中国のゲーム大手miHoYo(ミホヨ)が、同じく巨大テック企業Tencent(テンセント)を提訴したニュースが注目を集めています。本日9月5日に開廷したこの訴訟の焦点は、miHoYoが民事訴訟のためにTencentが運営するQQのユーザー情報開示を求めたこと。しかしTencentはユーザープライバシー保護のため、正規の司法手続きなしでの情報提供を拒否。この異例の法廷バトルは、中国における企業の知的財産権保護と、プラットフォーム事業者の個人情報保護義務という、重要なテーマを浮き彫りにしています。果たしてmiHoYoは望む情報を得られるのでしょうか?
miHoYoがTencentを提訴!その背景とは?
今回の一件は、上海miHoYo影鉄科技有限公司が深圳市Tencent计算机系统有限公司を相手取り、「その他の民事」を理由として、本日(9月5日)広東省深圳市南山区人民法院で開廷しました。
miHoYoが訴訟に踏み切った背景には、同社が進めている民事訴訟の過程で、Tencentが運営するインスタントメッセンジャー「QQ」の関連ユーザー情報の開示が必要になったことがあります。しかし、Tencent QQは9月1日夜、微博(ウェイボー)を通じて、「ユーザーのプライバシー保護に関する関連法規に基づき、Tencentは違法にユーザー情報を提供することはできません。正式な司法訴訟手続きを通じてのみ、情報提供が可能です」と声明を発表。このTencent側の拒否が、miHoYoが提訴に踏み切る直接的な引き金となりました。
実際、プラットフォームに対し訴訟手続きを通じてユーザーデータの開示を求めるのは、決して珍しい手段ではありません。例えば、SNS上で誹謗中傷を受けたユーザーが、加害者の特定のためにプラットフォーム企業を提訴し、個人情報の開示を求めるケースなどがこれに当たります。TencentはmiHoYoに直接ユーザー情報を提供するわけにはいかないものの、miHoYoはプラットフォームを提訴するか、公安機関の介入により、裁判所や公安機関が法に基づきプラットフォームに情報提供を求めることで、侵害者の身元情報を取得することが可能になります。
中国の法律が示すプラットフォームの責任
今回の一件について、触楽(chuapp.com)が湖北賦兮法律事務所の易倬玉弁護士に法律解釈を求めたところ、興味深い見解が示されました。
易弁護士は、「Tencentが司法機関からの通知や書類がない状況で、miHoYoに直接ユーザーデータを提供するのを拒否したのは、合法的かつ必要な自己保全行為である」と指摘。Tencentが直接的な情報提供を拒否する主な根拠は、中国の「中華人民共和国ネットワーク安全法」と「中華人民共和国個人情報保護法」にあるとのことです。
特に、「中華人民共和国ネットワーク安全法」第41条では、ネットワーク運営者が個人情報を収集・使用する際、合法性、正当性、必要性の原則に従い、収集される者の同意を得るべきだと規定されています。易弁護士はこれについて、「プラットフォームは収集したユーザーデータやプライバシー情報を適切に保管し、漏洩させない義務を負っています。国家安全保障や突発的な公衆衛生上の事件といった特殊な状況を除き、ユーザー本人の同意や明確な法的授権がない限り、プラットフォームはいかなる第三者にもユーザーの個人情報を提供することはできません」と説明しています。
もしTencentが法定の手続きを経ずにmiHoYoにユーザーデータを提供した場合、Tencent自身が多大な法的リスクに直面することになります。情報提供によって損失を被ったユーザーは、Tencentを相手取り、個人情報保護法違反で提訴する可能性があります。企業のリスク管理とプラットフォームの信用維持という観点から見ても、TencentがmiHoYoに対し、正式な司法ルートを通じてデータを入手するよう求めるのは、極めて正常かつ合理的な判断だと言えるでしょう。
ちなみに、通常miHoYoがTencentに対し、権利侵害者の個人情報やチャット記録、侵害ファイルなどの情報開示を求める場合、裁判所に「調査令」を申請することが可能です。裁判所が審査の上で必要と認めれば、裁判所の「調査令」を発行し、Tencentに調査協力を求めるため、必ずしもTencentを提訴する法的手続きは必要ありません。
訴訟の裏に潜むmiHoYoの真の狙い
易弁護士は既存の情報に基づき、今回の訴訟はmiHoYoが自己の証拠収集過程で障害に直面したためであると判断しています。
以前、miHoYo法務部の微博アカウントは、「情報漏洩者は刑事強制措置を!miHoYoは多方面から、全チェーンでゲームの情報漏洩を打撃する」と題する文章を公開しました。その中で、QQチャンネル「コーヒーの森」の運営者である楊某某が、コミュニティ内でmiHoYoが開発する複数のゲームの未公開テスト版を継続的に公開していたことに言及しています。今回の訴訟は、この情報漏洩事件と深く関連している可能性が高いと推測されます。
易弁護士によると、miHoYoはすでに一部の情報漏洩者を特定しているものの、QQグループやQQチャンネルなどのソーシャルプラットフォームに潜む匿名または未特定の情報漏洩者が多数存在するとみています。これらの身元が不明なユーザーについては、miHoYoは情報漏洩の糸口を掴んでいるものの、具体的な個人情報や状況を把握できていないため、Tencentのバックエンドデータやチャット記録を参照する必要があると考えられます。このような状況下で、Tencentを提訴することが、法的に情報を取得するための公式な経路となるのです。
プラットフォームであるTencentを被告とすることで、miHoYoは証拠収集の要求を正式な司法案件の枠組みに組み込むことができます。裁判の審理過程で、裁判所は事実確認のため、案件の一方であるTencentに対し、関連するバックエンドデータの提供を法的に要求することが可能になります。これによりmiHoYoは訴訟手続きを通じて、重要な証拠を合法的に取得できるというわけです。
易弁護士は、「ゲームコンテンツの漏洩や拡散に関与したと疑われる一部の人物について、miHoYoはまだ具体的な個人情報を把握できていないため、裁判所に訴訟を提起する条件を満たしていません」と指摘します。miHoYoが今回の訴訟を通じてTencentから取得したいと考える証拠の種類は非常に具体的です。
- 最も核心となるのは、情報漏洩者の身元情報です。民事訴訟を提起したり、刑事告発を行ったりするには、明確な被告または被疑者が必要です。
- チャット記録も証拠の一環となります。これには、QQグループやチャンネルで漏洩情報が投稿されたチャット記録が含まれ、漏洩行為の発生時間、範囲、具体的な内容を証明できます。
- さらに、単なるチャット記録の証明力は限定的ですが、未公開のゲーム設計文書、キャラクターモデル、コードの一部、テストインストールパッケージなどの具体的なファイルアップロードおよびダウンロード記録を入手できれば、直接的な著作権侵害の証拠となり得ます。
まとめ
今回のmiHoYoとTencentの訴訟は、中国における知的財産権侵害に対するゲーム企業の毅然とした姿勢と、巨大プラットフォームが負う個人情報保護の重い責任とが衝突する、現代的な課題を象徴する出来事と言えるでしょう。最終的に裁判所がどのような判断を下すか注目されますが、これは単なるゲーム企業間の争いではなく、デジタル化が進む社会で企業がどのようにユーザーデータを取り扱うべきか、また情報漏洩といかに戦うべきかという普遍的な問いを私たちに投げかけています。日本の企業や開発者にとっても、グローバルなビジネスを展開する上で、各国のデータ保護法制や企業文化への理解がいかに重要であるかを再認識させる事例となるでしょう。
元記事: chuapp












