では、その評価ロジックと事業戦略を深掘りします。
中国GPUの雄「Moore Threads」が科創板に上場!初値は驚異の6兆円超え!
2025年12月5日、中国のGPU開発ベンチャー企業であるMoore Threadsが、上海証券取引所のハイテク企業向け市場「科創板(スター・マーケット)」に鮮烈なデビューを果たしました。上場初日には株価が425.46%も急騰し、時価総額は一時3000億元(日本円で約6兆円)を超えるという、市場の予想をはるかに上回るパフォーマンスを見せました。この熱狂的な反応は、かつて中国のAIチップ企業であるCambricon(寒武紀)が、上場から約4年をかけて達成した規模に匹敵するものです。市場では、「Moore ThreadsがCambriconのように、一年で株価が15倍になるという伝説を再び作り出すのか、あるいはそれを超える成果を出すのか」という期待が高まっています。
異なる評価体系:Moore ThreadsとCambriconの比較
Moore Threadsの今日の劇的なパフォーマンスは、2025年初頭のCambriconを想起させますが、両社の評価ロジックは大きく異なります。
Cambriconは、過去数年の実績を見ると、2022年には思元290/370シリーズチップが主要企業に導入され、クラウド部門の収益が前年比173.52%増を記録するなど、その収益の確実性が早期に芽生えていました。もちろん、当時はエッジ・端末業務への依存や、370シリーズの評価が必ずしも芳しくないといった課題も抱えていました。しかし、翌年末に発表された590シリーズチップが期待をはるかに超える性能を示し、さらにNVIDIA(英伟达)の輸出規制が追い風となり、資本市場は瞬く間に上記の懸念を忘れ去りました。つまり、遅くとも2024年初頭には、Cambriconは非常に明確な収益の確実性を示していたと言えます。
一方でMoore Threadsはどうでしょうか。同社の経営陣は、最短で2027年に黒字化を目指すと予測しています。招募説明書によると、2022年から2024年の売上はそれぞれ4608万元、1.24億元、4.38億元と成長していますが、同期の純損失はそれぞれ18.40億元、16.73億元、14.92億元と、依然として巨額の赤字を計上しています。純損失は縮小傾向にあるものの、研究開発(R&D)投資の高さは際立っています。2024年までの累積R&D投資額は43億元に達しており、同期の総売上高6.08億元と比較すると、R&D費は売上高の実に7倍以上にものぼります。これはGPU業界の中でも最高水準と言えるでしょう。対照的に、Cambriconの2024年のR&D投資が売上高に占める割合は約91.3%でした。
事業戦略の比較:全方位型のMoore Threads、特化型のCambricon
Moore ThreadsのR&D投資がこれほどまでに高い理由は、その事業戦略を見ると明らかになります。
Cambriconは2024年までに事業ポートフォリオを大きく転換し、クラウドチップ事業が全体の13%から99%へと急増しました。以前の主要事業であった端末チップIPライセンスやエッジチップ事業は完全に切り離され、事業の主軸は「ボードカード(GPUアクセラレーター)の提供」という明確な一点に絞られました。
これに対し、同期のMoore Threadsは、AIスマートコンピューティング、グラフィックレンダリング、コンピューティング仮想化、そして個人向けエンターテイメント・生産性ツールといった四大製品ラインを構築しています。データセンターからコンシューマーエレクトロニクスまで、あらゆるシナリオをカバーする全方位型の事業展開を目指しているのです。この広範なアプリケーションシナリオへの対応が、膨大なR&Dコストを必要とする大きな要因となっています。
まとめ:次世代のAIチップ市場を占うMoore Threadsの挑戦
Moore Threadsの華々しい上場と市場の熱狂は、中国の半導体・AIチップ業界における高い期待値を示しています。しかし、Cambriconが収益性の確実性を見せてからの急成長だったのに対し、Moore Threadsはまだ大幅な赤字を抱えながら、多額の研究開発投資を続けています。データセンターから個人向けデバイスまで、幅広い市場を狙うその戦略は、成功すれば大きなリターンをもたらす可能性がありますが、同時に莫大なコストとリスクを伴います。
AI時代においてGPUは不可欠な存在であり、中国政府も半導体国産化を強力に推進しています。Moore Threadsがこの高すぎるハードルを越え、真に「次なるAIチップの覇者」となれるのか、その挑戦は日本のテクノロジー業界にとっても、世界の半導体サプライチェーンの未来を占う上で非常に注目すべき動向と言えるでしょう。
元記事: pedaily
Photo by Pachon in Motion on Pexels












