中国の半導体業界に新たな風が吹き荒れています。次世代のデータ処理を担う「DPU(Data Processing Unit)」の開発で注目を集めるスタートアップ、「云豹智能(Yún bào zhìnéng / Intelligent Cloud Leopard)」が、中国A株市場でのIPO(新規株式公開)手続きを正式に開始しました。テンセントをはじめとする名だたる投資機関からの厚い支援を受け、評価額は既に140億人民元(約2,800億円)に達しています。彼らが目指すは「国産DPU第一号株」。データセンターの未来を大きく変えうる、この深セン発の超新星に迫ります。
中国DPU市場に新星!「云豹智能」がIPOへ
中国・深センに本拠を置く云豹智能は、クラウドコンピューティングとデータセンター向けのDPUチップおよびソリューション開発に特化した半導体企業です。2020年に、元RMI社の共同創設者である蕭啓陽(Xiao Qiyang)博士によって設立されました。
創業以来、同社は急速な成長を遂げ、その背後にはテンセント(Tencent)やセコイア・チャイナ(Sequoia China)、深センキャピタルグループ(Shenzhen Capital Group)、IDGキャピタル(IDG Capital)など、中国国内外の著名な投資機関が名を連ねています。2025年11月にはDラウンドの資金調達を完了し、その企業価値は実に140億人民元(日本円で約2,800億円、1人民元=20円換算)に達しています。今回のIPOは、「国産DPU第一号株」という栄誉を勝ち取るための大きな一歩となります。
DPUとは?次世代データセンターの心臓部
蕭啓陽博士はかつて「私たちは新しいコンピューティングパワーの時代にいる」と語り、未来の計算センターはCPU、GPU、そしてDPUの「三大PU」によって支えられると予測しました。CPUとGPUが計算処理を担う「コンピューティングパワーチップ」であるのに対し、DPUはこれらの計算パワーチップを繋ぎ、すべてのデータを保存し、そのデータを効率的に調整・管理する「ネットワークチップ」の役割を果たします。
このDPUの重要性は、すでに世界のテクノロジー大手も認識しています。例えばNVIDIAは、DPU開発の先駆者であるイスラエルのチップ企業Mellanoxを69億ドルという巨額で買収し、DPU戦略を本格化させました。云豹智能は、まさにこのDPU分野で中国を代表する存在を目指しています。
シリコンバレーから深圳へ:蕭啓陽博士の軌跡
云豹智能を率いる蕭啓陽博士は、その卓越した経歴で知られています。香港出身の蕭博士は若くして米国に渡り、スタンフォード大学で電子工学の博士号を取得。その後、カリフォルニア大学アーバイン校やマサチューセッツ工科大学で教鞭を執り、AIニューラルネットワーク、高性能プロセッサ、ネットワークチップなどの研究に深く携わり、IoT研究のパイオニアの一人としても知られています。
学術界を離れた後、蕭博士はシリコンバレーへ転身。2002年にはマルチコアプロセッサを開発するチップ企業RMIを共同設立しました。RMIは2009年に米国のNetLogicに買収され、蕭博士はNetLogicのアジア太平洋地域担当社長兼ゼネラルマネージャーに就任。さらに2012年には、NetLogicがBroadcomに37億ドルで買収される大型案件をまとめ上げ、その後Broadcomの大中華圏担当ゼネラルマネージャーを務め、2015年に退社しました。
これらの国際的な経験と深い技術的知見を背景に、蕭博士はDPUの可能性に着目し、中国に戻って云豹智能を創業。そのコアチームにはBroadcom、Intel、Arm、Alibabaといった名だたる企業出身者が名を連ね、中国で最も経験豊富なDPUチップおよびソフトウェアの研究開発チームを擁しています。
急成長を支えるチームと市場戦略
蕭啓陽博士は、中国国内においてCPUとGPUの分野は既に競争が激しいものの、DPUはまだ「非常に少ない」と指摘します。現在のDPU市場規模は約300億人民元ですが、5年後には1000億人民元(約2兆円)にまで拡大すると予測しており、この巨大な成長市場で主導権を握ることを目指しています。
経験豊富なチームと、クラウドコンピューティングおよびデータセンターの需要増大という追い風を受け、云豹智能は設立以来、破竹の勢いで成長を続けています。今回のIPOは、その成長をさらに加速させるための重要なステップとなるでしょう。
まとめ
云豹智能のIPOは、中国が半導体分野、特にDPUのような次世代技術で自給自足を目指すという強い意志を象徴しています。データセンターの爆発的な増加とAI技術の進化は、DPUへの需要を今後さらに押し上げることは確実です。
日本企業にとっても、これは対岸の火事ではありません。グローバルな半導体サプライチェーンにおいて、中国のDPU技術の進化は新たな協力や競争の機会を生み出す可能性があります。クラウドサービスやAIインフラに関わる企業は、この動向を注視し、今後の技術革新と市場の変化に対応していく必要があるでしょう。云豹智能が「国産DPU第一号株」として、世界の半導体地図をどのように塗り替えていくのか、その動向から目が離せません。
元記事: pedaily
Photo by Brett Sayles on Pexels












