2025年11月20日、中国の首都北京で「智源具身智能(Embodied AI)開放日」が開催されました。中国を代表するAI研究機関である智源研究院(Beijing Academy of Artificial Intelligence – BAAI)は、次世代ロボット技術「具身智能」の研究開発戦略を大々的に発表。学界や産業界から多数の専門家が集結し、ロボットが特定のタスクに特化した「1.0時代」から、より汎用的な能力を持つ「2.0時代」へと進化する未来像が議論されました。オープンソースによるエコシステム構築を通じて、研究から産業応用への加速が期待されています。
ロボット2.0時代へ:具身智能が拓く新たな地平
AI技術が新たな転換期を迎える中、智源研究院は「具身智能(Embodied AI)」を次世代ロボット技術の核として位置づけています。具身智能とは、ロボットが物理的な身体を持ち、その身体を通して現実世界とインタラクションし、学習し、推論する能力を指します。これまでの産業用ロボットや特定の作業を行うロボットとは異なり、まるで人間のように多岐にわたるタスクをこなし、環境に適応できる汎用性を目指すものです。
智源研究院の王仲遠院長は、「現在の人工知能は新たな分岐点にあり、ロボットは専用ロボットの時代から、汎用具身智能の時代へと移行しようとしている」と語りました。しかし同時に、「現状の具身大規模モデルは、『使いにくい、汎用性がない、扱いづらい』という根本的な課題に直面している」と指摘。これらの課題を克服し、誰もが利用できる具身智能の実現が急務であるとの認識を示しました。
オープンイノベーションで具身智能の発展を加速
智源研究院は、具身智能の普及と発展を加速させるため、「オープンな研究、オープンソースでエコシステムを促進」を理念に掲げ、広範なパートナーシップと公共インフラの構築を進めています。
フルスタック技術システムの構築
智源研究院は、具身型脳(Embodied Brain)を核としたフルスタックの具身智能技術システムを構築しています。これには、以下のような要素が含まれます。
- 多様なハードウェアプラットフォームに対応するデータ収集および標準化されたワンストッププラットフォーム。
- 具身大小脳、VLA(Visual Language Action:視覚言語行動)などの具身基盤モデル。
- 具身智能の評価システム。
これらの共通基盤を提供することで、研究者や企業が具身智能の研究開発から産業応用へと移行する際の障壁を低減し、再現性のある研究を可能にします。
最新の研究成果とパートナーシップ
イベントでは、具体的な研究成果も発表されました。例えば、ロボットの行動時系列価値と三次元空間構造の理解・推論能力を向上させる「RoboBrain 2.0 Pro」、ゼロショットでのクロスプラットフォーム転移や長距離マルチステップ操作を実現する汎用VLAモデル「RoboBrain-X0 Pro」、そして大量の人間デモンストレーションによる事前学習で柔軟なハンド操作を可能にする「RoboBrain-Dex」などが紹介されました。また、シミュレーションから実機展開までを一貫してサポートする汎用ロボット型脳AI「Emu-RobotVerse」の開発も進められています。
現在、智源研究院は具身智能分野で30社以上の企業や研究機関と提携しており、今後もロボット、モデル開発、応用に取り組む幅広いパートナーとの協力を深め、業界全体の健全で迅速な発展を推進していく方針です。
まとめ:日本のAI・ロボット業界への示唆
中国の智源研究院が主導する具身智能の取り組みは、世界のAI・ロボット業界に大きな影響を与える可能性を秘めています。特に「オープンソース」と「エコシステム」を重視する姿勢は、技術革新を加速させる上で不可欠な要素と言えるでしょう。汎用AIと物理的な身体が融合する「具身智能」は、製造業、サービス業、医療など多岐にわたる分野で革新をもたらすことが期待されます。日本企業にとっても、この進化の波を捉え、国際的なオープンイノベーションに積極的に参加することが、競争力を維持・向上させる上で重要となるでしょう。智源研究院の動向は、今後のグローバルなAIロボット開発の方向性を占う上で注目すべき存在です。
元記事: pedaily
Photo by Tara Winstead on Pexels












