中国の旅行テック企業「Bili Information(比利信息)」が、数千万元人民元のA+ラウンド資金調達を完了しました。単独で投資を行ったのは、著名なベンチャーキャピタルであるTiantu Capital(天图资本)です。今回の資金は、旅行新メディアプラットフォームの構築加速に加え、AIGC(AI Generated Content)やAI Agentといった最先端AI技術の研究開発および商業化に充てられる予定です。AIが私たちの旅行体験をどのように変えるのか、その最前線を担うBili Informationの動向に注目が集まります。
AIが旅行体験を再定義する:Bili Informationの挑戦
2016年に設立されたBili Informationは、AIを駆使した旅行体験のパーソナライズを事業の中核に据えています。同社は現在、主に二つの製品シナリオを展開し、旅行業界のデジタル変革を推進しています。
「ホテル+」:客室をインタラクティブなメディア空間に
一つ目のシナリオは「ホテル+」です。これは「Travel Media Network(旅行新メディアプラットフォーム)」と呼ばれるもので、ホテルの客室にある大型スクリーンを活用し、ゲストにパーソナライズされた情報やエンターテイメントコンテンツを提供します。創業者の王洋(Wang Yang)氏によると、これは「大型スクリーン版の小紅書(RED)やTikTokのようなもの」であり、旅行者にその土地の歴史、美食、建築といったローカル情報を届けることで、宿泊体験を向上させることを目指しています。
「チケット+」:「旅中没入型消費」の新境地
二つ目の「チケット+」シナリオは、「旅中没入型消費シーン」に焦点を当てています。例えば、杭州の西湖国家風景区でリリースされた初のスマート体験アプリケーション「泡泡爱旅行(Paopao Ai Lüxing)」は、観光客が旅の途中でより深くその場に没入し、関連するサービスや情報にアクセスできるような仕組みを提供しています。
Bili Informationは、インターネット時代には難しかったOTA(オンライン旅行代理店)の変革を、AI時代が提供する「極めて小さいが現実の『隙間』」を捉えることで実現しようとしています。王洋氏は、「パーソナライズ、データ公平性、リアルタイム認識といった根源的なロジックから出発し、旅行体験を再構築し、新しい入り口を開くことが可能になる」と語っています。同社は特に、旅行中という、これまで他の大手サービスが手の届きにくかった重要なポイントに注力しています。
これまでの歩みと投資背景
Bili Informationの創業者である王洋氏は、2002年に北京理工大学を卒業後、創維電視(Skyworth TV)で市場マーケティングに従事。その後、サムスンなどの大手企業でホテル、不動産、メディアといったB2B事業の全国販売を担当し、豊富な業界リソースと経験を培ってきました。この経験が、2016年のBili Information設立に繋がり、彼自身の見識とネットワークが同社の成長を支えています。
今回のA+ラウンド以外にも、Bili Informationはこれまでに二度の資金調達を完了しています。初期段階では、CCTVなどの大手メディアを長年支援してきた光合天潤の劉震董事長から投資を受けました。そして、2023年には創維酷開科技(Skyworth Coocaa Technology)から2.1億元(約42億円)の戦略的投資を獲得しています。創維酷開科技の株主には創維、テンセント、iQiyi、バイドゥといった中国を代表する企業が含まれ、主に家庭向け市場に強みを持っていますが、Bili Informationは商業市場に焦点を当てることで、明確な棲み分けとシナジーを追求しています。
Tiantu Capitalの陳俊嘉氏は、「Bili Informationはホテルと観光地の両端で、非常に価値のあるシナリオ入り口を掌握しており、AIを用いて旅行業界の新たな供給側を開拓している」とコメントしています。また、「『宿泊+』も『チケット+』も、明確で再現性のあるビジネスモデルである」と評価し、「AIが旅行業界の次の成長ドライバーになると確信しており、Bili Informationはこの分野で業界をリードする地位にある」と強い期待を示しています。
まとめ:日本の旅行業界への示唆
中国のBili Informationの動向は、日本の旅行業界にとっても重要な示唆を与えます。AI、特にAIGCやAI Agentといった技術が、ホテルや観光地での顧客体験をどれほどパーソナライズし、効率化できるか。そして、既存のOTAとは異なるアプローチで「旅中」の体験に特化するビジネスモデルが、新たな市場を開拓する可能性を秘めていることが見て取れます。
日本でもインバウンド需要の回復や国内旅行の活性化が進む中で、こうしたAIを活用した次世代の旅行体験提供は、競争力を高める上で不可欠な要素となるでしょう。Bili Informationの取り組みは、AIがもたらす旅行業界の未来像を具体的に示していると言えそうです。
元記事: pedaily
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