中国の大手スマホメーカー「荣耀(Honor)」が、最新の折りたたみスマートフォン「荣耀Magic V5」を発表しました。前モデルからの進化に期待が高まる中、一部からは早くも「折畳みスマホの覇者(机皇)」と評される声も聞かれました。しかし、中国のテックメディア「科客」による実機レビューでは、その期待とは裏腹に、いくつかの課題が浮き彫りになったようです。特に、急速に市場シェアを拡大しているファーウェイ(Huawei)の存在感が増す中で、各メーカーの折りたたみスマホ開発競争は新たな局面を迎えています。本記事では、荣耀Magic V5が本当に“覇者”と呼べるのか、その実力と中国市場の最新トレンドを深掘りします。
中国折りたたみスマホ市場の激変と「荣耀Magic V5」の背景
近年、中国の折りたたみスマートフォン市場は目まぐるしく変化しています。特にファーウェイが目覚ましい復活を遂げ、その折りたたみスマホは圧倒的な人気を誇っています。今年第一四半期には、ファーウェイの折りたたみスマホが中国市場で実に76.6%ものシェアを獲得。これは、中国で販売される折りたたみスマホ4台のうち3台がファーウェイ製であることを意味します。
ファーウェイの台頭は、他社に大きなプレッシャーを与えています。OPPOは過去1年半で折りたたみスマホを1機種しか投入せず、XiaomiやVivoも製品の投入数を絞る傾向にあります。そして、荣耀が受けた衝撃は特に大きく、2024年上半期に新型折りたたみスマホを一切投入していませんでした。「荣耀Magic V5」は、2024年の荣耀にとって、唯一の大型折りたたみスマホとなる可能性すらあります。こうした背景から、「Magic V5」への期待は非常に高まっていましたが、実際の評価は一体どうだったのでしょうか。
「Magic V5」実機レビュー:”機皇”には遠い?浮き彫りになった課題
デザインは「薄く軽いが、驚きはない」
「荣耀Magic V5」は、その前モデル「Magic V3」から外観の変化がごくわずかです。新色の追加は通常運転で、外画面のR角(丸み)は依然として左右非対称、内画面のベゼルも比較的幅広のままです。V3ユーザーが買い替えを検討するほどの魅力は乏しいというのが、SNS上での一般的な声のようです。
厚さわずか8.8mmという薄さと軽さは、手に取ると確かに際立ちます。しかし、近年では国産各社の大型折りたたみスマホが軒並み軽量・薄型化を実現しており、もはや業界の「共通認識」となりつつあります。「Magic V5」の実機に触れても、特筆すべき驚きは感じられませんでした。
一方、本体が薄くなったことで、カメラモジュールの突出はかえって目立つ結果となりました。特に本体を展開すると、カメラ部分が本体よりもかなり厚く飛び出しており、さらにDeco(装飾部分)の処理が雑なため、不自然な印象を与えます。
期待外れだったカメラ性能と周辺スペック
カメラモジュールがこれほど「堂々」としているため、「荣耀Magic V5」が優れた映像性能を持つと期待されました。しかし、実機での撮影体験は残念な結果でした。筆者が特に重視する望遠性能では、3倍・6倍ズームでの画質は特筆すべきものではなく、さらに倍率を上げると見劣りします。また、背面トリプルカメラで異なるレンズに切り替える際のタイムラグが顕著で、アルゴリズムの最適化には改善の余地があると感じられました。
筆者の知人は「荣耀Magic V5」と「Vivo X Fold5」を比較し、「V5は書類の撮影が不鮮明で、X Fold5に劣る」と評価。価格発表を待たずにVivoを購入したとのことです。
「折畳みスマホの覇者」を謳う「荣耀Magic V5」は、現行最高峰のSoC「Snapdragon 8 Gen X」を採用しているものの、周辺機器のスペックが最高水準に達していない点が指摘されています。例えば、VivoやOPPOの今年の製品が採用しているUTG(Ultra Thin Glass)内画面には対応していません。バッテリー容量は増大したものの、有線急速充電は依然として66Wにとどまり、充電効率は極めて高いとは言えません。
さらに注目すべきは、最大容量の6100mAh「青海湖ブレードバッテリー」は1TBモデルに限定されており、それ以外のモデルは5820mAhに「刀法」(差別化)されている点です。また、薄さ8.8mm、重さ217gなのはホワイト版のみで、他のカラーは9.0mm、222gと、細かな点でも差がつけられています。
価格設定と保証サービスへの疑問符
「荣耀Magic V5」は、前モデル「荣耀Magic V3」と同じ8999元(約19.5万円)からの価格設定で、3つの構成と4色のカラーバリエーションが提供されます。しかし、すでに発売されている競合の「Vivo X Fold5」は6999元(約15.2万円)からと、荣耀の方が2000元(約4.3万円)も高価です。両者のハードウェアの主な違いはプロセッサの構成にありますが、この価格差は消費者の選択に大きな影響を与えるでしょう。
加えて、「荣耀Magic V5」の初回販売特典として提供される1年間の内画面破損保証は、条件がかなり厳しいと指摘されています。製品の外観の摩耗や傷などはサービス対象外で、特典を受けるには別途498元(約1.1万円)のサービス料が必要となります。
さらに、一部のユーザーからは、家電量販店で展示されている「荣耀Magic V5」のディスプレイ品質にばらつきが見られるとの報告もあります。同じ512GBモデルでも、肉眼で識別できるほどの表示品質の違いがあり、異なるディスプレイサプライヤーによるものと推測されています。
まとめ
「荣耀Magic V5」は、薄型・軽量化といった基本的な進化は遂げたものの、カメラ性能、充電速度、ディスプレイ品質、そして価格設定といった面で、多くの課題を抱えていることが明らかになりました。特に、ファーウェイが圧倒的な存在感を放つ中国折りたたみスマホ市場において、「Magic V5」が「覇者」の座を獲得するのは容易ではないでしょう。
しかし、こうした激しい競争は、結果的に各メーカーがより高性能で魅力的な折りたたみスマホを開発する原動力となります。日本のユーザーにとっては、中国市場から生まれる革新的な技術や、価格競争による製品の多様化は歓迎すべき流れと言えるでしょう。今後の中国メーカー各社の戦略と、折りたたみスマホのさらなる進化に期待が寄せられます。
元記事: 科客,主见不成见
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