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中国ゲーム業界のリアル:過酷な現場を去った開発者の告白

overworked Chinese game developer Chinese game studio night - 中国ゲーム業界のリアル:過酷な現場を去った開発者の告白

中国のゲーム業界は、その目覚ましい成長と技術革新で世界的に注目されています。しかし、その華やかな成功の裏には、過酷な労働環境と精神的プレッシャーに苦しむ多くの開発者が存在します。今回ご紹介するのは、そんな現実から「脱出」を選んだ二人のゲーム開発者、小北さん(仮名)と老馬さん(仮名)の物語です。彼女たちはなぜゲーム業界を去り、そしてその経験から何を得たのでしょうか。中国テックメディア「chuapp」の記事から、彼らの生々しい声をお届けします。

「もう二度と戻らない」小北さんが語るゲーム業界の現実

小北さんが正社員としてゲーム業界にいたのは、2022年初めが最後でした。実は、2021年末にはすでに「逃げ出したい」と考えていたそうですが、仕事の慣性で年明けまで業務を続けていました。彼女が勤めていたのは、大都市の郊外にある中堅ゲーム会社です。

理不尽な上司と終わらない修正地獄

小北さんの2社目の職場は、彼女の美学と得意分野に合った「二次元カードゲーム」の新プロジェクト。彼女は世界観、キャラクター設定、ストーリーを担当するシナリオライターでした。しかし、新しいプロジェクトのシナリオリーダーは極めて気難しく、職場で非常に厳しく、時には個人攻撃まがいの言葉を浴びせることすらあったといいます。また、自身の立場に異常にこだわる人物で、入社して間もない小北さんがうっかりフルネームで呼んでしまった際、「敬意を払え、私は君のリーダーだ!」と叱責されたこともありました。

以前のプロジェクトでは、与えられた時間内に十分な量の原稿を提出すれば問題ありませんでしたが、この職場では常に感情的なプレッシャーにさらされ、苦悩する日々でした。毎週金曜日はシナリオチームの締め切りで、全員が最終稿を提出しなければなりません。小北さんの原稿の最終稿には、「13」から「19」の数字がつくことも珍しくなく、何十回も修正を繰り返したことを示しています。それでもリーダーはなかなか満足せず、小北さんからすれば、それは「重箱の隅をつつく」ようなものに感じられました。

「リーダーも責任者も、何を求めているのか自分たちでも分かっていないようでした。私たちが作っているのは、リーダーの気分を推測する退屈なゲームのようでした」と小北さんは語ります。クリエイティブな仕事の情熱は、何度も修正を繰り返すうちに冷え切ってしまったそうです。

「お金を払って出勤しているよう」過酷な通勤と退職の困難

プロジェクトがコンテンツの量産段階に入ると、シナリオチームの人材流動は激しくなりました。離職の理由はほぼ全てが「プレッシャーに耐えられない」こと。人が辞めても仕事量は減らず、個人の負担は増大するばかりでした。

小北さんの自宅は会社から遠く、往復4時間の通勤に加え、開発の残業は常態化。終電を逃すことも頻繁にありました。「片道のタクシー代は120元(約2,500円)以上、深夜はもっと高いのに、会社のタクシー代支給上限は月200元(約4,200円)だけ。まるで自分がお金を払って会社に通っているようでした」と彼女は語ります。

2021年末にはすでに辞職を決意していた小北さんですが、退職手続きはスムーズに進みませんでした。退職を申し出ると、上司は「今抱えている仕事をすべて終わらせるように」と要求。シナリオ責任者からは「辞めるからといって仕事のチェックを甘くすることはない」と釘を刺されました。退職後、小北さんは「あのプロジェクト以降、私は言葉のコントロール感を失ってしまった」と感じています。

予定していた退職日に合わせて部屋を解約したものの、退職手続きは何度も引き延ばされ、会社近くの安宿を転々とすることに。給料日が過ぎても引き継ぎは行われず、「引き継ぎが済んでいない」「後任が見つからない」という理由で出勤を要求され続け、最終的に退職証明書を手にしたのは、春から夏へと季節が変わる頃でした。後に彼女は、退職手続きが遅れた理由が、シナリオチームの離職率が高すぎて上層部や人事から警告を受けていたためだと知ります。小北さんの入社から退職までに、同じチームの4つのシナリオ担当ポジションは、何度も新しい顔ぶれに入れ替わっていたのです。

ゲーム業界からの「上陸」:公務員への転身

退職後、小北さんは実家に戻ることを決意しました。「ゲーム会社ではプレッシャーが大きく、落ち着かない感覚でした。安定感がなく、未来が見えなかったのです」。彼女はキャリアの選択肢を検討し、大手ゲーム会社は給料が良いものの入るのは難しく、ゲーム業界全体の残業の多さは自身の体には合わないと判断。そして、「上陸(成功を掴むこと)」を願い、公務員を目指すことにしました。

現在、小北さんは公務員として約2年働いています。「書類の何度も修正」「大量の事務処理」といった状況も、ゲーム会社での経験から冷静に対処できているといいます。小北さんにとって、ゲーム会社での経験を乗り越えれば、もうこれ以上難しいことはないと感じているようです。

「クソコードの山」との格闘〜老馬さんのケース

2024年末、老馬さん(仮名)は3度目の「意図しない離職」を経験しました。これまでのリストラの際には、前の会社や上司を面白おかしく揶揄するジョークを飛ばしていた彼ですが、今回はそうしませんでした。彼にとって、この会社への印象は決して悪くなかったからです。今回の離職は、プロジェクトチームが撤廃されたためでした。

人道的だったはずの職場、そしてプロジェクト撤回

老馬さんが勤めていたのは、北方にある中堅企業で、これまで5〜6本のヒットゲームを開発していました。求職者にとっては「まずまずの出発点」と言えるでしょう。最も指摘されていた欠点は給与水準がやや低いことでしたが、老馬さんは「生活に高い要求はないので、平凡な日々が自分には一番合っている」と話していました。

老馬さんの在職中、会社の残業は基本的に「午前10時から午後9時」という比較的穏やかなもので、最長でも午後10時まで。土曜出勤も多くても隔週程度でした。彼はこれを「貴重な人間性」だと感じており、「みんなで健康に生きていこう」という基本的な配慮が感じられたといいます。同時期に他のゲーム会社で働く友人たちは「日付を跨ぐ残業」が常態化していたと聞くと、その差は歴然としていました。

老馬さんはレベルデザイナーとして働いていました。この仕事に就いたのは偶然からでした。インターン時代にメインクエストのレベル設定を任されたことをきっかけに、この分野に深く携わるようになり、ベテランの域に達しました。老馬さんは「レベルデザインの仕事には慣れているが、会社を嫌いというわけではない。ただ、この仕事を好きになったことは一度もない」と語っています。

「クソコードの山」と終わらないデバッグ

「本当に好きなものは何か?」と尋ねると、老馬さんはすぐに答えられませんでした。しばらく考え、「実は、好きなことを始めるのは少し怖いんです。未知のトラブルが入り込む余地を与えてしまうから」と話しました。

老馬さんのプロジェクトにおける実情は、端的に言えば「屎山(shǐshān:クソコードの山)」でした。古くから引き継がれるコードと、会社のメンバー交代による知識の断絶が複合的に絡み合い、名状しがたいが不可欠なロジックが大量に存在していたのです。一見無用に見える設定項目でも、設定しないとプロセスがクラッシュしたり、逆に設定してもゲームに反映されなかったりするケースが多発していました。

「たった一つのシンプルな採集アイテムを設定するだけでも、どれだけのロジックが関連しているか想像できないでしょう。私たちの設定は精巧で複雑なコンテンツを作り出すことができますが、逆にシンプルなものを作るためにも膨大な設定を調整しなければなりません」と老馬さんはこぼします。この状況下では、不可解なバグに頻繁に遭遇し、プログラム担当者と協力して何度もエラーを修正しなければならず、作業の進行を大きく妨げました。

彼は、作業量の評価が難しく、作業の品質が制御不能になっていると感じていました。「レベルのロジックは風雨に揺れる古い家屋のようで、200秒のうち199秒は崩壊している。私たちは残りの1秒を永遠に変えるために全力を尽くさなければならないのです」と老馬さんは絶望感をにじませながら語りました。

まとめ:中国ゲーム業界の課題と個人のキャリア戦略

小北さんと老馬さんの事例は、中国ゲーム業界が抱える構造的な課題を浮き彫りにしています。急速な成長と競争激化の裏で、長時間労働、理不尽な人間関係、そして非効率な開発プロセスが常態化している現実があります。特に「クソコードの山」のような技術的負債は、開発者の生産性とモチベーションを著しく低下させ、業界全体の持続可能性に影響を与えかねません。

一方で、彼らの物語は、個人のキャリア戦略の重要性も示唆しています。過酷な環境から抜け出し、公務員という安定した職を選んだ小北さん、そして何度もリストラを経験しながらも「好きではない仕事」と向き合ってきた老馬さん。ゲーム業界を離れる決断は決して容易ではありませんが、自分の心身の健康や将来を見据えた選択の重要性を教えてくれます。

これは中国に限った話ではなく、日本のゲーム業界や他のIT業界にも共通する課題が含まれているかもしれません。開発者の情熱が冷めない、持続可能な働き方を追求することは、業界全体の発展にとっても不可欠だと言えるでしょう。技術の進化とともに、働く人々のウェルビーイングも重視される社会へと変化していくことが期待されます。

元記事: chuapp

Photo by Mahmoud Yahyaoui on Pexels

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